“スポンサー“
【小林 慎太郎】 21歳
Fランクの大学なんて就職先なんて無いよ。
あってもしれてるよ。
それに、面接する立場は学歴しか見ないさ。
頑張るだけ無駄だって。
本当、いろんな人に言われたなあ。
先生、ゼミの担任、サークルの先輩。
結局、なんもしないわけにいかないんだけどさ。
履歴書何枚書いたっけなあ。
あんまり覚えてないけどレポートより作ったかも。
かなりの枚数だった、かなあ。
ひたすら面接に行ったね。
数射ての戦法で、自分でも何の会社に行ってるか段々わかんなくなってたな。
遊びたいしデートもしたかったけど我慢してこれに集中してた。
いや。執着してたのかも。
何だかんだあって、無事就職はできた。
安心してたら彼女が居なくなってた。
当たり前なんだ、連絡もデートもしてなかったし。
少し、落ち込んだ。
自分の朗報を聞いてほしい一心で、空回りしてたんだ。
今となっちゃ本当、就職前に戻りたいよ。
テナントアドバイジングって言ってさ、
空きテナントや売れ行きの低迷してるテナントや、クライアントの要望に沿って事業展開してく、そんな仕事に着いた。
かなり忙しかったし、新しいことまみれでがむしゃらだったな。
俺らしくないってやつ。
研修中は手取り18万の給料で中々悪くないと思ってた。
研修があけたら、自分の契約数やアポイント数のみの歩合制になった。
どこもそうなのかなって、最初はびっくりしたけど従う他無かった。
ここで、切られたら他がないってほんとに焦ってさ。
でも契約0で月の給料0って、恐怖に鳥肌がたったよ。
先に入ってた野畑けさんが、今月の給料無しだって。
新人の俺にはとてもじゃないくらいのプレッシャーになったよ。
ビックリした。
そんなの始めに聞いてないし、給与プラス歩合制って言ってたじゃないか。
歩合が0なら給与0ってふざけんなよ。
やってられるか!辞めてやるわ!
って。
胸の内で呪いのごとく奏で、
今日もデスクワーク。
外回りは至って単純だった。
一件一件挨拶に回り、興味がある人にプレゼン。
そこからアポイントに嗅ぎ付け、契約までもっていく。
つまり、アポイントまでいけるトーク力がミソだ。
因みに、今じわじわと俺のプライベートを侵食してるのがFacebook。
クライアント、顧客、お得意様のページを
“いいね“したあとに“お気に入り“に、しなきゃいけないってこと。
別に一新人の俺なんか関係無いかもって思ったけどさ。
こないだの接待で、「君、遊んでるねえ。今度私にも紹介しなさい」って、寒気しながらふざけんなってなったよ。
マジかよ。
チェックし過ぎだと思うでしょ。
だからさ。
自分の過去の投稿全部消したよ。
記録には残せないなら胸に残すことにしたよ。
これでさ、会社のストレスが無くなったわけだし。
俺のストレスも減ったわけだし。
クライアント、スポンサーからの変なリクエストも無くなったわけだし。
あーあって、なったよ。
デスクワークしてさ、外回りおわって、
会社に戻って明日の予定たてて、今日の振り返りして。
クライアント、スポンサーのFacebookチェックしてさ。
なんとか給料貰わないと、洒落にならなくてさ。
Fランを恨んだりしてさ。
晩酌がてら発泡酒飲んで、寛いでね。
まったり週末が一番の幸せだったり。
そういえば何日か前に来てた申請、何だったんだろう。
取り敢えず何でもyesだったからちゃんと見てなかったなあ。
会社のせいで何にでも“いいね“してたからな。
何だろう。
「あなたは選ばれますか?」
「あなたには選択する権利がある」
「友達になりませんか?」
「あなたの世界を私たちと」
んー。
悪質な感じじゃないかな?最近何でもOKしてるし。
取り敢えずいっか。
申請を許可しますと。
『新しいメッセージです』
おお、何だろう。
URLか、やっぱ変なサイトかな。
『新しいメッセージです』
まただ。面倒になったなぁ。
「あなたの選択をお待ちしております」
なんの?取り敢えずURLにアクセスしてみるかな。
なんだ、YouTubeじゃん。
何の動画だ?
ん?アニメ、だな。
なんかパワーパフガールズみたいな描写じゃん。
何だかんだ全部見ちゃってさ、
ま、結局誘われるがままこの船着き場に居るわけで。
俺の不安を無視するように、人生の時間は進むんだよね。