それぞれの想い。
リン達は暫く固まっていたが、突然、四天王の一人幻が顔を殿に向け言葉を発した。
「お殿様、私、幻言います」
フードを後方に払いその素顔を明るみにだす。
輝くような白い肌、エメラルド色の大きな瞳、薄い紫の髪は長くローブの隙間へ垂らしこんでいた。
「私、ぜひお殿様と……、その〜添い遂げたく存じます…」
リンと他の四天王たちが目を丸くして驚き、仲間と顔を見合わせてきょろきょろし始める。
「幻殿……真か?」
「はい……」
突発的な展開に驚きを隠せない周囲の人々。
それを全く意に介せず、二人は見詰め合う。
「お殿様……」
熱い視線を交わす二人の姿を、拳を握り訝しく見つめている者がいた。
――ちょっと、ずるい! 何よ、急に……
「お似合いやな〜、幻」
栞は幻とお殿様を見て、にこやかに微笑み二人の仲を促すように言った。
「おぉ、お似合いの二人じゃ、殿良かったですな」
「ははは、爺気が早いな! まだ決まったわけじゃないぞ」
そう言いながらもほぼ、心の内は決まったらしく幻の顔に、殿は頬を赤らめ
熱い視線を送っていた。
「何を仰います、もうお心はお決まりでしょう!」
大臣の押しの強い言葉に本音を隠しきれなくなり頷く殿。
「さぁさぁ、お二人もっと寄って寄って〜ハハハ〜」
リンはその浮かれた様子を見ているうちに、戦いに備えて張り詰めていた気が一気に抜け落ち、ぼーっと二人の姿を眺めていた。
――…私何しに来たのかしら、まぁ……でも幻幸せそう……
「さぁ、そうと決まったら婚礼の儀式じゃ〜……」
その一声で家来達が宴の準備をし始める。
「みなさん、じゃ少し準備が出来るまであちらのお部屋で」
給仕の女がリン達を隣の大広間へと案内する。
大広間に集まったリン達は話を始めた。
「幻良かったな〜」
「うん、栞姉さん、さっきの一押し有りがたかったわ〜ありがとー」
「なーに、幻は私の妹みたいなもんだし、当然よ」
栞は幻に快活な調子で言葉をかけると、優しい瞳で上から見下ろした。
「栞姉さん……」
「たまにはお城きてね……」
「もちろんよ!」
「うふふふ〜」
二人の間でお花畑が周りにあるかのような雰囲気を作り出していた。
――このままでは……そんな事は許せないわ…。
「敵襲、敵襲! 」
突然、大きな男の野太い声が城内に響き渡る。
「何事じゃ……?」
「大臣様、怪しい二人が城の門を突破しました、一方は魔物でございます」
「なんじゃと!?」
それを聞いた大臣が、急に表情を強張らせた。
「どういうことじゃ……」
「この大切な時に…皆の者に、そやつらを取り押さえろ」
「抵抗するようなら殺しても良い! 」
「はい!」
家来はそれを聞くと城内を駆け巡り、大臣の伝令を広めて回った。
「なんか、ややこしいことになったわね」
リンは厳しい表情を浮かべ、四天王たちに言った。
そして、四天王たちを呼び寄せ語り始める。
「曲者を捕らえに行くわよ」
「はい」
「幻、あなたはここに残りなさい」
「ええ……」
リンは幻に顔を向け、真剣な表情で諭すように言葉を連ねる。
「あなたはもう、クノイチじゃないわ」
「この城で殿と一緒に幸せに暮らし」
「この城下町を見守っていく義務があるの」
「リンさん…」
その力強いがどこか温かみのある言葉に、胸打たれ幻は
目に涙をためている。
「ほらほら、泣かないの」
「これからお嫁に行こうって子がそんな顔してちゃ駄目よ」
栞は白い布を懐から出すと、幻の涙を拭ってやった。
「よし、みんな行くぞ!」
リンは四天王達に向けて強い口調で言うと、幻以外の四天王を引きつれ城内の慌しい場所へ
駆けていった。
◆◇◇◆
その頃……城内で曲者は家来達に追いまわされていた。
「勇者Aはん、何で私ら追いまわされてるんや〜」
「馬鹿、お前が城には綺麗なベッピンさんいるからとかいって」
「理性なくして突っ込んでいったあげく、手当たり次第女に擦り寄るからだろうがー」
「せやかて、ほんまいたんだもん、ベッピンの姉ちゃん、てんこ盛りでっせ」
勇者A達はパーニャ港から無事船を借りて、ジパングに到着していた。
何日も歩いて腹がよじれるくらい空いてくると、ジロウの神経が究極までに研ぎ澄まされ
この城下町を嗅ぎつけたのであった。
――糞ーこのエロガキジロウ追いかけていったら、偉い事になってしまった…。
しかし、こいつは俺の打ち出の小槌だ。
絶対失うわけにはいかねぇ。
必ずやリンを見つけた後、家に持ち帰って金銀財宝出させまくるんだ。
こいつは死守するぞ!! ――




