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タケシvsシギト

 「覚悟はいいか、タケシ」


 「いつでも」


 三人は裏庭へやって来ると、タケシとシギトが広場の真ん中辺りまで歩み

お互い体を向きあわせ、視線を合わせる。

勇者Aは、戦いに巻き込まれない距離に場所を取ると、二人の様子を心配そうに

見つめている。


 風の勢いは強く、芝生に生える草は波立つように右方向に流れている。

シギトは腰を低くし屈むと、地面の草を右手で毟り取る。

そして、体を起こして、タケシを青い眼で見つめると、言葉を発した。


 「タケシ、俺が持っている草が、風に全て流された時」


 「それが、戦いの合図だ」


タケシは静かに頷くと、じーっとシギトの持つ草の揺らぎを見つめている。


草が1枚、2枚と風の流れに乗ってシギトの指から離れていく。


 最後の一枚が飛んでいった瞬間、二人は後ろに素早くバックステップをして

距離をとり、構えを取る。

タケシは両足をがに股気味に開き、地面に踏ん張り少し屈むと

両手を肩幅より広く開き、頭の辺りまで持ち上げ、空気を掴むように指を形どり

シギトの動向を注視している。


 シギトは居合い抜きの体勢から、踏ん張ってる左足で地面を強く蹴ると

タケシの間合いに一瞬で踏み込んできた。


 ・・・・・は・・はやい・・


タケシは瞬時に自分のすぐ前に、姿を現したシギトに面食らう。


次の瞬間、鞘から剣を高速で抜き取ると、そのままの速度でタケシに横から切りつける。


 「く・・」


 タケシは体を後ろに素早く仰け反らすと、高速の剣の軌道から体をかろうじて

はずし、回避する。


 「ほ〜・・今のを良く避けたな・」


 「意外と素早いじゃないか」


 シギトの力量を今の攻撃で把握したタケシは、少し警戒気味に右足で地面を蹴って

後方にステップし距離を取る。


 ・・・・・やるな・・

 

 だが・・・・・これからだ・・!


 「うおぉお、くらえ、地走り!」


タケシは地面に右拳を叩き付けると、その凄まじい衝撃が地を裂きながら

砂煙を伴い、シギト目掛けて突っ込んでくる。


 「ほぉ・・変わった技を使うな」


 その衝撃が間近まで迫ってくると、シギトは自分の前に剣を突きたてた。

剣に衝撃が当たるとその威力は分散し、一方は岩を砕き、もう一方の衝撃が

勇者Aに向かって突き進む。


 「ええ・・・」


 「ちょっと・・」


 「く・・」


油断してた勇者Aは、少し遅れて左に避けると、地面に背中から倒れこんだ。


 「あ・あぶねぇなぁ・・」


その勇者Aの声も二人の耳には入らない。それくらい二人は緊迫した戦いを続けている。


 ・・・・余裕こいてられねぇな・・


 「タイタンソード・・」


 タケシは右手が眩い光に包まれると、肘から手のひらを少し越えた辺りまでを

光の剣に変化させた。


 「こっちからいくぜ・・」


 タケシは一言呟くと、シギトへ向かって突進する。

右手のタイタンソードを振りかぶると、シギトに叩きつける。

シギトはそれを剣で受け止める。

それを気にもとめず、連続して右上方から、左から右から

あらゆる方向から剣を振るうが、シギトはその連続した剣撃をすべて

片手でいなす。


 「ははは・やるな」


 「だが、そのスピードでは俺に傷をつけることはできないぞ」


 「何を!?」


タケシの渾身の連続攻撃を片手でいなしながら、冷ややかな微笑を浮かべ余裕綽綽のシギト。


 「剣とはこう使うんだ」


 剣を交わすと、次の一撃が来る前に、シギトは高速で4回体に切りつけ

タケシに裂傷を負わせる。


 「グワァ・・・」


タケシは傷を負うと後ろに下がり、左膝を地面につき傷を右手で押さえる。


・・・・・みえねぇ・・


・・・・・なんて使い手だ・


シギトは後ろに飛ぶと、左手の平で剣の切っ先を押さえ、左足を軸足に構える。


 「俺の技も見せてやろう」


 「無双流抜刀術 風裂剣!」


 シギトの剣からカマイタチのようなものが、タケシめがけて放たれる。

カマイタチが放たれた瞬間、タケシは上空にジャンプしてそれを避ける。


 「なに・・」


 「オーラインパクト!!」


タイタンソードのオーラを拳に集中すると、上空から勢いをつけて

地面に叩きつける。

その威力は凄まじく、爆風と土砂を周りに撒き散らせながら

地面を掘り進む。辺りは砂煙で覆われ周りの視界を奪う。


 「む・・・く・・」


 シギトはその爆風で、後方に弾き飛ばされるも右足で

踏ん張り耐える。


 「く・・・どこへ行った・」


シギトは砂煙と風の襲来に眼を開けられないでいる。眼の辺りに剣を持ってきて

向かってくる砂煙や小石をはじきながら、薄目をなんとか開けると、タケシのいる場所を探る。すると、砂煙の中に黒い影を見つけた。


 「そこだー!」


その姿を目で捉え高速で踏み込むと、途中で左足で地面を蹴りジャンプし

黒い影に向かって上から切りかかる。


 「もらった・・」


 「!?」

 

 「なんだ・・この手ごたえは・・」


切り込んだ黒い影が砂煙が晴れるに従って姿を表す。


 「これは・・土人形・・?」


後方からタケシの声が、シギトの耳に入る。


 「ひっかかったな・・」

 

タケシはシギトを後ろから羽交い絞めにすると、そのまま上空に大きくジャンプする。

 

 「なに・・」

 

 「く・・・動けん」


 「くらえ・・地獄落とし!!!」


空中で反転すると、そのままシギトを頭から地面に落とそうとした。


 「く・・こいつは・・・」


 「離せ・・」


 「離すもんか・・」


空中でもみ合いながら、二人は地面に向かって急降下していく。


 「やむおえん・・」


シギトがそう言った次の瞬間、体全体が光輝いたかと思うと、タケシが弾き飛ばされ

地面に激突した。

シギトは空中で回転すると、ふわっと地面に着地した。


 「ぐ・・・・」


タケシの胸には無数のひび割れが入って、大きなダメージを受けている。


 ・・・なんだったんだ・・今の技は・・


一瞬の出来事でシギトに何をされたのか理解できないでいる。

しばらくして、視界が薄暗くなるのを感じると、その場で前のめりに倒れ気絶した。


 「俺をここまで追い詰める奴がいるとはな・・」


 「ここまで本気にさせたのは、ソリアとゾル以来だな・・」


シギトは気絶したタケシを見つめながら、敗者に最大の賛辞とも取れる言葉を送る。


 「タ・タケシ〜!大丈夫か・・」


勇者Aは血相を掻いて、タケシの元に駆け寄る。


 「おい、しっかりしろ!」


 「タケシ!」


 「勇者A、心配ない、致命傷には至っていないはずだ・」


 「シギトやりすぎだぞ・・!」


 「う・・すまん・・・」


 「シルディに回復させよう」


シギトは少し申し訳なさそうな表情を浮かべ、勇者Aに謝ると

左肩で勇者A、右肩でシギトがタケシ支えるように立ち上がらせ

二人で魔物ルームへバランスをとりながら、歩いていった。


 




 








 


 




 

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