拒みの森
『トーク』
『全く手伝いもせず』
辺りに低くしかし聞こえのよい声がひびく。
突然の来訪者の大声に森の木々がざわめき警戒の色をあらわに、〈赤く〉色付いていく。
その様すを確認しながら大声の主は赤く色づいた森に注意深く辺りの様子を伺う。
(これ以上は無理か)
一般的に森は侵入者を忌み嫌う。
自らのテリトリーを荒らし、森の繁栄を妨げる外敵てして…排除を行ってくる。
当然であるこの終わりの世界【コンザー】では全てが平等でまた公平である。つまり搾取者は種族や生態系で決まるものではなく、その者の生命力…生きる力・意思こそがすべてである。
森に生きる木々とて例外はない、この世界では自然とて簡単に従属してはくれない、〈命〉に対して常に平等で公平な現実こそが世界の不変の原則である。
来訪者はひとしきり辺りの様子を伺い、ざわめきの原因がほかにないことを確認にして渋い顔になる。
(この程度で森がざわめくなど…)
自身がおかれている状況に戸惑いを隠せない。
ここはまだ森の入口であり、これ程の反応は本来あり得ない状況である。
(おかしい…まさか…考えられるのは)
一つの結論にたどり…不可解が膨らむ。
(何かの攻撃…誰かの差し金…)
たどり着いた結論を肯定するために・周りを警戒しながらさらに考えにふける。
その間にも森は燃え盛る炎のごとく急速に赤く色づいていく。
(まだ大丈夫かな?)
来訪者は危険と安全をはかりにかけて状況を判断するが判断は迷われる…来訪者の顔がまた一層険しくなる。
通常の森であればこの程度の敵意は気にするほどではないが今訪れている森はそうゆうわけにはいかない、ここは〈アキスラキヤ〉でも有数の武道派の森は近隣でも最も排他的森で名高い【拒みの森】モークである。
森の奥に向かい折り重なる木々全てが赤く色づいていく。
「一旦帰るか」
先ほどの迷いを一切感じさせずに誰かに語りかけるように呟く。
決断からの行動ははやく今来た道を踵を返し森を後にする纏っているマントの裾が急激な変化に慌てて追い付こうと大きくなびく、だたその紫の瞳には色づく木々に口惜しい敵意をのとこしている。
(ことを構えりるわけにはいかないからな)
(後でお仕置きだな)
目的を達成できなかったが自らの考えにいくぶんか納得して声の男は森を後にした。
「行ったか?」
赤く色づいた森の少し奥まった藪の中から声はした。
〔ガサ…〕
〔カッチャ…〕
枝の擦れる音と金属の重なる音が漏れる。
「ヤバ…」
「大丈夫だな」
「全くほんとに諦めが悪いんだから」
「毎日、毎日やってられるかってんだ」
悪態をつきながら音のした茂みから赤い葉の間から白銀の輝きが藪の根元から滑るように今度は音もなく、どこともなく躍り出る。
「ふー」
現れたのは若い男である。青年と言うにはまだ幼さを残しどちらかと言えば少年と言える年頃である。
顔は先ほどから藪に隠れていたため細かい擦り傷まみれであり、短く切り揃えた紫の紙には小さな枝すら絡まっている、不思議と絡まっている葉の色は緑色をしている。
顔立ちはいたっては特に目をひくもところはない。
しかしその下半身は異形であった。
腰から下は白銀の鱗に覆われており、その鱗一つ一つが大きく重なりあう様にびっしりと4本の足に張り付いている、
4本!?つまり少年の姿は上半身は通常の人型しかし下半身は四獣の身体である、その姿は森とともに生きる獣属にして誇り高きか【アマクラ】一族の姿に他ならない、それならば先ほどの音もなく現れたのも納得がいく、身体を潜め4足で木々に紛れて獲物を狙う彼らなれ造作もないことである。
しかしその一族ならば優麗な流れる体毛が有名であり、森とともに生きる種族でありまた森自体が深く栄えているとめ金属的防具の類いは装備しないが、先ほどの音・輝く白銀からはその例にはならってないない。
「匿ってくれてありがとな¨かなや¨」
今で隠れいた藪の奥にたたずむ一本の木に向かって語りかける。
「本当にに良かったのか?」
「ザラリヤ様、後が怖いぞ」
語りかけられた木は語り返す。
不思議な声である、確かに声を発しているのだがどこから発しているのかわからない不思議な感じである。
(枝と葉っぱの擦れる音かな?口ないしな)
いつも思う疑問を感じながら返事を返す。
「大丈夫だよ、なんだかんだと優しいから、多分」
¨かなや¨の心配に苦笑いで返すが返事は帰ってこない…
「アトニスの実とって帰るよ」
無言のプレッシャーに押しきられて¨トーク¨声を絞り出し後ろからプレッシャーをかけている親友の様子を伺う。
「そうだな」
「アトニスの実はザラリヤ様の好物だし、今の時期取れるのはこの【モーク】たけだしな俺も頼んでやるよ」
いつものことだかこの憎めない友人の最大の謝罪の気持ちに答える。
(いつの頃からだったかなこの憎めない友人とこのようなやり取りをするようになって…)
この【アマクラ】の友人である事に懐かしさと喜びににた感情に支配される。
¨かなや¨は【メタ】の一族である、自らの身体を用いて森を造りその森と共に生きる者たちと共存共栄の営みを行う一族。
この【コンザー】における〈創造〉に属する種族であり長命でもあり¨トーク¨よりはるかに長い時を生きている。
そんな長い時の中で出会った憎めない友人を気に入っていた。
(ちょっとワガママなんだけどね)
¨かなや¨の沈黙が自身の発言のせいではないかと沈黙に耐え兼ねてあからさまに¨トーク¨が様子を伺っている。
(【アマクラ】だというのに本当に感情とか隠すの下手だね)
森と共にある種族である【アマクラ】は狩猟が日々の生業であり当然であるが隠密に秀でている、しかし何事も例外は存在する。
(やっぱり親父さんの影響かな…)
『¨かなや¨』
苛立ちのこもった声が¨かなや¨の思考を止める。
¨トーク¨の苛立った顔が向けらていた。
(どうやらかなり考え混んでたみたいだな)
【メタ】である¨かなや¨にとって時間の感覚はずれやすい、簡単に言えば些細な事すら永遠の時をかける事も日常茶飯時である。だから余り他の種族とは付き合わないし付き合う事ができない、二人が友人である事のほうが珍しいのである。
(そろそろ警戒かな)
また考えこんでしまいそうになるのをしかめっ面の¨トーク¨の顔が食い止める。
「さて今日は何でザラリヤ様から逃げて来たのかな?」
「こんな外れの森まで」
¨かなや¨の問いかけに・自分が無視されていない事に満足したのか機嫌のよい声で答える。
「お使いだよ」
「【カハヤ】の町まで」
意識的に眉間にシワを寄せて、最悪だと言わないばかりに早口でまくしたてる。
「信じられないよ」
(そんなに嫌がらないでも)
さすがに¨トーク¨の反応はオーバーに思えたが、確かに【カハヤ】の町となると一仕事どころではない。
【モーク】から【カハヤ】までは歩けば3日はかかるしかも今は〈祈りの暦〉下手おすれば命だってあぶない。
(解らないのは何故ザラリヤ様が今、¨トーク¨を町に向かわせようとしているのかだが)
気疲れないように¨トーク¨を伺って見るが¨ザラリヤ¨に言われた事を思い出したのかしっぽをジタバタさせている。
(¨トーク¨には心当たりはないか…)
¨かなや¨ひとしきり可能性を考えてみてこの件を考えるのをやめた。
(あれほど可愛がっている¨トーク¨に意味なく危険にむかわすことはしないだろう)
(今は他にやらなきゃならない事があるしね)
まだジタバタしてる¨トーク¨目を向ける。
ジタバタしてるかと思えば両手を強く握りしめて何か呟きだした。
(ヤバイな、あ~なるとろくなこと考えないからな)
友人の変化に怪しさを感じられる程度には付き合いは長い¨トーク¨最悪の結果にたどり着く前に声をかける。
「〈夜の先駆け〉が顔おだしてきてるぞ!」
¨かなや¨の声につられて山脈の間から見える〈夜の先駆け〉に目を向ける。
「アトニスの実を採るなら急がないと間に合わないぞ」
¨トーク¨が声を発するより先に¨かなや¨は続け様に声をかける。
矢継ぎ早にかけられた声に押されて
「急いで行くぞ」
先ほどまで考えていた事など綺麗さっぱり忘れたて¨かなや¨に声をかける。
「わかったよ¨トーク¨」
「急ごう」
¨トーク¨に先ほどの考えを?・悪巧みを思い出す前に目的に取りかかる事が最善であるのは火をみるよりあきらかであり¨かなや¨の対応はそんな観点けらは完璧な対応である。
(しかし本当に¨トーク¨は素直と言うか単純だよな)
目の前の友人に目を向けながら優しく葉をゆらす。
(今日も楽しい1日になりそうだな)
「¨かなや¨」
¨トーク¨が急かす様に語りかけてくる。
「すぐに準備するよ」
「今日も楽しい旅のはじまりだな」
¨トーク¨に答えたと同時に¨かなや¨が光に包まれる。
それを確認した¨トーク¨は満足した様に頷き。
目的地・【モーク】の更なる奥地に向かって歩みはじめる。
¨かなや¨を包む光はまだ輝き続けていた。