プル危うし!?
勇者Aは障壁が消えるのを待たずに、家を破壊しようとしていた。
「糞〜家潰して出てやる〜・・」
「マスター焦るな・・」
「そうよ、人の家なんだから!」
イライラを体に充満させながら、それをいつ爆発させてもおかしくない勇者Aを
タケシが羽交い絞めにして、シルディが落ち着かせるようと宥める。
「ドードー・・」
「私の魔法はもう切れる頃よ」
「ほら!」
シルディがそう言うのと、ほぼ同時に緑の障壁はその色を薄めて
空気の中に消え入る。
「行くぞ〜!」
「ドカ、もふ」
ドアを開け、外に勇んで飛び出た勇者Aは、何か分厚い大きなものにぶつかった。
ケルがドアを覆うようにして、犬でいうお座りのポーズで、外で待たされていた。
待たせていた間に既に、元の姿に戻っていた。
「やっと出てきた・・」
「何かあったの?」
「おめーいたのかよ!」
「そらいるよ、シルディにここで待っててって言われてたし」
「あ・・そうだったわね・」
咄嗟に言った事だったので、すっかり忘れていたシルディ。
「よっしゃ、追うぞ!」
「うん、行こう」
勇者A達はチビデビル達が飛んでいった方向へ、走り出した。
「おいらもいこっと」
その巨体を大きく波打たせ、勇者A達の後を、大きな足音を発しながら付いていく。
その頃・・
「プルププ(こいつら動き早いな)」
「プルププ(中々狙いが定められない)」
「ファイアボール!」
チビデビルの一人が、魔法を詠唱すると、手に持っている桑の先から
炎の球がプル目掛けて飛んでいく。
「プルププ(そんなもん、くらってたまるか!)」
プルはひょいっと楽に避けると、また地面の反動を利用して
体当たりをするが、相手は高速で動いているため
やはりあたらなかった。
「プルププ(こいつら、止まらないんだよな)」
「プルププ(素早く動きながら、魔法を打って来やがる)」
「プルププ(やりにくいぜ)」
「プルププ(おっと!)」
プルはまたファイアボールを体を翻し避ける。
ファイアボールの火が民家の屋根に燃え移り、黒い煙がその場から
上空たかくまで、伸びていた。
「お、あそこ煙出てるぞ」
「プルが戦っているんだな」
「みんな急ごう」
「ヘイ!」
プルの応援に駆けつけるために、歩幅を大きくして走る。
そんな様子を、村の入口にある高い塔の屋根の上から眺めているものがいた。
・・・・煙が・・
・・・・困った子達だ・
「兄ちゃん!こいつ手ごわいよ!」
「魔法が全然当たらない」
「そうだよな・」
連携がとれた自分達の魔法攻撃を、いとも簡単に交すプルに
チビデビルたちは動揺が隠し切れない。
「こうなったら、俺達の取っておきを使うぞ」
「ええ・・・あれ使ったら・この街消滅しちゃうよ?」
「そんなのしたら、怒られちゃうよ・・」
「仕方ないだろ、このままじゃ、どっちみち捕まっちゃうよ」
「う〜ん・・」
「おめーら!」
「ほら、仲間がきちゃったよ」
勇者A達は、プルたちが戦う民家のすぐ下までやってきた。
「ええい、やけくそだ、やるぞ!」
「うう・どうなってもしらないからね・」
三人は動きを止めると、横に綺麗に並び、自分達の持っている桑を
前に突き出すし、真ん中の桑に両側のチビデビルが桑を重ねる。
そして真ん中のチビデビルが魔法を詠唱し始める。
「常しえの闇に住む魔王よ、我等に刃向かう愚者を葬り去る〜」
詠唱が終わりかけた、その時、突然上空から大きな声が辺りに響く。
「ノンノンノンノン!それ以上は私が許しませんよ」
「テル、ピム、リャン!」
その声に三人は体をびくつかせると、リャンは詠唱を止めた。
そして恐る恐る上空に浮遊する者に、ゆっくり目をやると言った。
「お師匠様・・!」