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8話 置いてけぼり

あの日からまた2日経って俺はやっとまともに体を動かすことができるようになった。


本当は昨日からすぐ活動したかったのだが立ち上がった瞬間に崩れ落ちてシスター達を騒がせてしまったために体力を回復させることに専念していたのだ。


兎にも角にも魔力の問題がひと段落した俺たちは再び大都市セレスを観光する事にした。


「箒レースやってるじゃん、いやそれとも天空遊園地……ああ空飛ぶゴンドラでセレス一周ツアーも気になる!でもでも食虫植物ガーデンも捨てがたいんだよなぁ」


「最後だけチョイスがおかしい気がするのは我だけか?」


テオとあれやこれやと相談した結果この都市を一望できる天空の塔へ行く事になった。

一応シスターさん達に行くところを報告しておきたいと考えた俺たちはまず中庭で洗濯をしているシスターの所へ向かう。


長い長い廊下をとことこと歩いていると聞き覚えのあるしゃかしゃかとした声が聞こえてきた。


「どうして誰もそばにいなかったわけ!?今すぐ対応しなさい!そこの貴方は全警備隊に通達すること。大至急!よ!!」


どうやら誰かと揉めているようだ。少女の口調に先日のような余裕はなく相当焦っている気配を感じる。

ここはそそくさと去るべきだとテオとアイコンタクトした俺は扉の前を駆け抜けようとしたその時、


バンッ


と扉が開く音と共に俺の左側に大きな衝撃を感じる。

「「痛い!!!」」


痛む肩を抑えながら一体何が起こったのかと目を開けるとそこには同じく痛そうに頭を抑える数日前に会ったお嬢様の姿があった。


「貴方は数日前の田舎者……いや今はそれどころじゃない、一刻も早く妹を探さないと。セレス全域を封鎖するべきかしら。」


「子供のお前が全域を封鎖なんてできるのか?」


しまった、好奇心でつい首を突っ込んでしまった。お嬢様も俺に聞かせるつもりは無かったのか気まずそうな顔で口を抑えた。


「今のは聞かなかったことにして頂戴。貴方のような田舎者には何の関係もない話よ。」


「いや、そうはいかぬ。」


「うわあ猫が喋った!?」


みんなすぐに受け入れるからすっかり忘れていたけど猫って喋らないよね。


向こうから厄介な話を切ってくれたのになんで引き止めるんだよ。という目線をテオに送ろうとしたが、振り向いた先の彼は想像よりも真剣な顔をしていたから、俺は誤魔化すように目線を宙に向けるしか無かった。


「お前は大都市セレスの当主オフェリア・セレスの娘だな。たしか名は、プリオル」


その瞬間お嬢様の目が大きく見開かれた。

ん?オフェリアってなんか聞いたことがある気がするな。それにセレスって大都市の名前じゃないか。

じゃあもしかしてこの子って、


「セレスの当主に2人の娘がいる事は誰でも知っているけれど名前は未公表にしていたはずよ。あなた……猫の姿をしているけれど本当は何者なの。」


「我はセレスの外に広がる森の全てを守護する風のドラゴン、ルナティオウスだ。」


心無しか雰囲気がテオとの初対面の時ような緊張感に包まれている。


「もしかして貴方が銀龍様なのですか?」


「いかにも。」


まてまてまてまて。ちょっと待て。どういう展開なんだこれ。俺だけかんっぺきに置いてけぼりだよ?初めて聞いたよ何守護って銀龍様とか呼ばれてるのもさ。しかしてテオって初見怖そうで威厳あるように見えるドラゴンじゃなくて本当に偉かったりする?


「銀龍という二つ名については前に言ったはずだが?」

「ごめんて。」


あの時は色々いっぱいいっぱいで聞き流してた部分も多かったんだよな。


「それでこちらの初見から偉そうな態度のお嬢様は実はセレスの御当主様の娘で本当に偉い、と。」


「……どうして銀龍様ともあろうお方がこの失礼な男と共にいるのでしょう。」

「あえて言うならば色々と目が離せない。」


俺の事情は簡単に話せないことをわかっているテオの誤魔化し発言にお嬢様、もといプリオルは理解はしたけど全く納得できないと言いたげな顔で俺を睨んだ。


「それよりも今はお前の問題の解決が先だ。妹が行方不明になったのだな?我も操作に協力しよう。なにせ、万が一セレスの血筋の人間が我の森で死んだ場合我にとって非常にまずい状況となる。」


「そんな、銀龍様は無関係ではありませんか。」


「たとえ我が無実でもそうとは捉えない厄介者が都市内外に数多く居るのだ。だからこそ事態が発覚する前に片付けておきたい。」


テオはにゃおんと鳴き、俺の方に向き直る。


「というわけで我は暫く別件で動く。お前は大人しく教会の付近でも散策しておけ。娘、妹の特徴と失踪した場所を今すぐ教えよ。」

「はい!勿論でございます。」


「ちょっと待てよ!」


俺の言葉を無視するかのように2人は部屋の中へと入り、そして扉が閉ざされた。俺は何が何だかわからないまま廊下に立ち尽くすしかなかった。


いつももふもふしていた胸元が、寒い。



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