謎の地下室で見たもの
「おい、まさかお前びびってんじゃねぇの?」
「びびってねぇよ。少し歩き疲れただけだ」
初夏の夜、俺達二人は肝試しに出掛けた。
場所はN県北部にある森林地帯だ。
友達の友達から聞いた話によると、この辺りには昔、古いホテルがあったそうだ。
でも、宿泊客の行方不明事件がおきたことを契機にしてホテルは閉鎖された。
もちろん警察は行方不明者を探した。
でも見つからなかった…。
行方不明者はどこに行ったんだろうか?
そして、行方不明者と共にホテルのオーナも姿を消した。
警察は必死で行方を探したのだが、未だにどこにいったのかわかっていない。
「お~い!ここだここ、XXXホテル。昔の看板がまだ残ってる!」
陽介は興奮した様子でそう言った。
「本当だ…。でもここ危なくないのか?けっこう中古そうだけど」
「大丈夫だろう。肝試しにはちょうど良い場所だ。さぁ、行こう」
こして俺達二人は廃ホテルへと足を踏み入れた。
「うわ…。お前の言った通りやっぱり中ボロボロだ…。でも崩れたりはしないよ。床や天井は頑丈そうだし。あ……調度品とかもそのまんまなんだな」
陽介が懐中電灯で辺りを照らしながらそう言う。
「営業していた時のままなんだろ。捨てるにしても金がかかるしさ」
素っ気ない感じで俺は陽介にそう言った。
奥へと進めば進むほどカビの臭いが強くなる。
人の手が入らなくなった建造物というのは時間がたてば皆こんな風になるのだろう。
「おーい!直紀!こっち来てみろよ!」
陽介が何か見つけたようだ。
「おい、この部屋なんかおかしくない?」
「えっ何が?」
「いや、だからこれだよ?」
陽介は床を指差した。
たしかにおかしい。
この部屋の床は一面木目のタイル張りになっている。
でも角の一角だけ灰色になっているのだ。
まるでそこに「何か」が隠されているかのように。
「おい、この灰色の床動くぞ…!金目のもんとかあるんじゃね!?」
床を調査していた陽介はワクワクしながらそう言った。
「動くって…。古くて床が腐ってるだけじゃない?」
「いや、そんな感じじゃない。なんていうか…。取れそうだ!」
カパッ…。
灰色の床が取れた。
「おい…。直紀…。下に続く階段がある…」
「えっ!?階段?」
下をのぞきこむ。
たしかに下に続く古い階段がある。
「ほら、やっぱり。下に降りてみようぜ」
興奮した様子で陽介はそう言った。
「止めとこうぜ…。下がどうなってるかわかんないんだぜ?」
「いや、だからそれを俺達で確かめるんだよ。客が行方不明になった手がかりとかあるかもよ?先に降りとくぜ」
「手がかりって…。おい、待てよ!」
二人は謎の地下への階段を降りていった。
下に着く。
中はちょっとした空洞になっていた。
部屋のようなものも何ヵ所かある。
そしてとてもカビ臭い。
「なんだよ…。ここ?」
不安そうな表情を浮かべながら陽介はそう言った。
「お前が下に降りてみようぜって言ったんだぞ」
「いや、そうだけど…。何に使ってた場所なんだ?」
「さぁ…。ワインの貯蔵庫とか?」
「まぁ、調べればわかるか。よし直紀!調べてみようぜ」
「お前、本当にこういうの好きだよな。どうせなんもねぇよ……」
そして、俺達は地下にある部屋を調べ出した。
最初の部屋に入る。
中は異様な雰囲気に支配されていた。
儀式に使うような装飾品や祭壇がところ狭しと置かれている。
何に使うかわからないような薬品もたくさん置かれている。
「おい、なんだよここ…。悪趣味すぎるぜ」
陽介はとても不安そうだ。
「わかんねぇ。ここで誰が何をやってたんだ??」
謎が謎を呼ぶ…。
次の部屋に入ってみる。
黒い棺桶が三つ置かれている。
本当に悪趣味すぎる。
そういえば、このホテルで行方不明になった人も三人だったような…。
「おい、直紀!日記があったぞ!」
どこから持ってきたのか陽介が日記を持ってきた。
よく見てみると、どうやらホテルのオーナーが書いた日記のようだ。
日記を読んでみる。
最初の方はありふれた内容だった。
でもしだいに内容がおかしくなっていく。
そして、ある日から黒魔術の話題が増えていく。
そこには戦慄の内容が書かれていた。
X月7日
早く人間を使って黒魔術の実験がしたい。
動物では飽きた。
X月15日
人間捕まえてきた。
ホテルのオーナーをしていて良かった。
もう後戻りはできない。
やる。
X月18日
実験、失敗。1人死亡。
悲しい。
X月19日
また失敗。1人死亡。
悲しい。
X月20日
成功。
やったーーーーー。
異界の門が開いた。
ここで日記は終わっていた。
日記を読んでいた二人の顔がみるみる青ざめていく…。
「な……なんだよ、異界の門って…。ここのオーナー狂ってる。いや、待てよ…。と言うことはこの後ろの棺桶の中は…!?」
陽介がブルブルと震え出した。
「オーナーが犯人だったのか。こりゃあもう肝試しどころじゃねぇぜ!」
「あぁ、警察に行こう!この日記が証拠だ!オーナーが犯人で間違いない!」
オレ達の考えが一致した。
この時、二人はまだ気づいてなかった。
二人の後ろに黒魔術によって異界の存在となったオーナーが立っていたことに…。
「この地下室からお前達を出すことはできない」
オーナーはニヤリと笑いながらそうつぶやいた。