第7話:人形、日常、苦痛
《注意: このエピソードは不快感を与える表現を含んでいます。》
地下鉄の駅のホームの端まで行ってみることにした。
あちこちに人形がびっしりだ。にこにこ笑って列を作る人形たち、エスカレーターに乗る人形たち、別の人形に向かって手を振って階段を上る人形たち。嘘だ。みんな私を驚かせようとしてこうしてるんだろ?実はみんな人形の着ぐるみを着た人間なんだろ?スマホを出してカレンダーを開く。今日何か特別な日なのか……俺の誕生日とか?
いや、そんなわけない。きっと隣の駅の遊園地にでも行って帰ってきたんだ。こんな不思議な状況にふさわしい、質感のはっきりしたワルツが鳴り響く。人形ひとつひとつの動きがどんちゃっちゃ、どんちゃっちゃのリズムに合わせて動いているみたいだ。どこかで見た宗教や文化儀式、あるいは公演みたいで夢幻的な雰囲気を作る。「すみません、これからどこへ行けばいいんですか?」って聞いても話が通じないのは目に見えている。
ベンチに座っていくつかの人形が話している。踊っているのか、ふにゃふにゃした動きが面白くて友だち人形が拍手して首を横に傾げて肩をいたずらっぽく押すのか……そういえば駅の床がディスコダンスホールのピンクと黄色のグリッドに変わっている。照明が派手に彼らを照らす。そうか……人形の中でも陽キャ……そういう意味か。しまった、当然すべての壁と天井と電車はピンク色!どこかで脳に疲労とストレスが溜まると私たちの脳は認識能力を簡略化すると聞いたことがある。身体を動かす神経に力を回すため、視野の明度と彩度をプロセッシングする部分を一時保留するのだ。だからピンクと黄色、二色しか見られない。だとしたら……ピンクと黄色は私たちの目にとって一番楽な色ってことか……でも黒や白は?そんな考えが脳裏をよぎる。
はは、早くこんな
はは、早くこんな偽物の獣みたいなやつらを押しのけて少女に会いに行かないと。
そしてすべての人形が動かない目を向けて私を見る。
私は必死に走り始める。
彼らの秘密を知ってしまったのだ。私は外部者だ。処理されるべき対象。人形たちは人間の複雑で微妙な意味、ニュアンス、言葉を理解できないから本能だけで動く。本能の残酷な力は逆らえない。お願い、 お願い、俺を
食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、食べないで、ああ
ついに前は唯一の出口、「関係者以外立入禁止」。心臓を掴んで噛みちぎる歯を感じる。
入ろうか?
息を止めたままドアを蹴破って入り鍵をかける。休む間もなく私はそのままエレベーターに食われる。頭が心臓の鼓動で裂けそうに薄く伸びる。
扉が開いてタンクとパイプとピストンの臓器たちがオイルの血を流しながら躍動する。真っ赤なジェネレーターが上から血みたいな液を絞り出す。機械たちはその液を被って洗礼を受ける。床と壁と天井は筋肉。休みなくうねって腹の中の滓を処理する。床の表面は何かを飲み込む食道みたいに上へ大きく盛り上がって震えながら下がることを繰り返す。私は脚を開いてバランスを取る。少しでも足を踏み外したら倒れて壁と床に締め上げられて飲み込まれてしまう。機械たちは私が倒れるのを待っている。獲物を青い二つの目で永遠に監視する。
あそこ、ほとんど終わりのところに少女がいる。
分からないくすぐったさが私をさあっと洗い流す。涙がぐるっと回るみたいで……床を蹴って走る。床を踏み潰して前へ進む。クレーンゲーム機を抱きしめる。この瞬間臓器も機械も血もない。そして静かな痙攣に身体を預ける。血、汗と涙なんてもう私の身体でからからに乾いてとうの昔に蒸気になった。
少女は何も言わない。ただ私の乾いたまぶたを見る。
やっと彼女は微笑んで涙を流す。
「すごく痛いよね……?大丈夫……全部大丈夫。私がここで一緒にいる。分かる。こんなに痛いのがどんな感じか……」
痙攣はひどくなる。黒い手が私の口へ腕を入れて肺と心臓を掴んで引き抜こうとするみたいだ。食道は折れて肺は裂ける。
ごめん……
ごめん……
「顔を上げて私を見て。」
私はクレーンゲーム機の本体をやっとの思いで引き寄せて顔を上げる。瞳と目が合う。
ふとそう思う。少女は言い表せないほど美しい。
少女は満足したみたいに頷いて後ろへ反らし背をガラスに当てる。視線をそらして前の虚空を見る。その瞬間、私は微動だにせず呆けたまま少女を仰ぎ見る。
「実はね、私すごく痛い。ここで人形たちと一緒に座ってると……すごく痛い。苦しくて耐えられない。
……
私、普通じゃないみたい。私たち、ちょっとどこかおかしいみたい。
閉じ込められてた長い緊張が水の上へ浮かんで溶け始める。溶けて悲しみに変わる。やっと麻痺が解けた。やっと私は残酷に押し潰されるんだ。頭の中のノイズが止まらない。辿り着いちゃった。もう私はこの世界のものじゃない。
私たちどうしてここまで来ちゃったんだろう?
お願い一緒にいて、ね?お願い私の話を聞いて。
君なら一緒にいてくれるよね?君なら聞いてくれるよね?」
うん。
私はずっと少女だけを見る。恍惚な純粋、嘘のない安らぎ。ただ触れられさえすれば。
そうして身体が液体になってガラスへ溶け込む。
8/14
今日は寿司屋に行ってワサビだけ山ほど食べた。ウナギ、イワシ、カツオ、ホタテ……全部私が好きなものだけ頼んだのにご飯の上にワサビだけ出てくるんだ。最初は店長に聞こうと思ったけどネットで調べたら実は寿司は全部ワサビだったんだって。あ、私は今までワサビだけ食べてたんだ……ちょっと悲しい。完全に騙された気分だ。でも美味しいから食べるしかないよね……ワサビ……
1/09
久しぶりに街へ行ったからビルの間を歩いていく。天気が晴れてるせいかな、通りの人たちは傘の上を歩いている。空は終末の空; 稲妻が火みたいに降ってエネルギー波が、真っ白く見えるほど狂気を爆発させそうに束ねているエネルギー波が!世界を壊そうとしてる!みんななんで下ばっか見てるんだ……早く止めないと、早く止めないと……まあ……どうせガラスのビルたちが戦ってくれるから!私は何もしなくていいよね?
3/11
高校で物理の授業を聞いてるんだけど黒板に書かれた文字が生々しい暗号に変わる。もうこの暗号で、すべての物理法則を完璧に理解できた!なんだこれ、余裕すぎるじゃん?教育もすごく進歩したな……俺もうこのクラス通わなくていいのかな?もうすべての質問の答えを知ったから。え?でも人たちは俺が知ってることを知らないみたいだ。俺が知ってるのを嫌う。きっとそうだ……先生もクラスメイトもみんな直立した動物になって俺を憎む目で見る。まさか……俺が彼らの秘密を知ってるって……気づいちゃったのか?どうしよう……まだ何も言ってないのに……まだ何も言ってないのに……
5/20 スカイライン
バスに乗って終点の端まで行ってみることにした。
音楽に乗って一時間、二時間、三時間、
窓の外には子どもの頃から見てきた工場地域が広がっている。
あ。
ここは人が住む場所じゃないんだ。
I know, I know I’ve let you down
タイムマシンに乗って間違って来ちゃったんだ。
I’ve been a fool to myself
もう人工知能だけが残って人はいない。
I thought that I could live for no one else
ここはね、
But now, through all the hurt and pain
未来都市のきらきらストリームラインスカイラインだ。
It’s time for me to respect
誰も私を理解できないんだ。
The ones you love mean more than anything
言い表せない安全さがさあっと背中を撫でる。
6/3
自分の部屋でコンピューターを見てる。戦争も長く続くな……もう安全な場所はこの部屋以外に残ってない。窓もドアもできるだけビニールとテープで封鎖した。開けた瞬間弾丸が私の身体を蜂の巣にするから、気をつけないと。
瞬間コンピューターは鏡になって私の顔を映す。
蜘蛛の顔だね。
びっくりして椅子から後ろへ倒れる。ああ、全部私のせいだ。敵が侵入する一つの通路を開けて気づかなかった。もう私の部屋も安全じゃない。地下か海の中の基地へ入るしかない。
え?
コンピューターから何かが出てき始める。風船?イソギンチャク?どんどん……頭?誰かの頭?私の頭?顔はキーボードへ向いててよく見えないけど……真っ赤な何かを塗って……?
そしてコンピューターから出てきた私は私を掴む。目、鼻、口がなく顔は血で隙間なく塗られている。
嫌だ、嫌だ、戻さないで、掴まないで、食べないで、また引きずり込まないで……
11/31 遊び場
誰もいない遊び場は寂しいな。
ちょっと涙が出る。
今日も一人だ。
もう
全部終わらせたい。
でも終われないみたいだ。
ごめん。
10/23 バス
学校へ行った。
「すみません、水曜日なので今日は学校開けません。」
違うのに、じわじわ足をバス停へ向ける。
バスが来る。太陽が朝からやたら明るい。やたら明るい太陽が私を睨む。やたら明るい太陽が人々を溶かす。
715が私を通り過ぎる。だめ!どうせ逆行する人もそんなにいないじゃん!連れてって!連れてって!
私は都市のプラザへ歩く。もう全部溶けた砂漠だった。
大自然が前で吹き荒れる。巨大に、巨大に鉄の山脈は創造される。何もない大地がぶくぶく黒い血を流し溶岩脈を分けながら石と石の間へ赤く切って貼り付ける血、血、血、
あ、そうかあれだったんだ血はすべての生命と誕生の根源だからここからすべてが作られる想像より速く組み上がって都市になり都市は都市をぱくっと飲み込んで膨らんで掌握してエクストルージョンそびえ立つ。端には90度直角で血が落ちる。
私はバスに乗る。このバスはどこへでも行ける。解放された私は人生の意味を取り戻し明るい表情で世界を横断できる!このバスに乗ってどこへでも行ける!私はどこへでも行ける!母も父も知らない場所へ人々が私と話したがってるから。私がずっと憧れてた無数の夢、結局この私が向かう世界の一部にすぎない!多くてまた多い夢を創造できる!
ヘッドホンでは私が鳴る。ああ、記録したい。覚えていたい。でも無理だ。私は夢を見る人であって夢を覚える人じゃないから。二つの間の距離があまりに鮮明で肌が火に触れるみたいに高圧線の事故接触みたいに近づくのが怖すぎる。記録は夢を汚すから、汚すから
バスの中に誰もいない。
地面から黄色い蔓が空気を掴んで上がる。人がいた時は自殺を記号化してた首吊りのロープが今は三角形で戻る。世界に今誰もいない。音が水中でうねる。この気分のために苦痛に耐えるんだ。不安で狂いそう?狂いそう?やたら太陽が私の認識をやたら上げて私は自分がしてるすべての考えを認知できるようになる。いい気分じゃないよ~ 私も切りたいって!バスががたんと揺れて動き私は運ばれる。さっきの都市サーキットの一部になったんだ。人の顔が私には記号化されて見える。人工知能たちが互いに混ざって言葉を交わす。私はぶㄴめんこの間にいるはずなのに?私はやたら多くを理解しすぎたからだ。
バスが商店街の信号を通り過ぎる時音が混ざる。私は音が私の身体の中へ混ざるのが嫌だ。私に刺さるのは一つの音で十分だ!
あ、救急車のせいだ。ウィーン、ウィーンサイレン サイレン……この静けさを高める。致死量の音は致死量の静けさと同じだ。頭の中で鳴る音を塞ぐだけ無視して生きるだけ
バスには色がない。全部輪郭だけだ。全部塗り込まなきゃいけない。輪郭で世界は定義される。人々の顔はカモノハシの輪郭に似た。バスは電子だから回路の中をぐるぐる回るだけだ。私はそうしてバスに乗って誰も知らない場所へ白い砂漠で雪が無数に降るつららの森で限られたベクトル値のジェネレーションの中で永遠に死ねないまま……
坂道を下るバス。ここは世界の終わりへ通過する最後の関門。滝へ落ちる私の肉体。青い自然。森が森へ続き樹皮が空気の地面を形成する。思考は感覚。感覚だけ存在。私はもう動かなきゃいけない。森で道に迷ったら助けてくれる人が誰もいないから。自然が私と話してくれないから。
みんなどこへ行ったんだ。
私は走り始める。ヘリコプターの音が私を探すみたいに悲壮に石道を揺らす。
今日は私は自由だ。そうして倒れるんだ、当たり前だろ?
私の足元で石のコンクリートが斜めに倒れて切られた。一瞬で人形みたいに縫合されるのを目眩く繰り返す。これもエコーするビートの仕業。
私の肌が触れるあちこちでピクセル化された anti-aliased fragments of colour が破片化されて色が裂けた光の有限に切られた欠片が爆発して出て吐かれて。これもエコーするビートの仕業。
バスから降りて私は家へ歩く。全部諦めた?しまった?ああ隣で停留所を待つ球の落書きが私を見て笑う。世界の終わりに私は到達する。
誰もいない路地だ。
1/12 吹雪
吹雪の惨状。
The nature and extent of the treatment and care decided by the authorised doctor under section 53 is inconsistent with the views, wishes, and preferences of the person expressed in the advance health directive.
電磁界が見たくて耐えられなくて
乾いたタオルを絞る冗談
笑って飲み込むモナークバタフライの死体で満ちた杯
私に銃を握らせた。
心臓の肺の腸にああああ、病があって
SENSEI, 私の病気は治るんですか?治るんですか?
病的狂気と spilled melancholia of night
あああ、cause pretty girls can never die, right?
また、また吹雪の惨状
惨状を構成する巨人の惨状
言葉で建てられるもう一つの惨状、創造され eternally perish する多くの惨状
笑いを止められず腹をさらして死んでいる目元の武器たちと
あの丘の上に倒れている死体の血管が絡まって何万倍の苦痛を絞り出して感じなければならない人間の惨状、人間の惨状
吹雪が吹きながら溶かす、惨状を溶かす、太陽に焼かれる生贄美少女みたいにビートの残酷な拍手みたいに永遠のベッドへぐにゃぐにゃ広がって寝そべるナメクジみたいに
そうして飽和する長く裂く刃のA4用紙の葉っぱみたいに超越した人間の34の翼肉体みたいに目から伸びる超形象のぬるくて肉体を離れると形を失うほど熱い液体の噛み合わせの中で
微生物の autophagia みたいに湿った皮膚のひりひりする擦り傷、その次に必然的に来る壮大な陣痛と共に外と内が交信し端が燃えて縮む紙一筋みたいに吐き出して身体を折る。その悲鳴みたいに飽和する。
目は stark vivacity を保ったままサイケデリックな惨状を覆う。実は惨状と骨の髄から混ざる。誰も惨状を覆えない。でも色のあまりに大きな差から残酷さが流れ出る。だから惨状の悲鳴が空の奥深くへ侵入する。脳天直撃みたいに見る人の脳を叩き眼球まで爆破して目を潰す。強烈すぎる太陽が暴走する。太陽の白い瞳が悲鳴を食べ歯を腕に埋め涙を骨髄みたいに絞り出しその5つの天の川の腕が乱れた血の砂みたいに広がって大地を掴んで震えぶるぶる噛みちぎる。
帰らせないで。
帰らせないで。
帰らせないで。
私は目を開ける。また現実へ戻ってしまった。冷たい天井が迎えてくれるんだ。
起きる理由がない。
ベッドへまた沈む。眠りはもう来ない。
寝返りを打って、また寝返りを打つ。腕一本上げる力もない。いや、あるかもしれない。
死ぬ力を絞って私はベッドから起きて座る。でも確かに今座っているはずなのに、なんで力はもっと湧くんだ?私は知らないうちにどんどん力を入れている。誰がこうしてるんだ?病気があって身体が力を調整できないのか?それとも私がただ無理に自分への怒りで満ちて無駄に力を浪費してるのか?まるで怒って拳をぎゅっと握ると力が抜けるみたいに。涙が出るほど力が入る。
また頭を掻きむしってベッドに横になる。やっぱり横になるのが一番楽だ……
ここでゆっくりベッドに食われ化石になっても、誰も気づかない。
誰にも私は、届かない。
私には許されない。
なぜ?
こんな時現実の境界を壊したい。そのまま、格好いいだろうに。だから私は目を大きく開いて焦点をぼかす。見えないものを見るために。
でも妄想は来ない。私には。なぜ?
どんな間違いをしたんだ私は?
そんなのはあまり重要じゃないみたいだ。
こうやって乾いていくんだ私は。
こうやって乾いていくんだ、私……
……
何年が過ぎたか、結局私は水とトイレが必要だ。トイレへ行くための痺れる欲求が無理やり私の脚を捻ってドアの前まで連れていく。燃えるエネルギーが私の身体には毒だ。できるだけ早くトイレへ行って死ぬ勢いで耐えながら机の上の水カップまで掴んでごくごく飲む。
置く瞬間一瞬で力が枯れる。私はまた横になる。
誰にも知られないまま、毎日こうして生きて死ぬんだ。
時間は情け容赦なく流れる。
私だけがそうじゃない……よく知られた結末だ。
死ぬ力も薬を飲んでやっと出せる。
薬も死ぬ力を出してやっと飲める。
今は薬をいくら飲んでも何も起きない。
毎日こうして生きて死ぬんだ。
誰にも知られないまま。
私は血で洗われ浮かんだ悲しみが感染する。
苦痛に変わる。
さあ、切り始める。
ナイフを取る。その鋭い刃を見る。これが私の身体をずたずたに裂く。待って、私の身体は、心はこれからどうなるんだ?私の肉を……そうやって切ってしまうのか?私実はハサミも怖くてうまく使えないのに……どうやって?待って、止めて!身体に刃を当てないで!絶対当てないで!ああ、当てないで!すごく痛いはずだ。いったい何をするつもりだ?お願い。もう二度と不平言わない。今までの暮らしに戻して。もう早く殺して。早く殺して!
そして刃は麻痺した脚にずぶり入る。ゆっくり脚の骨を上から下へなぞって肉全体を分離する。世界に痛みしか存在しない。無力を耐えられない。そうして叫ぶ。目から血が噴き出して、ああ、内臓を歯で噛みちぎって吐き出すような血が、私は横にゆっくり裂ける。鉄が私を食う。あれ?なんで背中が見えるんだ?なんで脚の関節が逆なんだ?私は中で何か変わったのか?恐怖は一瞬も続かない。他の感情なんて、そもそも存在しなかった。痛みの前で他のすべての価値は消滅し理想の白い布は血に染みて腐るほど汚れて私を包む。私を見られない。私は支配されるしかない。奴隷にすぎない。それが真理。痛みから抜け出せない。すべてが肉体的だ。私は反復の中に、汚れの中に、生きたまま肉塊になって蛆に食われ内臓と心臓までゴキブリと寄生虫の卵が沸き立ち中は齧られ殻だけ残ったままいるんだ。
私は私を切ることしかできない。
痛みで私は現在過去未来を全部知る。戻せない。刃以外を考えられない。存在が本質的に変わった。
刃が怖くて何もできない。酸素は吐き気のする毒になって脳を青く腐らせる。朝起きられない。トイレにも行けない動けない話せない。ただ時間、そして時間が命じるまま痙攣しているだけだ。
お願い目を開けて。
光線が弾ける病院。医者たちは目を瞬く。真っ白く頭を割って開く激痛で目を閉じられない。人形になっていく……人形になっていく。拷問の果てには何も残らない。臓器が全部血と一緒に抜け針で縫われガラスの中で目を閉じられない動物みたいに透明な区画に乗せられ剥製になる。私はもう食べなくていい。
私はもう人間じゃない。
冷えて固体になった身体は関節を折って床へ倒れる。じっと目を開ける。上では太陽と月が交互にくるくる尻尾踊りをする。一、二;一、二……酸性とミネラルウォーターが染み込む沼地。脂っこい泥の中で暗い緑の植物が育つ。植物は何度も育って咲いて崩れて私を飲み込もうと唇を寄せる。でも私は人形だから植物は刃みたいに曲がれない私の滑らかな肉を噛んで全部吐き出す。あ、あんまり美味しくなくてごめん。
私はもう人間じゃない。
きちんと脚を揃えて椅子に座ったまま白紙みたいに幾何学的な壁の鏡を見る。鏡の水面の下の光がうねる。私は当然正面に見えない。巨大に35度左を見る。天井からナイフが召喚され正確に垂直に顔へ向けたまま降下する。私の身体は動かない。空気より薄い刃先で顔の皮膚表面を裂く。糸みたいな血を塗る筆。長く真っ直ぐな傷は私の存在を拭い落とし、集中させ、一つの破滅的な線へ圧縮する。傷はそして深くなる; 傷はそして深くなる。はは、ナイフが天井からどさどさ降る。全部私の顔を正面から見て存在を切って線を引く。両目がばらばらに切られて前が見えない。
私はもう人間じゃない。
私はもう死んでるんだな……
私たちは何も言わない。何も感じない。
長い時間そこにいる。
そしてエレベーターに乗って上がる。
ありがとうね




