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勇者の焦燥

馬に跨り森の中を歩く勇者


勇者

「この方角で間違いないかな…?」


「海のヒセキ、それはこの先の漁村にあると

女王が言っていたが」


勇者は女王の提供を元に次の目的地に向かっていた


勇者

「森のヒセキ、炎のヒセキ、海のヒセキ…

海のヒセキが手に入ったら三つが揃う事になるのか…予定よりも早かったな」


ふと勇者は前回立ち寄った火山のふもとの村を思い返す


勇者

「…魔王を封印すれば本当にあの村は救われるのか」


「いや、余計な不安は持たないようにしよう

きっと大丈夫だ。魔王を倒せば世界は救われるはず…だ。そうでなければ困る。」


勇者は前向きに考え、魔王を打ち破るべく

ヒセキのある漁村へ向かった。


ーーー


道中、何やらパニックになってる男女を見つけ

話を聞きにいく勇者


男女

「〜!〜!」


勇者

「どうした?何かあったのか」


ひどく慌てた様子で半狂乱になっている男女に

勇者は落ち着くよう諭し、何があったのかを尋ねる


男女

「子供が…!子供が…!マモノに…!!」


勇者

「子供に何かあったのか?」


「こ、子供がマモノにさらわれたんだ!」


「私達の子なんです!森の中で…マモノに襲われて…!」


女はそう言うと涙を浮かべてうずくまった


勇者

「方角は?」


「あの林の向こうに!」


勇者

「よし、わかった!!」


勇者は馬を走らせ、林の奥へ急ぐ


ーーーしばらく森の中を走っていくと

二匹分の鳴き声が森中に響き渡り、勇者はその声を辿っていく


勇者

「あそこか!!」


そこには二匹の鳥のような白いマモノがいた


口にはベットリと血のような物が付いている


勇者は馬から降りてマモノに接近する


勇者

「!!」


勇者はそこで思わぬものを見てしまう


二匹のマモノに囲われた小さい人型の物体

血塗れでよく確認できないが、それが子供の物だと理解するのに時間はかからなかった


勇者

「そんな…!!」


勇者は落胆するも、目の前のマモノに意識を集中させる


勇者

「くっ、まずはコイツらを片付けよう…!!」


勇者は剣を振るい、マモノ達を一匹ずつ蹴散らしていく


「クエックエッ!」


勇者

「まて!…クソッ逃した!!」


一匹は撃破したもののもう一匹は逃してしまった。勇者は追うのを諦め、剣をしまって子供だったソレに近づく。


勇者

「遅かったか…死からだいぶ経ってるようだ」


原型をとどめないほど食い散らかされた子供を前に勇者は複雑な感情を持つ


勇者

「こんな小さな子を…惨すぎる…。

彼らにはどう伝えようか、いや、嘘を言っても仕方ない正直に話そう…」


勇者は子を置いて静かに男女の元へ引き返した


ーーー


「そんな…!そんな…!」


「ぐぅ…!!」


勇者の話を聞いてうずくまり嗚咽する男女


勇者はそれをただただ見つめる事しかできなかった


勇者

「……」


もう何を言っても男女には届かない

そう判断した勇者は静かに馬に跨り

その場を後にする。


ーーーバチバチッ


あれからしばらく経ち、

洞穴で焚き火をしながら休憩を取り

温まる勇者


勇者

「漁村へはまだ遠い、ここで十分に休憩をとって体力を回復させておこう」


ついさっき仕留めたマモノを焼いて

食べる勇者


勇者

「……」


ふとあの男女のことを思い返し

食事が止まる


勇者

「(…僕のどこが勇者なんだろう?

村も救えず、子供までも救えず…

あの夫婦も…)」


勇者は思い詰めた顔をしながら自問自答する


「果てしなく無力だ、何もできない

こんな僕が本当に

魔王を倒すことなんてできるのか?」


「…いや、やめておこう

悩むのは…。魔王を倒せば世界は救われる

僕にはその使命がある

記憶が戻らなくともそれは変わらないはずだ

もうこれ以上、犠牲は出してはならない…

魔王…ツケは払ってもらうぞ」


勇者は静かに横になり、明日に備えて眠りについた


ーーー


村長

「この村はおしまいじゃぁ…」


村にたどり着いた勇者は

ヒセキを得るために村長の元を訪ねていた


村長

「村の子はみんな、化け物になってしまった

生まれてくる子も3日も待たずに死んでいく

人の形を残さず生まれてくるもの

すでにドロドロな物など…くふぅ…

この村は呪われておる」


勇者

「違う、魔王の仕業だ」


村長

「魔王…そなたは勇者

魔王を討伐せし者…じゃが

もう、魔王を倒したとてこの村は…」


勇者

「村長、ヒセキはどこですか

それがないと僕は魔王を倒せない」


村長

「海のマモノが喰らいおった…!

この村の希望は全てが閉ざされたのじゃ…

あの子達の顔も声ももう聞こえぬ…」


勇者

「…この人じゃダメだ」


勇者は村長の家を後にし、村を散策する


歩けど歩けど

勇者の目に飛び込むのは悲しい顔をして

項垂れる村人の姿だけ


天気はすっかり曇り空


勇者はまともに話せる人を探した


ーーー


若い女性

「どうぞ」


勇者

「すまない」


しばらくしてようやく

まともに話せる人に出会った勇者

家に招かれ休憩を取る


若い女性

「村長とは話が合いませんでしたか?」


勇者

「あぁ、かなり取り乱していた、話などまともに取れる状態ではなかった」


若い女性

「そうですか…」


女性は少し疲れたような顔をする


勇者

「この村では、子が大変なんだとな?」


若い女性

「えぇ…」


女性は村に起きた出来事を詳しく話した



勇者

「なるほど、赤子が次々と異形に…」


勇者はとりあえず勇者らしく振る舞うが

内心は恐ろしさで震えている


若い女性

「生まれてくる子はみんな人の形を保たずに死んでいきました…この子もああなるんじゃないかって…」


お腹をさすりながら涙ぐむ女性


勇者

「(女王は"生殖能力が絶たれた者が居る"といっていたが

まさかこの村がそうなのか…?)」


若い女性

「…勇者様、ヒセキを取りに来たのですよね」


勇者

「あぁ、そのつもりだった」


若い女性

「ヒセキは…」


勇者

「わかってる。村長から聞いた」


若い女性

「ヒセキがないと魔王を倒せない…

ヒセキがマモノに食われたと聞いて

村の人たちは大層落ち込みました

主人も勇者様が来るのを待たずに」


若い女性

「一人で魔物退治に……」


男性(回想)

『勇者様など、もう待てん!ヒセキは俺が取り戻してくる!!』


勇者

「な!?無茶だ!危険すぎる!!」

「その人の場所は?」


勇者は血相を変えて男性の行き先を尋ねる


若い女性

「村の離れにある海岸…

でも気をつけてください、あそこはマモノの住みかとなっています」


勇者は急いで海岸へと向かうーー


海岸に着き、辺りを探索していると

遠くに人影がいるのを確認

すぐに走ってその影の元へ近づく


勇者

「おーい!!」


男性

「!!」


マモノが男性を囲う


勇者

「ッッ!!まずい!!」


勇者は急いで男性の元へ向かい、マモノに剣を振るう



勇者

「でやっ!!」


「ピュグッッ」


魔物を蹴散らした勇者は

倒れてる男性に声をかける


勇者

「大丈夫か!?」


男性

「あ、あぁ。あなたは…?」


勇者

「僕は勇者だ」


男性

「…!?あなたが!!」


勇者は男性の手を取り、ゆっくりと起き上がらせる


勇者

「さぁここは危ない、村に戻るんだ」


男性

「し、しかし…マモノは…

奴は村を…子供達を…!」


男性の震える肩に手を置く勇者


勇者

「マモノは僕に任せてくれ!

普通の人間では到底太刀打ちできない

僕は勇者だ、必ず村を救い出して見せる!」


勇者の力強い言葉に

男性は心動かされ、素直に言うことを聞く


男性

「俺の子は…無事に産まれてくるのか?」


勇者

「……約束する」


勇者は男性を村に返したあと

付近の桟橋(さんばし)を渡り、海をジッと見つめる


若い女性(回想)

『マモノは球体状の巨大な魚のような姿をしていました…』


勇者

「どれほど潜れるのだろうか?」


水面を眺めながらふと呟く勇者


勇者

「とりあえず息さえ止めておけば、長時間潜れたりしないだろうか?一応勇者だからな…」


「苦しくなったらすぐに浮上しよう」


勇者は意を決して海に飛び込む


勇者

「ん…!?むぐぐ…!!」


途端に勇者はもがいてすぐに浮上

「ぶはぁっ!!」と息を吐き、急いで陸に上がる


「はぁ…はぁ…」と勇者は息を切らす


勇者

「ダメだ…肺活量は普通の人間と変わらない!

どうする…?このままじゃヒセキは手に入らないぞ…!」


焦る勇者


勇者

「村に戻って一度体制を立て直すか…

いや、マモノを倒すと言った手前、引き返すのは少し気が引ける…」


勇者

「仕方ない、時間はかかるが何か役に立つものはないかこの辺を散策するしかないか」


勇者は立ち上がり、足を前へ踏み込んだ瞬間、地面が凹み、そのまま落下していく


勇者

「うわ!うわああああ!!」


勇者は滑り落ち、地下深くに背中から着地


勇者

「んぐっ…!?」


そこはコケの生えた少し湿った場所


勇者

「なんだここは…」


勇者が立ち上がろうとした時

なにか小さな足音がゾロゾロと勇者の方へ近づいてくる


勇者

「!!」


おにぎりみたいなプヨプヨした

二足歩行の小さな生物達に囲まれる勇者


勇者

「な…なんだお前らは!?」


勇者は慌てて剣を抜こうとする


生物

「プア。プアプア。」


勇者

「…?」


突然意味不明な言語で話し始める生物


勇者

「なんだ…?何を言ってるんだ?

こいつらは一体…」


一体の生物が話し終えると

もう一体の生物がちょこちょこと、勇者の元へ歩み寄り、勇者の手を引っ張る


勇者

「な、なんだ?!お、おい…!!」


勇者はわけもわからないまま

生物達にどこかへ連れて行かれる


ーーー


勇者

「!?」


連れて行かれた先は、小さな街のような所だった。


洗濯物を干すものや、椅子に揺れてるもの

プヨプヨした生物達が人間のような暮らしをしている。


その奇妙な光景に勇者は呆気に取られて

手を引かれてることも忘れて辺りを見渡す。


勇者

「…!!」


手を引いている生物がどこかへ入り

勇者も不可抗力で一緒に入る


そこは料理屋のようなところ

生物が席につき、勇者も一緒に席についた。


勇者

「な、なぁ…おい?」


生物

「プアッ!プアプア!」


シェフ

「プエ〜」


生物が何か喋ると

シェフっぽい生物が返事をして、

フライパンをシャカシャカする


勇者はふと我に返って、ガタッと立ち上がる


勇者

「なぁ!なんなんだお前達は!?」


勇者の様子にビクッとなる生物


勇者

「魔王が迫ってる!!よくわからないが帰らせてもらうぞ!

僕はこんなことしてる場合じゃないんだ!!」


勇者がそう言って店を出ようとした時、なにやら生物達が興奮しだす


生物達

「プエーーーッッ!!」


勇者

「…!?なんだ!?」


勇者が驚いていると

一匹の生物がヒョコヒョコと静かに近づいてきて

勇者の手に何かを握らせる


勇者

「なんだ…?これは…パフ?」


勇者が混乱していると、突然照明が暗くなり

一定の箇所にスポットライトが当たる

そこにはヒゲの生やした生物がいた


ヒゲ

「プエ、プアプエ」


勇者はまたも驚く


勇者

「な、なんだ?!言葉がわかるぞ?!」


勇者は握っているパフを見つめる


勇者

「こ、これの仕業か?」


ヒゲが話を進める


勇者

「"静粛に…、これより我らプヨ族恒例の儀式を始めるぞ"……?プヨ族…?儀式…?」


「"優勝者にはトロフィーを授ける"

優勝者…?何を言ってるんだ…?」


ヒゲは突然ポーズを決めると

スポットライトが移動し、ある台座のところでピタッと止まる


勇者

「"これが優勝者に贈られるトロフィー

潜水のパフ…?だ、これを使えば水の中でも息が出来るようになるぞ"……

水の中でも息ができる……!?」


勇者はそれを聞いて顔色を変える


勇者

「"これより始める儀式で見事勝利すれば

これはお主のものだ!早い者勝ちだぞ…!!"

(あれがあれば、海のマモノを倒せる…!!)」


勇者は叫ぶ


勇者

「お、おい!僕もその儀式に参加させてくれ!!」


ヒゲは驚きつつも勇者を手で宥める


ヒゲ

「プエップアップォ」


勇者

「"お主はよそ者だが、我々は全てを歓迎する

儀式参加者に差分はない"…参加していいってことか!?」


ヒゲは自身のヒゲをいじりながらプエップエッと笑う仕草を見せる


勇者は潜水のパフを手に入れるために

儀式に参加することになった


ーーー


観戦席に座るプヨ達


『プパプパ!(これより、プヨ族伝統の儀式をはじめる!)』


ゴゴゴゴゴ…っと凄い音を立てる激流の川


勇者

「こんな荒れた川を泳ぐのか…?」


勇者は思わず息を飲む


『プペプヨ!(まずトロフィーを投げ入れて

次にこの星を川に投げ入れる!)』


潜水のパフと星のオブジェを川へ放り込むプヨ族


『プヨプペ!(そしてこの泡のパフでトロフィーと星を流れから守る!)』


泡に包まれる星と潜水のパフ


『プヨプヨ!(トロフィーを手にした者を勝利者とする!』


ピーッと笛が鳴り、プヨ達が一斉に川へダイブする


勇者

「ここで躊躇していても仕方ない!!」


勇者はヤケクソで川へ飛び込む


勇者

「ごぼっ…!?(想像以上に激しいぞ…息ができん!)」


激流の中を進む参加者達


勇者

「(だめだ!流され…!)」


プヨ

「プペ…!?プパーーーッッ」


川へ飛び込んだプヨが次々と脱落


流されていく同胞を見て

立ち上がり、黙祷をささげるプヨ達


勇者

「ぐむむむ……!」


勇者は木の枝などに捕まり

なんとか必死に堪えながらパフを探す


勇者

「(くそっ!どこだ…!?)」


視界がぼやける


勇者

「(くっ…!ダメだ、体力が…!)」


力尽きかけたその時、前方から泡に包まれた何かが流れてくる


勇者

「…!!あれか!?」


勇者はなんとかその泡に近づこうと

川を懸命に泳ぐ


勇者

「ごぽっ…!(あとちょっ…!)」


泡に近づいたところで大きな波に襲われる勇者、そのまま流される


勇者

「ごぽぽぽ……!?」


流されてる中で勇者はあるものを発見する


勇者

「ごぼっ…!?(潜水のパフ…!?)」


勇者は体制を立て直しながら

パフの元まで急いで泳ぐ


勇者

「ごぼっ…!ぐぼっ…!!」


勇者は必死に手を伸ばし、ついにパフを掴んだ


勇者

「んぶ…!?」


瞬間、川に流されて穴の中へ吸い込まれる勇者


プヨ族達はそれを見て大歓声を上げる


ーーー


-海岸-


波の音だけが聞こえる静かな海岸


魚達が優雅に泳ぐ中、付近の穴からブクブクと大きな泡が噴き出てくる


勇者

「ぶほぁッッ!!」


泡と一緒に勇者がクルクルと飛び出てくる


「グォォォオオオオ!!」


前方から何やら巨大な影が勇者に向かって猛突進してくる


「うわっ!!」


ソレは勇者の横を通り抜け、

勇者はその衝撃で吹き飛ぶもふんばり

なんとか体制を立て直す


ソレは球体状の巨大な魚のような姿をしたマモノだった


勇者

「海の怪物…!あれか!!」


勇者は剣を構え、マモノと対峙する



身体を透明な膜で覆われた勇者


勇者

「これが、パフの力か…!」


マモノが勇者に迫る


勇者

「くあっ!!っと…!!」


勇者はマモノの突進を回避しつつ

攻撃の隙を伺う


勇者

「なんて鋭い歯だ、あんなのに噛み砕かれたらひとたまりも無いぞ!」


マモノは大きな口を開けて勇者を食べようとする


勇者

「ふん!…ぐあっ!」


マモノを回避する勇者

しかし、マモノは体を回転させて

尻尾で勇者を薙ぎ払ってくる


「グォォォオオオオ!!」


勇者

「くそっ!負けられるか!!

(約束したんだ…!こんなところで終わってしまったら彼らに…合わす顔がない!!)」


勇者は剣をしっかりと握りしめ

マモノに斬りかかる


勇者

「えいッッ!!」


だが勇者の剣はマモノの分厚い皮膚に弾かれる


勇者

「ぐっ…!(なんて硬い皮膚だ!!これでは攻撃が通らないじゃないか!!)」


勇者は考える


勇者

「皮膚より柔らかそうな部位は…くそっ

口内しか思いつかない…!!」


口の中を見つめる勇者


「あんなところに飛び込んだら…僕は

終わってしまうかもしれない…!

魔王も倒せてないのに!!」


勇者は身を震わしながらも

考えをやめる


勇者

「いや…どっちみち、ここで何もしなきゃ

運命は変わらない…こいつを倒さないと

ヒセキは手に入らないんだ…!もう時間はない!!」


勇者は覚悟を決める


勇者

「これで最後だ!魔王ーーーッッ!!」


マモノの口の中に飛び込む勇者


勇者

「うおおおおおお!!!!」


「よくも彼らを、あの子を、あの村をッッ!!

彼らの幸せを奪う権利がお前達のどこにある!?」


勇者はそう叫びながら目一杯、剣を振るう


「グォォォオオオオッッ!!」


勇者

「うおおおお!!(終わってくれ!これで!)」


剣はマモノの胃袋から尾を突き破る


「グボァッッ…!?」


マモノは黒い液体を吐きながら息絶えた


ーーー

ーー


勇者は村に戻り、村長と話をする


村長

「おぉ…!これぞまさしく海のヒセキ!」


勇者は海のヒセキを村長に見せていた


村長

「あのマモノを倒すとは、そなたは誠勇者じゃ!」


勇者

「貰ってもいいか?急いでるんだ」


村長

「もちろんじゃ、そなたなら

必ず魔王を倒し、この世界に平和をもたらすじゃろう!」


勇者は海のヒセキを荷物に入れる


夫婦

「勇者様!」


村の夫婦が勇者に声をかける


勇者

「お腹の子は平気か?」


夫婦

「えぇ」「おかげさまで」


夫婦と少しだけ話をする勇者


「もう行かれるのですか?

少し泊まっていかれても……」


勇者

「いや、魔王が復活するかもしれない

早く戻らないと」


「そうですか……」


「勇者様、お世話になりました」


勇者

「うむ」


夫婦

「本当にありがとう、必ずや魔王を!」


勇者は夫婦に別れの挨拶をした


勇者

「それじゃあ……」


その時、勇者に影が落ちる


勇者

「!!」


突如雲行きが怪しくなり、辺りが暗くなる


夫婦

「そ、空が……」


勇者

「……ッッ!」


勇者は何かを察して血相を変える


村長

「おぉ…空が鳴いておる…」


勇者

「すまない!!」


勇者は素早く馬にまたがり

全速力で走らせる


「ゆ、勇者様!」


勇者

「急がねば!魔王が復活する…!!」


勇者は彼方へと消えていったーーー



勇者の焦燥(完)

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