特訓!
リンはクノイチの代表に指名され、刺激を得たのか気合を体全面に押し出し
これからどうしようか考えていた。
(…私はクノイチの代表として、頑張らないと)
(…白菊様が期待してくださってるんだもん、応えなきゃね・・)
(…四天王のあの子達取り合えず集めるかな・・)
リンは四天王に召集をかけると、いつもの優しい表情とは違い
気合の入った鋭い目つきに変わっていた。
「てめーら、良く集まったな」
「今日からお前達を取り仕切る事になったリンだ」
「初めに言っとくけど」
「お前達の生殺与奪の権限は全てあたいにある」
「私の言うことは絶対だ」
「わかったな!」
四天王はお互いを見回しきょろきょろしていた。
初めのイメージとまるっきり違うリンの姿に動揺していた。
ぼそぼそリンに聞こえない程度に話す四天王達。
「おい、栞・・・」
「何かこの人怖いよ・・・?」
幻は黒いローブから青ざめた顔を覗かし言った。
「そう・・?これくらいじゃなきゃだめでしょ!なんたって私達の将だよ」
「それにしても美人よね・・惚れそう・・」
栞は整った美しい顔に凛々しさを漂わすリンをみて、少しホの字のようだ。
「ふ・・どうせ、すぐメッキ剥がれるよ・・」
そう上から目線で強きな発言をしたのは、この四天王で姉御的存在の早乙女だ。
「なぁ躯はどう思う?」
「・・・・・・さぁ・・」
「とりあえず・・・・眠い・・」
「相変わらず、躯はマイペースだね・・」
躯は眠気が襲ってきていて、ふらふらしながらも、なんとか意識を繋ぎとめ
リンの話しを面倒くさそうに頭に詰め込んでいる。
「さてと、話しはこれくらいにして、そろそろ特訓に入ろうか」
恐る恐るリンに問いかける幻。
「リン様、何をするおつもりで・・?」
「取り合えず、うさぎ跳び100km、腕立て伏せ10000回、遠泳30kmいこっか!」
「「・・・・」」
「じゃとりかかれ!!」
「「はい・・」」
四天王の一部は血反吐吐きながら、森の小道をよたよた兎跳びをしながら何周もこなす。
「しぬ〜・・・」
弱音を吐いているのは一番体力に自信のない幻。
「早乙女ねーさん、大丈夫・・?」
「う、うっさい!はなし・・かけるな・・」
早乙女は暑苦しい袴を捲くりあげ、太ももを顕にしている。
顔からは汗が吹き出て、今にも動きを止めそうになるが、姉御としては
先に音をあげるわけにはいかなかった。
「ははは、楽しいね!なんか中学校のときの部活思い出すわ〜!」
能天気に余裕を見せながら、明るい顔に汗がまぶしく光る栞。
「みんなどうしたん・・そんな汗流してさ・・」
「どうしたって、躯・・・・」
幻が躯をみるが、全く顔から汗が流れていないばかりか、息すら切っていなかった。
(…この子、人間やろか・・・)
幻は常日ごろから躯の魔物説を暗に唱えていた。
どんな時でも疲れを見せず、刀できられた次の日もしらっとした顔で
現れて、普通に動けていたからだ。
その後も四天王の地獄の特訓は続いていた。
その頃勇者Aは・・・
「なぁ、お前この辺に住み着く魔物か?」
「さぁ、分からないっす」
「何で分からないんだ?」
「それが・・気がついたら〜この岩場の前に倒れてて」
「全くそれまでの記憶ないんっすよ」
馬車中で肩肘突いて寝転びながら、次郎は天井を呆けたかんじで見つめている。
「おめーそれたぶん、記憶喪失って言うんだよ」
「はーそないなりますかね〜」
「お、港見えてきたぞ!」
それを聞いて次郎は跳ね起きると、勇者の隣に飛び乗ってきた。
「おーー街〜〜〜!!グレイト〜!!」
「飯〜〜〜!水!女〜〜〜!!」
それを聞いた勇者Aが目を細めて次郎を見て言った。
「女っておめー・・・子供みたいな格好して興味あるんか?」
「いや、わてこう見えても、もう人間で言えば青年でっせ!」
「は〜ん!」
疑いの目を向けながらも、勇者は正直どうでもよかった。
「取り合えず、主人の俺に恥かかすような事はすんなよ!」
「わかってますがな〜!」
次郎の口から涎が垂れている。息は少し荒く目は大きく見開かれ、こめかみに十字の皺が浮かび上がっていた。
(こいつに鏡見せてやった方がいいかな・・・)