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第33話「統一戦争-決別-」

「チッ…マリヴェロの野郎…!!」


一人の兵士が苛立ちながら城下をうろつく


『姑息な真似を…私の顔に泥を塗るつもりか?!

いいか、私が戻ってくる前にあのビラは処分しておけ!!』


マリヴェロに詰め寄られる兵士


「てめぇのために作ってやったのによ

感謝の一つもねーのか!!」


愚痴を飛ばしながら歩く兵士に

何かがぶつかる


「ってーな!!どこ見て歩いてん……」


兵士の顔が徐々に凍りつく

ぶつかったのは黒ずんだ人型のマモノだったーーー


ーーー


族長

「勇者!!起きろ!!」


勇者

「ん…んん…?」


クロメ族族長に叩き起こされる勇者

目の前は火の海に染まっていた


勇者

「…?…!?」


勇者は起き上がり現状を把握するために頭をフル回転させた


族長

「何をしてるんだお前は、寝てる場合か」


勇者

「く、クリュウ…!?これは…」


その時、勇者の脳裏に不安がよぎる


勇者

「学者…メイは…!?」


勇者は剣を手に取り、族長と共に城内を駆けたーーー


マモノ達を倒しながら進み、テラスに出る勇者


外ではクロメ族のほか、カゲ族もマモノ達と交戦してるのが見えた


ドアを蹴破り、広間に足を運ぶと

中央奥に学者が倒れてるのを発見する


勇者

「メイ…!!」


勇者が駆け寄ると闇の(かたまり)のようなものが

行手を阻んだ


族長

「勇者!!」


族長が駆け寄り、剣を構えた


(かたまり)のようなものは

段々と一回り大きな人型(ひとがた)を形成した


赤黒い体色に鎧を纏った骸骨のような見た目をしていて

6本の腕には剣が握られていた


骸骨は首をコキコキ鳴らすと

二人目掛けて二本の剣を振り下ろした


勇者

「くっ…!!」


勇者と族長の二人はそれぞれ別の方へ避け

骸骨を横から囲うように着地する


骸骨は余ったもう2本の腕を二人に振り下ろした


勇者は遠くに回避して距離を取り

族長はその場で体を捻りながら回避し、反撃を試みた


両足に黒い輪っかを作り、体を捻りながら骸骨の方まで向かい剣を振り下ろす


骸骨は紙一重でそれをかわし

地面に突き刺さった剣を族長目掛けて振り上げる


族長は背中を反らして直撃を避け、再び反撃の隙を伺う


勇者も神の力を解放し、骸骨の元まで走る


骸骨は腰を回し、回転切りを放ち

族長を振り払った後

勇者目掛けて全ての腕を振り下ろす


衝撃の反動で勇者は後方へと弾き飛ばされる


族長は背中を向けた骸骨に

手のひらを向けて黒い玉のようなものを発射する


族長

「黒・殲滅砲!!」


骸骨は迫り来る波動に気づき

3本の腕を扇子のように振り、突風で族長の波動を弾いた


背中を向けた骸骨に勇者は隙ありと言わんばかりに

攻撃を仕掛けにいく


勇者

「はぁぁッッ!!」


隙だらけの背中目掛けて剣を振り下ろす

しかし、防がれてしまった


族長も追い討ちとばかりに

骸骨の間合に入るが、余った腕で薙ぎ払われる


その時、壁の隅から一つの丸い影が滲み出てきて

床まで滑るように降り、骸骨の元までそれは猛スピードで向かった


骸骨の股付近でそれは人型を形成し

一回転するように高く飛びはね、骸骨目掛けてカマのような剣を振り下ろした


骸骨

「ゴアッ」


切られた部分を抑え、後方へ下がる骸骨

さほど効いていないようだが

初めて攻撃を受けた形になった


影から姿を現したウェイドは無言でその場に着地し、骸骨を見上げた


骸骨は気合を溜めはじめ

6本の腕を円状に回すと

剣先から赤黒い波動を複数出した


勇者は学者になるべく当たらず、波動を避けた


族長とウェイドは左右に散り、それぞれで

攻撃の隙を伺う


「勇者!!」


族長が合図を送ると勇者は何かを察したのか

コクっと頷き、骸骨の方に視線を戻した


ウェイドと族長が背後から攻撃を仕掛ける


骸骨は4本の腕でそれを防ぐ


勇者は骸骨の方へ走り、骸骨が振り下ろした二本の剣を避け天高く飛び、手が塞がった骸骨目掛けて急降下


骸骨を脳天から剣で切り裂いた


切られた骸骨は口を開きながら

ピクリとも動かず、剣を落として

黒ずみながら静かに消滅していったーーー


骸骨が消えた後、すぐに勇者は学者の元まで走り寄り、彼女を抱き抱えた


「勇者様…」


「メイ…!!」


朦朧とする学者に勇者は必死に呼びかけた


「申し訳ございません…

とんだ失態を…」


「いいんだ!!それよりケガを…」


「勇者様…これを…」


手紙を渡される勇者


「女王の手記に挟んでありました…」


学者の意識が遠のいていく


「おい、死ぬな!!」


力の抜けた体を必死に起こす勇者


学者は口を半分開いて

目も虚い、ぐったりとし

そのまま動かなくなったーーー


城から出た勇者は学者のことを思いながらまっすぐと前を向いていた


辺りには火の粉が舞い

町は一面真っ赤に染まっていた


向こうのほうでは民達の叫び声とマモノ達の唸り声が響いていた


勇者は町の入り口を目指して走りだした

族長やウェイドもあとに続いた


「助けてぇぇ」


民の助けを呼ぶ声が聞こえてくる


族長

「!」


しかし勇者は立ち止まる事なく走り続けた


「そんな…」

「勇者様が…」

「私たちを見捨てるなんて…」


脳裏に浮かぶ声に歯を噛み締めながら

勇者はひたすらに走ったーーー


マモノ

「グアアアア!!」


少女

「…ッッ!!」


マモノに追われた少女が転倒する


「ガルルルルッッ」


マモノが大きく口を開けると

少女は咄嗟に身を屈め、(まぶた)を強く閉じた


少女の耳には金属音と何かが千切れ、倒れる音が響き、そっと目を開けるとそこにはマモノの死骸と少女に背を向けた勇者が立っていた


「ここは危険だ、早く離れるんだ」


呆然と勇者の背中を見つめたあと

少女は曲げた足をさすりながら

静かに呟く


「ダメです…私には逃げる場所も、帰る場所も…」


半分木のような姿になった少女を横目に見て

勇者は察する


少女

「…みんな、おかしくなった

昨日まで笑って…仲良く、あんなに楽しかったのに…」


勇者

「すまない、僕では君は救えない」


勇者は絞り出すような声でそう返した


少女

「勇者様…私たちはどうなるのでしょう…

このまま、みんな歪み合い…憎み合い…殺し合う…優しさも苦しさも忘れて…誰も思いやりを持たない…

私はそんな世界…耐えられない…」


暗い顔をする少女


勇者

「祈っててくれ」


勇者は静かに続ける


「いい選択を見つけられるか

僕自身にもわからない、だから祈っててくれ

君にとって良い結果が訪れるように」


少女

「祈る…勇者様…」


少女はそっと胸に手を置き、静かに(まぶた)を閉じた


城と城下は燃え続け、空を赤く照らしたーーー



統一戦争-決別-(完)

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