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9話 はじめてのおつかいは市場!

「テオのばかあほまぬけぇ!1人だったら何にも楽しくないし……。」


俺は今特に何をするでもなく教会の中庭のベンチに座ってボケーっとしている。

勝手に観光に行って満喫してやろうと思ったけどどんな景色を見ても誰とも分かち合えないなら行かない方がマシだ、とみるみるうちにやる気が萎んでいった。


「でも本当に何もしないのもなぁ。」

「ではお使いを頼まれてはくれませんか?」


教会の人間はほとんどプリオルの妹捜索に行っているからここには誰もいないと思っていた俺は、びっくりして思わずベンチから転げ落ちる。

地面に横たわったままばっと声のした方を見るとスザンナさんがにこにことした笑顔で佇んでいた。



「ほら、今みんな臨時のお仕事だから人手が足りないのよ。今回買う物は大体中央市場にあるからちょっとした観光にもなるはずよ。どうかしら。」

「やります!!!」


すぐに起き上がり、スザンナさんが差し出したメモとお財布を勢いよく取って内容を確認する。


「果物、花壇の栄養剤、日用品が洗剤とタオルと歯ブラシとヘアゴムとあと……うっ結構多いですね。」


「大丈夫、このマジックバッグに全部入るようになってるから。」


そう言ったスザンナさんから何の変哲もないリュックを差し出される。

いや、デザインがリュック全体で可愛いくまさんを模していて正直、これを背負うのは何だか気恥ずかしい。

試しに手をリュックに突っ込んでみると、うにょんとした奇妙な感覚と共に腕ごとすっぽり入ってしまった。左右にそのまま腕を振るが宙を掴むだけだった。


「うわぁ!すごい中が広くなってる。」


「マジックバッグでそんなにリアクションしてくれる人すごく久々で嬉しいわ!」


「でもこれって中のもの取る時奥の方に行っちゃったら取れないんじゃないですか?」


「大丈夫、ちょっとしたコツがあってね。取りたいものを思い浮かべて微弱な風の引き寄せ魔法を使うだけで取り出せるのよ。ジョンくんは今魔法が使えないけど、買ってきてくれたらあとは私が取り出して整理するから気にしなくていいわよ。」


「よ,良かった。」


もう一度メモを確認する。ん?この好きな魔道書ってなんだろう。


「ああ、それはジョンくんは魔道書店行った事ないでしょ?少し多めにお金を入れてあるから好きな本を1冊選んできてね。あの店は入った瞬間は驚くと思うけどきっと楽しめるわ。」


「普通の本屋じゃないんですか?」


「うふふ、それは行ってからのお楽しみ。」


スザンナさんは地図を取り出し目的地にくるくると丸をつけていく。


「じゃあたのしんできてね。」

「お使い頑張ってきます!」


教会を出て、ひたすら坂を下る。

すると大きなアーチが見えてきた。人の数や騒ぎ声も徐々に増えていく。


「すごい、お祭りみたいだ。」


色とりどりの装飾を施された大通りでは常に軽快な音楽が鳴っていて、あちらこちらから客を呼び込む声が聞こえてくる。

建物は大体三階建てで全て違う店舗が入っているようだ。

頭上のはるか上では荷物を下げた箒が飛び交っている。

歩いている人たちとぶつからないように交通整理をしている人もいるようだ。


上の階の店ってもしかして箒で飛ぶしかないのか?

焦った俺は地図とメモを見比べる、良かった全部一階の店舗だ。


「少年!今朝はナッツ類を大量に仕入れたんだ!どうだい?買っていかないかい。」


「すみません、お使いなんです。」


そして俺はいくつかの果物を指差す。


「おっ、お使いかぁ、こんなにたくさん偉いな。ご褒美におじちゃんがこの串刺しフルーツをプレゼントしよう。」


そう言って小さく切ったバナナや柑橘類やイチゴを差し出した串を渡された。どれも新鮮そうでつい涎がでてくる。


「ありがとうございまーす!」


そしてその後も、


「まぁこんな小さい子が?はちみつの匂いのハンドクリームあげちゃう!ミニサイズだから気にしないで。」


「くまさんリュック可愛い~え、この後魔道書店に行くの?初めての本っていいよねぇ。じゃあこのお花の栞を使ってちょうだい。」


と行く場所行く場所で店員さんにプレゼントを貰う。

買い物とは関係がない品物なため、俺のポケットに入れる事にしたのだが、それももうすぐ溢れてきてしまいそうだ。


短時間にこんなにたくさんの好意的な気持ちをもらったことのない俺は、ちょっと気持ちがいっぱいでくらくらしてしまった。

とりあえず、誰もいない場所でしばらく息をつくために裏路地に入ることにしよう。



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