五大厄災-三大陸-②
塗装屋
『次はフタツメ大陸だ。
そこには赤い石、攻めの石が眠っている。
そいつを装備に塗り込めば力が何倍にも湧き上がる。厄災にも引けは取らないだろう』
勇者
「攻めの石…」
大陸に着いた勇者はボートを降りて
島の中を探索する
ー
-フタツメ大陸-
乾いた川と枯れた木が点々と
あるだけのデコボコした渓谷
羽の生えたタワシのようなマモノがパタパタと飛んでいる
勇者
「あいつ、ヒトツメ大陸にもいたな…
色違うけど…」
渓谷を進んだ先にある洞窟で一旦休憩を取る勇者
すると、奥の方から何やら声がするので覗いてみるとそこには見慣れない怪物達がいた
勇者
「な、なんだ…!?」
その声に怪物達が気づき、勇者の方を一斉に振り向く
怪物達
「……?」
勇者
「くっ…!!」
勇者が剣を抜こうとすると
赤色の大きな怪物がゆっくりと近づいてきて
声をかけてくる
赤い怪物
「やぁ、新しい子かな?」
勇者
「(赤い毛むくじゃら…マモノか!?)」
勇者は咄嗟に後退し、剣に手をかける
赤い怪物
「俺たちはモンス族、ここは俺たちの故郷だよ」
緑の怪物
「うふふ、お客さんが来るのはいつ以来だろうね」
赤い怪物と緑の怪物が楽しそうな顔で勇者を見る
勇者
「モンス族……?」
「俺はペッグ、この緑の彼はシモンだよ」
シモン
「こんちわ」
勇者
「ど、どうも……(マモノじゃない…?)」
勇者は剣から手をどけて
2人を不思議な顔で見上げる
ペッグ
「くつろいでて、今お茶とクッキー用意するから」
ペッグが席を外そうとした時、勇者は咄嗟に叫ぶ
勇者
「あ、あの!僕急いでるんだ
村長に会わせてくれないか?」
それを聞いたペッグはキョトンとした顔で勇者を見下ろす
ペッグ
「村長?あぁ、族長なら今はいないよ
岩の調査に行ってるからね」
勇者
「いわ……?」
ペッグ
「結構前に俺たちが通ってた洞窟が、空から突然降ってきた岩に塞がれてね
あそこには俺たちの象徴、力の石が眠っているんだけど。」
勇者
「(力の石…攻めの石のことか…?)」
ペッグ
「あの辺一帯はカラカラしたやつの縄張りになっちゃったから族長や兵士以外は滅多に近づかなくなったよ」
「カラカラしたやつ…?」
ペッグ
「岩が降ってきたと同時に突然現れたんだ
地面からニョキニョキとね」
ペッグ
「族長は岩が原因だと見て、兵士を連れて
ずっと調査してるんだけど進展なし。
俺たちはその間ずっと暇だから、こうやって
洞穴に引きこもってるってわけさ」
ニヤけながらそう語るペッグ。
勇者はペッグから族長の居場所を聞き出して
急いでそこへ向かった。
ー
外は霧で覆われている
勇者
「ぐっ…すごい霧だ…!こんな所に族長なんているのか?!」
しばらく進むと四つの柱が並んでる場所へ辿り着く。
勇者
「な、なんだ…?誰かいるのか…?」
遠くで何やら人影が動いてるのが見える
どうもマモノに襲われてる様子
勇者
「…!!」
勇者は咄嗟に剣を抜き、その人物に駆け寄る
???
「フンッッ!!」
マモノ
「ピギャッ」
勇者
「!?」
マモノを鈍器で撃退する怪物
???
「ふぅ…手間取らせやがって。
……何の用だヨソモン。俺は今忙しいんだぜ…?」
ズシッと肩に鈍器を抱え、勇者の方を見下ろす怪物
勇者
「あ…いや、お前…いや、あなたは…?」
???
「俺はガルアス。モンス族の長だ。」
勇者
「長…!じゃああなたが族長か?!」
???
「おっと、話してる場合じゃねぇや、またくるぜ」
周囲から複数の土人形のようなマモノが地面から生えてくる
ガルアス
「採鉱場が大岩で塞がれてから
現れるようになったんだ!こいつら倒しても倒しても増殖しやがる!キリがねぇって」
勇者は族長との話を一旦保留にして
目の前の敵を倒すことに集中する
ガルアス
「お前らッッ!!ボーッとしてんなッッ!!
暴れるぞッッ!!」
ガルアスがそう叫ぶと周囲から車輪のついた砲台のようなものに乗った怪物達が姿を表す
怪物達は砲台に弾を装填して、一斉に発射する。
激しい音と振動で身動きがとれなくなり、その場で耐える勇者
勇者
「んぐぐ…!……??」
音が止み、辺りを見渡すとそこにはもうマモノの姿はなく、砲弾の破片が落ちてるだけだった。
ガルアス
「いいぞぉ!これでこそ!我らモンス族の力だ!!」
「この大陸は何者にも傷一つつけさせんわ!!」
ガッハッハッハと大笑いするガルアスに
勇者は目が点になる。
ガルアス
「で、小僧?俺に何か用があるんじゃないのか?」
一旦モンス族達がいる洞穴へ引き返し、ことの経緯をガルアスに話す勇者
ーーー
ガルアス
「ほう…厄災か。それを倒すために
俺らの石が必要なんだな」
「確かにあの石には特別な力があるが
簡単には譲れんな…この大陸の象徴みてーなもんだからな。神や仏みたいな、そんな感じだ」
勇者
「この大陸の問題を解決すれば譲ってくれるか?」
ガルアス
「え…?」
ガルアスは一瞬戸惑った後、ガッハッハッハと笑う
ガルアス
「いやぁ違う違う、そういう事じゃないんだ
…まぁでも、そうだな?それも悪くないか。」
ガルアスはそう言って兵士たちに合図を送る
兵士達はさっきとは違う形の砲台を持ってくる
ガルアス
「この砲台は特別仕様でな。
瞬間火力がバカでかい!最高傑作だ」
ガルアス
「これならあの忌々しい大岩だって跡形もなく吹き飛ばせるぜ」
勇者はよくわからないという顔をするが
なんとなく凄そうだと感じた。
ガルアス
「これから大岩を破壊して
採鉱場へ乗り込むからな、お前ら準備しとけ。」
ガルアスがそう言うと、兵士たちは鉄仮面を装着し、武器を手に取り雄叫びをあげる
ガルアス
「さて、勇者様。俺たちはこれから
再び大岩へ向かうから、準備が整ったら来てくれ。
もし、事が片付いたら石はお前にやろう」
勇者
「ほ、本当か!?」
ガルアスは深く頷き、兵士を引き連れて大岩へと向かった。
勇者も急いで準備していると
背後から声をかけられる
ペッグ
「やぁ、おでかけかい?」
勇者
「あ、あぁ。これから採鉱場へ乗り込むらしい。
世話になったな」
勇者がそう挨拶すると、ペッグは鉄仮面と武器を手に取る
ペッグ
「俺達も一緒に行くよ、なぁ?シモン」
シモン
「え!?…あ、あぁ!いいとも!」
勇者はそれを聞いて驚く
勇者
「ま、待て!お前達は兵士じゃないだろう!
確かに…ガタイはいいが…相手は危険なマモノだ!」
ペッグ
「俺たちモンス族は闘争が好きなんだ。
他の種族より頑丈だし、力もある。
マモノなんて屁のカッパさ。」
シモン
「こいつ将来兵士志望なんだぜ?」
勇者は戸惑いつつ、仕方なく承諾する。
勇者
「わ、わかった…だがあまり無茶はするな
族長に面目が立たない」
ペッグとシモンは嬉しそうにする
ペッグ
「それじゃあ行こうか、族長の元へ」
3人は準備を整え、族長の元へと向かった。
ーーー
ガルアス
「揃ったな、知らねー奴が二匹いやがるが
勇者様の連れかい?」
シモン
「や、やぁ…」
ペッグ
「どうも…」
勇者
「すまん…こいつらがどうしてもと」
ガルアス
「まぁいい…お前ら生半可な気持ちで来てたら承知しねーぜ?こっからは生と死の戦いだからな」
ペッグ達は真剣な顔つきになる
ガルアス
「砲台用意!!」
兵士
「「砲台よぉいッッ!!!!」」
ガルアス
「ぶち込んでやれ!!」
兵士たちが岩目掛けて砲弾を発射。
弾は岩に着弾し、激しい音と共に岩が粉々に砕けて採鉱場の入り口があらわになる。
ガルアス
「よぉし、乗り込むぞ!突撃ぃぃぃぃッッ!!!!」
兵士達
「「うぉぉぉぉぉぉッッ!!!」」
ガルアスと兵士たちが一斉に採鉱場へ突入する
ペッグ
「俺たちも行こう!勇者様!
モンス族の威厳を見せる時だ!!」
勇者達も続けて乗り込む
ー
大量の土人形達がガルアス達の行手を阻む
ガルアス
「オラァッッ!!ふんっ!邪魔な奴らだ!!
お前ら怯むな!!」
土人形達を薙ぎ倒すガルアスと兵士達
勇者
「すごいな…僕以外にマモノと戦える者がいたなんて…」
土人形だけでなくマモノの群れも襲いかかってくる
ガルアス
「大歓迎だな!!お前ら勇者様を鉱石のある場所までお連れしろ!!」
ペッグ
「よぉし!俺たちの力を見せつけてやるぞ!!」
シモン
「うわっ!来るな!」
勇者はマモノに襲われていたシモンを助ける
シモン
「あ、ありがとう勇者様…」
勇者
「君は戦えないのか?」
シモン
「いや、実を言うとからっきし…」
勇者は困った顔をする
勇者
「どうする気だ?外に出ても、もうマモノだらけだし…」
ペッグ
「大丈夫だよ勇者様。
こいつ、力はないけど頭はいいんだ。」
シモン
「そ、そうそう!頼りにしてください勇者様!」
不安な顔をする勇者。
一行はマモノを倒しながら進み
円状の広間にたどり着く
ガルアス
「着いたな、見ろアレが鉱石、力の石だ」
壁に張り付いた鉱石を指さすガルアス
ペッグ
「あそこにあるトロッコで周囲を回りながら石を獲っていくんだよ」
広間の上にあるトロッコを指差しながら説明するペッグ
勇者
「真ん中にもあるぞ」
広間の中央には紫色の鉱石が生えていた
ガルアス
「変だな…あんな石あったか?」
すると突然地響きがして
勇者達が驚く
シモン
「なになになになに!?」
地面から勢いよく何かが飛び出して
高く舞い上がった後、しばらくして
ズシンッと大きな音を立てて着地する
勇者
「ま、マモノ…!?」
カニのような巨大なマモノが勇者達の前に立ちはだかる。紫色の鉱石はマモノの一部だった。
ガルアス
「無駄にでけぇな!!」
ガルアスは余裕そうにマモノを見上げる
勇者
「みんな、危険だ!下がっててくれ!
ここは僕が!!」
ガルアス
「いくら勇者様の頼みでもそいつは聞けねぇな!」
ガルアスは兵士たちに合図を送る
ガルアス
「砲撃用意!!」
砲台をマモノに向け、弾を発射する兵士達
砲弾の雨がマモノに当たる。
しかしマモノは砲弾が通じず、ケロッとしていた。
シモン
「あの鉱石が弱点なんじゃない!?」
マモノの背中にある鉱石を指さすシモン
ガルアス
「よぉし!お前らトロッコに乗れぇ!!
とびっきりのを食らわせてやるんだ!!」
ガルアスの命令で兵士たちは一斉にトロッコのある場所まで登る
ペッグ達も兵士の中に紛れてトロッコに乗り込む
ガルアス
「よし、全員乗ったな!今から砲台をトロッコにつけるからお前ら遠慮なくぶっ放してやれ」
そう言って兵士に合図を送るガルアス
兵士は何かのボタンを操作する。
するとどこかにあるシャッターが開き、砲台付きのトロッコがレールの上を大量に走ってくる。
砲台付きトロッコはそれぞれの兵士たちのいるトロッコに連結する
勇者
「これは……」
ペッグ
「対マモノ砲弾だよ、ここには鉱石の他にマモノも多いからね、いつ襲われてもいいように沢山配備してるんだ」
シモン
「こいつで操作するんだ!」
操縦用リモコンを見せるシモン
ガルアス
「左右に動いて、敵の攻撃をかわしながら
よく狙って砲撃しろ!!緑と赤いボタンがトロッコ操縦、黒いボタンが砲撃だ!!間違えるなよ!!さぁお前ら!!撃ちまくれッッ!!」
兵士達は雄叫びを上げながらマモノに砲弾を浴びせる
マモノ
「グビュアアアッッ!!」
マモノは動き回って砲弾を避けながら
足を伸ばして体を持ち上げ、伸ばした足を曲げて
体を地面に強く叩きつけて
その衝撃で飛んだ砂や岩などで砲台を破壊。
地響きで兵士たちは動けず、なす術がなく
徐々に兵力を失うガルアス
勇者
「弾はもうないぞ!!」
ペッグ
「まずいな、このままじゃ…」
兵力を失い、弾も枯渇していくなか
シモンが声を上げる
シモン
「僕が弾になるよ!」
勇者
「な?!無茶だ!危険すぎる!!」
ペッグ
「大丈夫だ勇者様、俺たちは頑丈だからね」
シモンを砲台に装填するペッグ
シモン
「派手に頼むぜ相棒!!」
ペッグ
「とびっきりの弾丸をお見舞いしてやる」
ペッグは砲台を発射し、シモンがマモノの元まで勢いよく吹き飛ぶ。
マモノ
「グビュアアアッッ!!!」
シモンが着弾した瞬間ものすごい声で叫ぶマモノ
勇者
「効いてるみたいだ…!」
激しく暴れるマモノに必死にしがみつくシモン
ペッグ
「よし、次は俺が弾に…」
勇者
「ちょっと待った」
砲台に入ろうとするペッグを制止する勇者
勇者
「見ろ。様子が…」
マモノは血反吐を吐いて苦しんでいる
今までの砲撃によるダメージでマモノは弱っていた。
ペッグ
「勇者様!トドメだ!!」
勇者
「あ、あぁ!!」
勇者はトロッコから飛び降りて
「うぉぉぉぉぉ!!」っと叫びながら
マモノの脳天に剣を突き刺した。
マモノは断末魔を上げながら息耐え、土のようにドロドロになって溶けていく。
ガルアス
「我らの勝利だァァァァ!!!」
兵士達
「「「うおおおおおおおおッッッ」」」
ーーー
戦いが終わり、洞穴へ帰宅するガルアス達
勇者の手には力の石が握られている
ガルアス
「なかなかやるな、流石は勇者様だ」
ガルアスは上機嫌で勇者をボートまで送る
ガルアス
「その石は勲章だ、あのマモノがいなくなってからカラカラした奴が現れなくなった。
やはり、異変の原因はそいつだったんだ」
勇者
「(魔王…いや、破壊の厄災バルテアの置き土産だな…)」
勇者は汗を流しながら石を見つめる
勇者
「(原因を倒しても影響は残り続ける…
他の厄災が気がかりだ…急がないと!)」
勇者がボートに乗り込むとペッグとシモンが挨拶しにくる
ペッグ
「やぁもう帰るのかい?」
勇者
「いや…帰るわけではないが……。
この島とはここでお別れだ、世話になった」
勇者は2人に深くお辞儀をする
ペッグ
「暇になったらまたおいでよ
美味しいクッキー焼いて待ってるからさ」
シモン
「俺たちはもう相棒だ!」
勇者
「う、うむ…。」
シモンとペッグが拳を勇者に向ける
勇者
「…?こ、こうか?」
勇者は拳を2人の前に差し出す
拳でタッチする3人
微笑む2人に反して戸惑いを隠せない勇者
ガルアスはその様子を腕を組みながら微笑ましそうに見つめる
ー
モンス族達に別れを告げて
勇者はボートを出し、残りの大陸へと向かった。
五大厄災-三大陸-②(完)