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チビデビルの回想

   セラフィが勇者A達に、問責されているのを黙ってみていた

チビデビル達が、突然会話に分け入ってきた。


 「お前等!、お師匠様を苛めるのはそのへんにしとけよ!」


 「なんだ〜?」


勇者A達を強く睨み、気持ちを全面に表し唇を震わせながら

更に言葉を続ける。


 「この人は・・孤児になった俺達に、生き方を教えてくれた人なんだ」


 「お前達・・」


 「俺達が・・今生きていけるのはこの人のおかげなんだ」


その様子を見て、勇者Aは多少動揺をみせるが、正義は我にあると心で

呟くと、強い口調で言葉を挟む。


 「お前達、利用されてるんだけだぞ」


 「こいつからしたら、お前らは使い勝手のいい手下くらいにしか思ってないよ」

 

 「そんなことない!」


チビデビルは勇者Aの辛辣な言葉に、声を荒げて叫んだ。


 「だから〜〜」


 「待って!ちょっと話しきいてあげようよ」


 「この子たちにも、何か理由があるのよ」


 「ねぇ、あなたたち・・」


 「なんでそこまでセラフィを庇うの?」


 シルディはセラフィを庇う、チビデビル達の真直ぐな無垢な瞳をみて、

何かを感じ取ると、勇者Aの叱責を遮り、宥めるように、優しく問いかけた。

チビデビル達はそんなシルディの母のような包み込むような口調に、やがて、

ぽつぽつと口を開き、過去の出来事を語り始める。

 


 チビデビル父と母は勇者B一行に森で出くわし、襲われていた。


 「グハハハハ、こいつら弱いな〜」


 「ぐ・・・やられる・・」


 「勇者Bとどめよ」


 「うりゃ〜!」


 「ぐは・・・」


 「あ、あなた・・」


 勇者Bは魔法使いBの魔法で倒れこんだチビ父に、近付き剣を振りかざすと

止めを刺した。チビデビル達はその様子を木の陰から眺めていた。

勇者B達は倒した父親の死体の前にしゃがみこむと、持っていたバッグから、お金を巻き上げ始めた。


 「おぉ、結構金もってるじゃないか」 


 「父上〜!」


 「馬鹿!・・・・今出ていったって、俺達にはどうにもできないだろ!」


涙を流し父に駆け寄ろうとしたピムを、リャンは肩を掴んで

その場に止まらせた。


 「そんなこと言ったって・・」


 「ブリザード!」


 「キャアアアアア」


チビデビル母は魔法使いBの魔法でその場に倒れこんだ。


 「母上〜〜〜!」


それを見て、自然に母の元へ足を運ぶピムとテル

リャンも気持ちが抑えられなくなり、木陰から出て駆け寄る。


 「父上〜、母上〜しっかりして・・」


 泣きながら二人にしがみつく三人。

母が自分の体に、しがみつく小さな子供達の手のぬくもりに

朧気な意識の中、気がつくと、消え入るような声で言葉をかける。


 「みんな、逃げなさい・・私達はもうだめ・・」


 「逃げきって、どこかで幸せに暮らすのよ・・」


 「そんな〜・・死なないで・・」


母親は最後に一滴の涙が目から零れ落ちたかと思うと、静かに息を引き取った。


 「母上〜〜〜〜〜!」

 

 「なんだこいつら〜?こいつらの子供か」


魔法使いBは蔑むような目で、チビデビル達を見下ろすと

勇者Bに言った。


 「めんどくさいから、この子達も一緒にやっちゃお〜よ」


 「うむ、一緒に死んだ方が、こいつらも幸せってもんだな」


勇者Bは魔法使いの言葉に同調すると、剣を振りかぶり、リャン達に

襲い掛かる。

その刹那、突然木陰から誰かの叫び声が辺りに響き渡る。


 「ノン!待ちなさい!!!」


 「ん?誰だ!?」


 森を通り際に耳に入った子供達の悲痛な叫び声に、吸い寄せられるように近付き

木陰から見ていたセラフィが、子供達を襲う勇者B達の姿を見て

たまらなくなって、姿を現した。


 「その子達の命を奪うのは辞めなさい」


 「もう親から、お金は巻き上げたはず」


 「それ以上の殺戮は、必要ないはずですよ」


 「なんだ〜?お前は」


勇者B達がセラフィを睨みながら、取り囲む。


 「私は争いは好みません」


 「このまま、退いてもらえないでしょうか?」


静かでどこか気品のある物言いが、勇者B達の心を逆なでしたのか

イライラした口調で、セラフィに汚い言葉を投げかけた。


 「ぺ!魔物風情が、俺達人間に命令か?」


 「お高く止まりやがって、お前も殺して、金まきあげてやるぜ!」


その言葉を聞くと、静かに目を閉じ俯く。


 「そうですか・・仕方ないですね」


 「襲ってくるというのなら、私は私の身を守るため、戦いましょう」


セラフィは一瞬、顔に落胆の表情を浮かべると、静かにレイピアを鞘から抜き取り、

軽く足幅を前後に開き、切っ先を回しながら、勇者B達に向けた。


 「へへ〜やる気になったか」


 「いくぜ!」


魔法使いBが詠唱を始めると、大きな声で魔法の言葉を叫んだ。


 「フレアバースト!」


頭上に太陽のような大きな火球が現れたかと思うと、セラフィ目掛けて風を周りに

纏いながら落ちていく。


・・・この威力は・・

・・・子供達が巻き込まれる。


セラフィは火球が間近まで迫ってくると、目を一瞬大きく見開き、レイピアで空中に高速で光の五芒星を描く。


「魔闘術、吸引!」


 突如できた光の五芒星に、大きな火球が激しく衝撃をともなりぶち当たり

一瞬眩い光が辺りを包んだかと思うと、火球が五芒星の中に吸い込まれていく。

そして火球が完全に消え入ると、何事もなかったように静寂があたりを包む。


 「なんだこれは!?」


 見た事もない技を目の当たりにして、勇者B達は額に汗を欠き、明らかに動揺した表情を

浮かべていた。

勇者B達は少し警戒をしながら、憤りを目に浮かべ、口汚く言葉を投げかける。


 「このやろ〜変な技つかって、びっくりさせやがって」


 「おい、魔法使いB、一緒に攻撃するぞ」


 「分かった!」


そう言葉を放つと、勇者Aは剣を振りかぶると、ジャンプし上から切りかかる。

それを援護するように、魔法使いBはファイアボールを乱射しながら、セラフィににじり寄る。


 「逃げ切れんぞ!」


 「終りだ!!!」


 「魔闘術 風神!」


それを目で捉えると、セラフィは詠唱を呟き、言葉にした。

セラフィの体を竜巻のような物凄い風が包み込み

無数のファイアボールの火球が竜巻に触れると、その姿が消し飛んだ。


 「仕方ない・・」


ため息を静かにつくと、勇者B達に悲哀に満ちた眼を一瞬向け

静かに言葉を発した。


 「風のレクイエム・・!」


その言葉と同時に竜巻が左右に揺れたかと思うと、無数の風の刃が流れるように

勇者Bと魔法使いBに向かって放たれる。


 「ば、ばかな・・グア・・」


 「そんな・・・ぐふ・・」


カマイタチを受けた勇者B達は一瞬にして絶命した。










 


 






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