ザラリヤ
日が傾いて来ている。
この世界において〈昼〉とか〈夜〉とかはあまり意味を持たない、大多数の種族が光の中で生活することを前提とするからこそ意味のある定義である。
しかし【コンザー】にはそれらの定義・法則は意味をなさない。なぜなら、暗闇で育つ植物もあり、闇こそが生活の前提とする種族も多くいる、つまり自らがどちらに属する種族かだけとなる。
そういう事なら¨ザラリヤ¨は前者と言える。
「少し急ぐかな」
「近道といくかな」
自然と呟きが漏れる。
「ああ!」
¨ザラリヤ¨の呟きに声が答える。
声の返事をまたづにその身を道脇の谷間に踊らせる。
¨ザラリヤ¨の身体は瞬く間に谷間を落ちてゆく、吹きすさぶ谷風が纏っているマントを羽ばたかせる。
【拒みの森】は山脈の中腹にある、当然帰りは下りになり急ぐなら飛び降りれば最速であるのは間違いないが普通なら着々は保証されない、空を駆ける種族なら問題ないかが¨ザラリヤ¨は【ケス】大地の種族であり飛行にはもっとも遠いといっても間違いないが、つまり墜落するの、みまたまたく間に地面が迫ってくる。
ここは【拒みの森】に通じる山の【試練の道】通常の魔法は使用不可・使えてもこうかは期待できない。
そんな状況であっても飛び降りた¨ザラリヤ¨に焦りの色は見えない、それは地面が目の前に迫っても動揺の色すらない。
目を抑えたくなる惨劇が実行される瞬間¨ザラリヤ¨を〈青い〉風がいくえにもわきあがり¨ザラリヤ¨を包みこみその身体を緩なに着地させる。
「全く¨トーク¨にも困ったもんだな」
【拒みの森】まで探しに行った少年の顔を思い浮かべなが苦笑いんを浮かべながら何事ももなかったかの様に語る。
「いつまでたっても変わらない、小さいころから変わらないな本当に」
声が答える。
声の言葉に一瞬ではあったが遠い目になる自分自身に今度は声なく呟く。
「どうした」
¨ザラリヤ¨の気配の変化に気がつき声の主が不思議そうに問いかける。
「いや!」
「何でもないよ¨青凪¨」
気づかってくれることに感謝しながら長年の友を安心させる様に優しく返事をする。
「ならいいのたが」
¨ザラリヤ¨の返事に一応の納得をして声の主は返答する。
「心配性だな」
¨ザラリヤ¨が¨青凪¨のちょと不服そうな声に思わず声が大きくなる。
「大丈夫かいあんた」
声をかけてきたなは街道の端で臨時の店を出していた旅のキャラバン隊の一人である。
(あ!しまったな)
話こんでいる間に村の街道まで知らずまにたどり着いていたのである。
近道の結果なのだが、¨ザラリヤ¨内心失敗に舌打ちしている間にも商人は怪訝そうにこちらの様子を伺っている。
その眼差しは病人か変人を見る目である。
しかし仕方のない事である回りから見る¨ザラリヤ¨はどう見ても一人である。
鮮やかな青の大振りのマントを纏い【拒みの森】方面からぶつぶつ一人言をいいながら歩いてくる。
顔に覆面をした人物を不振がらないはずはない。
覆面については【ケス】の種族は体躯は二本足・二本の腕・頭・一対の目・耳 とこの【コンザー】でももっともポピュラーな姿をしている、ただ大地の種族らしく身体の一部に鉱物が表れる特徴かある、それ自体はそれほど問題ではないのだが、¨ザラリヤ¨には他の理由もある。
(困ったな)
そうこうしている間にも男の仲間達が手に武器を持って集まって来ている。
普段であれば、キャラバン隊の男たちがいくら不審者であるからといってこれ程の警戒は行わない、例え商売相手の不利益が想定されてもだこの場合の商売相手は訪問先の町・村になるのだかそろでもキャラバン隊にはさほど関係ない、何故ならキャラバン隊は商売相手が居なくなれば他所に行けばいいだけであり自らの身を危険にさらす必要はない。
何かが普段とは違っているのだ。
(まずいな、どうするか?)
覆面をとって説明すれば誤解は解けるのだがしかし、現状は大きく普段とは違う状況にありまた気になる点がある、それが状況説明をする事に対しての抵抗となっている。
(もう少し状況確認が必要か?)
集まって来ている男たも抜け目なく様子を伺いる。
(抜け目ないな)
男たちの様子を確認しながらキャラバン隊の旗に書かれている紋章を確認する。
(剣に貫かれた騎手の紋章)
この辺りで最大手のキャラバン隊【倒れし騎手】の紋章である。
(キャラバン隊自体はよくくる部隊だが)
¨ザラリヤ¨はさらに集まって来ている男達の顔を確認する。
(見知った顔がないない)
【拒みの森】、それに連なる山脈のためこの近辺での生活環境は厳しいそれゆえに住んでいる者の数はそれほどおおくないく少し離れた場所に村が一つあるだけであり、後はかわりもか訳ありが。
そのような場所ゆえにキャラバン隊もおのずと顔見知りになる、しかし今目の前にいる男達に顔見知りは一人もいない。
(いるわけがないか)
もしいるのなら今のような状況になってるはずがない。
¨ザラリヤ¨も【キャスリック村】周辺ではそれなりに有名な変人である、例え一人でぶつぶつ呟きなごら、大声を出していちも声かける事はないくらいには…
見知ったキャラバン隊の〈紋章〉を掲げた、見知らない顔のキャラバンメンバー…
(警戒しない訳にはいかないな)
両者の間に緊張が高まってくる。
(時期が時期だからな)
そうこうしているうちに、最初に声をかけてきた男が脇に置いてあるナイフに向かって手を滑らす姿が見える。
〔ガッチリ〕
¨ザラリヤ¨のマントの内から金属音が静かに音をたてる。
『くださいな!』
両者の意表をつくようにカン高い女の声が響く。
同時に両者が声のした方に目を向けるがそこに声の主は発見できない、怪訝に思っていると声が続く。
『アトニスの実ありますか?』
声を追いかけるように目を凝らすと少し離れた街道の小高い丘に豆粒ほどの人影が確認できる、距離はかなりあるようだ。
(あれは、たしか)
豆粒の影は猛スピードで向かってくる影に見覚えがある。
目をやるとキャラバン隊のメンバーも同様のようである。
(なら争わなくてすむかな)
相手もそう認識したのが目にとれる、すでにナイフは元あった場所に戻されている。
豆粒は今ではこぶしだい程度の大きさになっている、かなりの速度で向かってきている証拠である。
「¨カナリア¨だな」
今まで一言も声を発しなかった¨青凪¨が聞き慣れた少女の名を告げる。
「間違いないないな」
見慣れた少女の姿が大きくなってくる。
(流石にまだ少しかかるかな)
大きくなる姿を見つめながら到着時間を計算する。
「また家には変えれないな」
誰に語るともなく呟く。
そんな¨ザラリヤ¨に【夜のさきがけ】の緑の輝きが眩しく写る。
そんな間も少女は全力でかけてくる。
まるで姿を表した【夜のさきがけ】に飛び込んでしまう勢いである。
「なんか騒々しくなりそうだな」
また呟きが漏れる、今回は¨ザラリヤ¨自身気づいていない。
今はこの場の全員が少女の到着を待っている、それほど時間をかけずに少女は到着するだろう。
(待つかな)
【夜のさきがけ】はさらにはっきりと姿を表してきている。