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タケシ目覚める!

 「逃げろタケシ!」

 

 「父さん!そんなことできないよ・」

 

 「いいから、逃げろ・・・」


 「このマーキュラスはもうもたん・・」


 「俺達の分も生きて、向こうの世界で幸せに暮らすんだ・・」


 「父さん・・いやだよ」


・・・・・そんなのいやだよ・・


・・・・・・・・・・父さん・・


・・・・・・・


 「タケシ!」


 「タケシ大丈夫か?」


・・・・・ん?


 「う・・・・」


 「お、目覚めたぞ」


タケシは瞼を照らす電光の明るさと、自分の名前を呼ぶ数人の声に、意識をとりもどすと

少しずつ、ぼやけた視界を、しっかりしたものに代えるように意識を集中し始めた。


 「む・・・・ここは・・」


タケシの目に初めに飛び込んできたのは、自分を心配そうに見つめる

勇者Aの姿だった。


 「お、タケシ・大丈夫か?」


 「俺は・・・一体・・」

 

 「プルププ!(タケシしっかりしろ!)」


 「お前はシギトとの戦いで酷い傷を負ったんだよ」


 「だけど、もう大丈夫だ、シルディが回復魔法で、治してくれたよ」


・・・・・そうか・・


・・・・・シギトって奴と戦って俺は敗北したんだな・・


 タケシは視界がはっきりしてくると、周りの様子を観察し始める。

熊の姿をした魔物、人間の女の子、プル、そして勇者A。

4人が自分を覗き込むように、上から見下ろしていた。


 「タケシ、良く頑張ったな」


 「シギトがぜひうちに、来て欲しいって言ってくれたよ」


 「・・・・・・・」


・・・・・く・


・・・・素直に喜べねぇな・・


・・・・・やっぱり悔しいぜ・


・・・・・かなり追い詰めていたのに、最後のあの技は一体・・


タケシはシギトが最後に放った技に、何か記憶の片隅に残る

過去に体験したものの中に、類似するものがあるきがしてならなかったが、

あまりに曖昧でぼやけたものなので、その引っかかりを、

頭に浮かび上がらせることを中断した。


 「タケシ・かな?」


 「私、シルディよ」


 「貴方を治療しました。」


 「今日から貴方は私達の仲間よ」


 「よろしくね!」


 そうタケシに声を掛けてきたのは、優しい目でどこか無邪気な笑みを浮かべる

小柄な女の子である。髪は栗色で長髪、金色の目、白いブラウスに、短い栗色の布生地のスカートを体に身につけ、小さな木の靴を履いている。


 「・・・・・・・」


 「あら・・この子無口?」

 

 「あぁ、ちょっとタケシは人見知りするかな」


 「プル(そうかもな)」


 「へ〜かっこいいよね」


 「顔の目の辺りとか、少しへこんで影になってて」


 「その影から怪しく光る赤い目が、なんかかっこいいね!」


・・・・・かっこいい・・?


 歯に衣を着せない、率直な感想を述べるシルディに

タケシは少し戸惑いながらも、不思議と他人を嫌な気持ちにさせない

彼女独特の天然とも言える、開けっぴろげな物言いに、徐々に警戒心を緩めると

重い口を開き始めた。


 「・・・えっと・・・」


 「タケシです、シルディさん、よろしく・・」


 「お・・よかった!嫌われたかと思ったわ」


 「傷治してくれたそうで・・」


 「ありがと・・」


 「うん!よかったね!」


 シルディは、あっけらかんと明るい口調で喋ると

無垢な笑みをを浮かべて、タケシの顔を覗き込んだ。


 「俺は熊五郎だ!」


 「これからお前は、俺達の仲間だ」


 「何でも言ってくれ」


 「ども・・・」


 「しかし、シギトも手加減って奴を覚えない奴だな・・ハハハ・・」


 熊五郎は顔に苦笑を浮かべながらも、その喋りからは

豪快で頼りがいに満ち、前向きで、相手への気配りを忘れない堅実な性格が窺える。

 茶色の布のふわっとしたズボンを履き、靴は履いていない。

上半身にも何も着ておらず、手に皮のバンドを巻いている。バンドには

金属の三角柱が等間隔に縫い付けられている。強そうな熊系モンスターだ。


 

 「あ、そうそう!」


 「タケシ!」


 「・・へい」


 「へいだって・・!」


 「まぁいっか、あのね、私魔物だから勘違いしないでね!」


 「人間じゃないよ!ほら!」


 「え・・・?」


 シルディは、そう言うと手に持っているステッキを、背中の辺りでふり

魔法で隠していた、透明の羽の姿を浮かび上がらせる。


 「ね!?」


 「ピクシーだよ!」

 

 「ほぉ・・・なるほど・」


 「あ、そそ、もうすぐ次の仕事の話があるから」


 「タケシも来れば?もう傷は完治してるはずだし」


 「そうだ、おめーも来いよ」


 「プルププ(タケシもいこうぜ!)」



  ・・・・・・・


・・・・・・なんかここ・・温かいな・・


・・・・・・いつ以来だろ・・・


 

 「行きます・・!」


 タケシはここでなら、快適に勇者Aやプルと思う存分戦い

仕事をこなせるような気がして、これから起こる出来事に、心躍らせている

自分に気づかずにはいられなかった。











 



 



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