3話 大都市に到着!
森林中央都市セレス。
広大な森の中で城を中心に壁を築いていたが、発展と共にその範囲はどんどん広がり、現在では他の大都市に匹敵する領地となった。
森はあまりにも険しく殆どの出入りは空路にて行う。
それに伴い箒や飛行船の技術の発展が著しく、
歴史に名を刻む世界的飛行レースチャンピオンを調べた所9割がセレスで箒を注文していた。とのデータもある。
「って街の公式ガイドブックに書いてる。」
「確かにこのあたりの森は猛獣や魔物がうろついているだけではなく方向感覚も狂うようにできているからな。」
「げっ、まじ?俺たちよく無事だったな。」
「我が常に魔力を放出しておったからな。人間と違って獣は物分かりが良い。上位の者には逆らわぬ。」
「へえー全然わかんなかったや。うう俺本当に魔力あるのか心配になってきた。」
ベンチに座り、賑やかなザ、中世ヨーロッパ的街並みを眺めながら名物らしい浮遊綿飴をつまむ。
木の鳥籠を模した入れ物の中にカラフルな綿飴が雲のように浮かんでいる。
取るたびに籠の扉を早く閉めないと中身が全部飛んでいってしまう鬼畜仕様のお菓子だ。
魔法が使えれば箒に乗って捕まえる楽しみも生まれるのだが、生憎俺は自由を手にしたお菓子たちをただ見送ることしかできない。
他にも、意地でも溶けないアイスや摂取カロリーをいちいち報告してくるお皿など興味深いものがたくさんあった。
中でも1番わけわからなかったのは走り回るポップコーンだ。
何故か足が生えていて信じられないほど気持ち悪い。誰が考えたんだあんなもの……と思っていたが店は意外にも繁盛していた。
「変なものばっかりで面白いね。魔法ってすごい。」
「いや、ここの通りが変わりダネばかり売っているだけだろう。」
実家からこっそり持ってきたなけなしのお金をこんな事に使ってしまって良いのかという事についてはテオが、
「我の予想が正しければ、魔力検査をすれば金の問題は全て解決する筈だ。」
と言っていたので全面的に信用する事にした。
決して前世ではありえない原理のお菓子やグッズに興味津々で後先考えなかったとかそういうわけではない。……ごめんめっちゃある。
「そういやテオはセレスに来たことある?」
「あの城に住む前当主は我の友人だった。もう何年も前に引退したがな。」
テオが指を、いやクリームパンのおててを指した方向には上に細長い3本の塔が特徴の城がそびえ立っている。
西洋風の城を生で見た事なんて全くない俺はただただ圧倒されていた。
「それってすごいコネじゃん。どうする?会いに行っちゃう?。」
「いやその後色々あって我は現当主にそれはそれは嫌われているのだ。ノコノコ会いに行こうものなら奴ご自慢の攻撃魔法で我らは壁のシミになる以外の選択肢は無いだろうな。」
こっわ。というか二代で何があったんだよ。色々って何だよ。
「ん、そういやテオは上位存在で人間より強いみたいな雰囲気出してなかったっけ。大都市の主ってそんなに強いのか?」
「ああ、特に今代の女城主オフェリアは可憐でふわふわした見た目と話し方に反して天才的な知力、潤沢な財力、圧倒的な武力それら全てを効率よく使うことができる正に支配者になる為に生まれた人間だ。
幼子とはいえ、お前のような魔力の持ち主が適当な態度を取ればすぐに脅威とみなして排除されるかもな。」
「あ、ああああ会いに行くってのやっぱ無しでぇ。」
折角ここまでやってきて壁のシミにはなりたくないもんな。
「もしかして他の大都市の主も強かったりする?」
「そうか、お前は辺境の村で過ごしていたから知らないのか。この世界において最も実力を持っているのはセレスを始めとした大都市の主だ。
セレスの主は特殊な血筋故に世襲でもその地位が揺らぐことはないが、他の大都市では当主を決めるために盛大な大会を開くこともある。」
へぇ、大会かぁ、魔法とかバンバン使うのかな。
スポーツの大会みたいに出店とかありそう。
一度くらい機会があれば見てみたいなぁ。
「魔法での戦いもあるが、知力を試す大会もあれば最も美しいものが当主になる大都市もあったな。」
「見た目だけで当主になれるの?」
「見た目の美しさだけではない。我に言わせればあそこは常識がかなり狂っているのだ。お前がいつかその大都市に行く機会があるならば説明してやろう。」
その国すごい気になってきた。この大都市でお金を得たら行ってみたいかも。
「ずっとここで座るわけにも行くまい。これからどうするのだ?」
「でもまあ、ついたばっかりで疲れたし今日は宿で休んで明日教会に行こっか。」
「異論はない。」
そして俺は適当に安そうな宿を見つけて料金表を見る。
………
…………………
「よーーし、予定変更だ!今から教会に行ってすぐさま検査して貰うぞぉ。」
流石大都市、宿代のスケールもでかいぜ!
懐の寒さをあっためてくれている腕の中の猫は、沈黙したまま冷ややかな目を俺に向けていた。