最終話「勇者の選択」
この世の未来を決める選択、存続か破滅か
しばらく悩んだ末に勇者は静かに答えた
勇者
「うん…わかった」
女神
『ではこちらへ』
勇者は女神に案内されて
静かに女神の中へと入っていった
勇者
「(…あったかい)』
勇者を取り込むと女神は手のひらを上に掲げて大きく息を吹きかけた
勇者
「(なんとなくわかっていた…もう戻せないんだって
みんな怖いんだ…嫌なものからは
逃げて…逃げて…都合のいい他にすがる
それが人…)」
「(それまで信じていたものは嘘になり悪になる…)」
「(このまま戻っても、きっと同じことが繰り返される…)」
「(僕にはもう、どうすることもできない…)」
勇者の脳裏にはヌシやマリヴェロの声が浮かぶ
『お前は災いを呼ぶ子だ』
『全てが出来すぎていた
魔王復活に厄災に…勇者の誕生…
全て仕組まれた事だとしたら』
『お前の生まれも案外化け物由来かもしれんぞ
お前も厄災の一つなんじゃないのか?』
勇者
「(どうしてこうなったんだろう…
どこで間違えたのだろう…僕の選択は正しかったのだろうか
ーーーもういいや…眠い…)」
勇者が眠りについた頃、
静かな森の中を衝撃波が突如襲い
木々や人々をなぎ倒す
族長
「!?」
兵士達
「!!」
そして世界は白い光に包まれたーーー
『自分を優先するなんて…』
『酷い話よねぇ』
『勇者様は本当に俺たちの事を見捨てたのかな?』
『あいつも結局奴らと変わらねぇってことだ』
『勇者様の嘘つき…』
『勇者様ってあんな短気な人だったんだ…』
『人の目してなかったぞ』
『俺たち今まであんなの慕ってたのかよ』
『やばいなあいつ』
『いやー俺厄災にかからなくてよかったよ
厄にかかった奴は可哀想だけどさ」
『ふふ、ほんとね』
『ーーー我々の命はあなたと共にあります
散る時は共に散りましょう!』
『たとえこの先、どんな選択を迫られようと
私は勇者様の判断を信じます』
『神の言う通り、人間は愚かなのかも知れぬ』
『勇者よ、辛くなったらいつでも逃げていいのだ』
勇者
『そんな……僕は別に……』
女王
『よいのだ、お前も人間…思うところはあるだろうーーー』
勇者は目を強く瞑った
ーーー
そして世界は滅びた
病に侵され淘汰された者達は苦しみから解放され、心から安堵した
光に包まれながら
少女は笑みをこぼし勇者に感謝して
静かに消滅した
ある夫婦は手を握り合い
滅びを身に受けながらも微笑み
心から勇者に感謝したーーー
「ありがとう…勇者様…」
もちろん死を目前にして恐怖し涙を浮かべる者もいた
「どうして自分が?まだ死にたくない!」と無念を抱きながら
崩れゆく肉体に恐怖を覚えるもの、呆然と眺めるもの、そして自身の最後を察し静かに受け入れるもの……
光に飲まれた地球はヒビ割れて
ボロボロと崩れていき、やがて砂のように消えていった
勇者の選択は必ずしも平等とは言えなかった
しかし争いや苦しむ人々はこの世からいなくなり
世界は本当の意味で平和になったのだーーー
勇者の選択(完)




