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魔王召喚

分割していた話をまとめました。

少し書き直しましたが、話の流れや登場人物は大体同じです。

「ううん…?なんだここ…?」


  気がついたら、俺は知らない場所にいた。


「えーっと、たしかさっきチンピラ共に襲われて…」


 とりあえず今の状況を整理してみる。


「そうだ!訳のわかんねぇ模様が急に光ったと思ったら、気絶しちまったんだ!」


 俺はチンピラ共のイタズラで気絶させられ、拉致でもされたのだろうか。

 そう思うとチンピラ共に対する烈火のごとき怒りが沸き上がってきた。


「あのクソヤロー共め!こんなしょーもないイタズラまで!覚えてやが…」


 俺は文句を言いながら起き上るが、目の前の光景を見て言葉に詰まってしまう。

 女がいたのだ。

 ただの女ではない。

 その肌は普通の人間ではありえない程に青みががっており、しかし艶やかで、頭から角が、背中には翼が生えていた。


「お目覚めになりましたか。ようこそおいでくださいました魔王様。」


 俺が目が覚めたのを見て、目の前の女は優し気な微笑みを浮かべながらそう言った。

 状況がつかめず沈黙していると、目の前の女が小首をかしげる。


「…?ああ、これは失礼しました。私は古来より魔王に仕えるデーモン族の末裔、レモリーと申します。」


「お…おう…」


 魔王?デーモン?この女…レモリーは何を言ってるのだろう?

 …まあいいか、そんなことよりも聞きたいことがある。


「おい!ここはどこだ?なんのために俺をここまで連れてきた?お前もあいつらの仲間か!」


「あいつら…?ええと、とりあえずここはどこかと問われたら異世界…あなたからするとそう呼べばよいのでしょうか?」


「は…?」


 意味が分からなかった。

 異世界とは一体なんの事なのか?


 その後いくつかの問答を経て、俺はようやく自分の置かれている状況を理解した。

 ここは俺が倒れていた場所から遠く離れた地で、もう戻れないような場所にあるらしい。

 そしてレモリーという女は、魔法とよばれる特別な力を使って俺を呼び出したのだとか。


「それと、何のためにあなたをここに呼んだのか、でしたね。」


 そう言うと、レモリーの顔からはさっきまでの微笑みが消え、真剣な表情になる。


「あなたには魔王として人間と戦っていただくために召喚いたしました。」


 レモリーは一呼吸おいてから説明を続ける。


「私たちの世界では、私のような魔族と呼ばれる種族と、人間…あなたと同じような種族ですね、この2つの種族がいるのですが、互いに仲が悪く、定期的に戦争が起こってきたのです。つい十数年前までは人間も魔族も実力が拮抗していて、膠着状態が続いていました。ですが…」


 真剣な表情のレモリーが少しだけ目を伏せる。


「…近年、人間達はその人口を爆発的に増加させました。そして膠着状態だった戦場に次々と人間側の兵士が投入されたのです。度重なる戦争で疲弊し、その数を減らし続けた私たち魔族は、人間の人海戦術に対抗する力が残っておらず、敗北を繰り返し領土を減らしていきました。魔族の中には故郷を追われ、人間から隠れるように生きている者達もいます。」


 俺の住んでいた国で戦争が起こったことはない。

 だが俺のいた街では、マフィア同士の小競り合いがよく起こっていた。

 どの世界も似たようなものなのだな、なんて考えていた。


「この現状を打破すべく、魔族を統べるもの…魔王としての器を持つ人物、つまりあなたをこの魔法陣にて召喚したのです。」


 そう言いながら顔を上げたレモリー。そして真っ直ぐにこちらを向いて、


「なので、どうか私たちと共に人間と戦ってくださいませんか?」


 そう言うと、彼女は礼を尽くすように跪き、頭を垂れた。


 魔王か…悪くない響きだ。

 魔族の頂点に立って王と呼ばれるのはさぞ快感なことだろう。

 それに、元の世界で散々人間に裏切られ、蔑まれてきた俺にとって、人間と戦うことに忌避感はない。

 だが懸念するべき点もあった。

 魔法という未知の力が存在するこの世界で、戦争に巻き込まれても生き延びることができるのかという点だ。

 それもただでさえ弱かった俺が、だ。


「あー…断る。魔王になったら戦争に出なきゃいけねえんだろ?正直俺の力だと、この世界で戦うには厳しいもんがあるしな。」


 すると、レモリーは少しの間何かを考えた後にこう言った。


「…それなら問題ありません。歴代の魔王様方が力を注ぎ、私の一族に預けられた特別な魔石、それを召喚の魔法陣に使用しました。その魔石を使って召喚された者は、魔王としての知識を得て、特別な体になるそうです。…そろそろその体とあなたの魂が馴染んできた頃なのでは?」


 言われてみれば、ここに来て最初は異世界だの魔王だのという言葉の意味が分からず戸惑っていたが、今ではすんなりと受け入れている。

 これが魔王の知識とやらなのだろうか。


 ついでに言うと、この世界に来てから体に妙な違和感を感じていた。いつもより視点が低いような…手足も短い気がする…


 自分の体を確かめるように動かす俺を見て何かを察したのか、レモリーが声をかけてくる。


「ええと…召喚前の御年齢はわかりませんがあなたは今、召喚の魔方陣の効果で10歳くらいの姿になっております。そのお体は魔石の力を注ぎ込んでいるので、以前よりも力を出せるはずです。それに、この世界に適応して、魔法も使えるようになっています。」


 この体は今までの自分の体よりも強いらしい。

 これはいいものを手に入れたかもしれない。


「それではもう一度お尋ねします。私たちと共に、人間と戦ってくれませんか?」


 力強い瞳で、レモリーがこちらを見ている。


 この世界で戦い、生き抜くために必要な体を得た。

 ついでに魔王としての知識も得た。

 ならこの話を受けてもいいのかもしれない。

 賢くなった頭ではそう思うのだが、感情が追いつかない。

 嫌悪感があるわけではないが、レモリーのことをイマイチ信頼しきれなかった。

 前の世界で、まともに人とのつながりを作れなかったからそう思うのだろうか?


 少しばかりの逡巡の後に、


「そういうことなら俺が魔王になってやろう。魔王になって、人間を滅ぼしてやる!」


 そう宣言した。


 感情的にはこの話を受ける気にならなかったが、俺に魔王になる以外の選択肢はなかった。

 何の後ろ盾もなしにこの世界に放り出されても、生きていける気がしなかったからだ。

 わけの分からないまその辺で野垂れ死ぬよりは、魔王になって互いに利用し合った方がマシだろう。


 そんなことを考えていたら、目の前にいる銀髪の美しい魔族は小さく息を吐いた。

 胸元にあるたわわに実った二つの膨らみが揺れた気がした。


「それではこれからよろしくお願いします、魔王様。」

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