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4.夜の町で

途中物乞いの少年が出てきます。苦手な方はご注意ください。

 城を脱出した私は城下町に向かっていた。先ほど城門の場所は把握していたので、恐らくそっちの方角に城下町があるはずと当たりを付けていたのだ。城の回りが堀じゃなくて本当に良かったと思う。


 しばらくは足場の悪い森の中を下って歩いていたが、やがて視界が開けてきたと思ったら、読み通り目の前には城下町が広がっていた。お城と同じく石造りの建物が並んでいるが、こちらは茶色みがかったようなものが多く、温かみのある感じだ。道も石畳で舗装されていて歩きやすくなっている。


「うわぁ、すごい」


 ヨーロッパの街並みを彷彿とさせるそれらは、私からして見ればどこを切り取っても絵になる場所だった。


 しばらくお上りさんのように周りを見回しながら歩いた。道に面した所にはお店がずらっと並んでいる。看板を見ると見たことのない文字が書かれているが、勝手に脳内変換されているのか何故か読める。しかも看板には文字と一緒に絵も描いてあるので宿屋だったり仕立屋だったり簡単に判別することができた。


(言葉が話せるのと同じで文字も読めるようになっているのかな?)


 言語問題に煩わされる心配がなくて助かった。


 夜も遅い時間だったので、ほとんどのお店は閉まっていたが、灯りがついているお店もまばらにあった。居酒屋のようなお店なのだろう。店内から陽気な声が聞こえてきていた。


 歩いているとちょうど目の前のお店から出てきた人たちがいた。私はてっきり人だと思ったのだが、よく見たら頭だけは獣だったり鳥だったりした。獣人や鳥人ということだろうか。私が見た1人は獅子で、もう1人は鷲だったのでとても迫力があった。


(色んな種族がいて、でも人間と敵対はしていないみたい)


 町中を歩くと異世界にいることがより一層実感として湧いてきた。


(どうしよう、考えてみたら私無一文だし。とりあえずどこかの宿屋で労働力を対価に泊めてもらう?)


 全くのノープランであったことを後悔し始めた時だった。


「サリア様、サリア様じゃないですか?」


 先ほどの居酒屋で客の見送りに出てきたお店のおばちゃんが声をかけてきた。


(え、まさかここでも?)


 私は嫌な予感を抱えながらも、振り返って本日何度目か分からない断り文句を言った。


「すみません、私サリア様じゃありません」

「何を仰います、やっぱりサリア様じゃないですか!?」


 おばさんは目をまん丸にしている。


「え?サリア様?」

「あの?」


 獅子頭と鷲頭の客は、サリア様の顔は知らないようだが、名前は知っているようだった。


「そうだよ、間違いない。サリア様、どうして、もう亡くなっているはずじゃ」


 おばさんは戸惑いを隠せていない。それは私も同じだった。


(サリア様ってお姫様だよね?一般人に呼び止められるほど人気だったの?)


 おばさんの声につられて店の中の人たちが窓や出入口から好奇の目で私を見てきている。


「本当だ、サリア様だ」

「え、なんで?もう死んでいるはずだろ?」

「でも間違いないよ」

「亡霊?」


 町の人たちの反応だと、サリア様は死んだことになっているらしい。転移魔法の研究は国家上層部の機密情報だったのだろうか。


 私がそんなことを考えているうちに、いつの間にか騒ぎはあちこちに広がり、ワラワラと色んな場所から人々が集まってきて、気付いた時には大衆に取り囲まれていた。


(民衆にこんなに人気あったのね、サリア様…)


 迂闊なことをしてしまったと猛反省するが、後の祭りだった。


「私、サリア様じゃありません!!」


 大声で叫んでみたが、大衆は全然聞いてくれない。


「サリア様!こっち向いてください!」

「ぜひ魔法の手合わせを!」

「心配してたんですよぉ」


(どうしよう、収拾がつかない)


 もみくちゃにされて、おしくらまんじゅう状態になっていた。


(どうすれば…)


「こっち、ついてきて」


 小さな男の子がスルスルと近づいてきて手を差し伸べてくれた。私は縋るようにその手を取る。子供は人混みを掻き分けるように進み、私もできる限り身体を小さくしながら後を追った。

 人だかりを抜けて、狭い通りをひたすら走り、人気のない路地裏で止まった。大分走ったので息が上がっている。


「助けてくれて、ありがとう」


 私はその子にお礼を言った。


「僕、お姉さんの役に立ったでしょう?だから、何かちょうだい」

「え?」


 びっくりして子供を見る。子供は右手を出して何かほしいと言ってきていた。


(物乞いだったんだ)


 よく見たら貧相な身なりだった。服はあちこち破れ、煤けている。髪もぼさぼさで何日もお風呂に入っていないようだ。


「ご、ごめんね。私いま無一文で、あなたに上げられそうなものを何も持ってないの」


 そう言うと物乞いの少年は残念そうな顔をした。


「そっか、じゃあ仕方ないね」


 少年は今度は少し強引に私の手を握るとまた走り出した。

※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。

※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。


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