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第23話「統一戦争-出発-」

〈ーーー厄災が滅んでからも

厄災は人々の体を蝕んできた…〉


これまでの経緯を語る勇者


〈初めはみんな、同情的だったんだ

でも時間が経つにつれ段々と溝が生まれてきて……〉


〈いつの間にかみんな厄災にかかった人達を(ヤク)と呼んで遠ざけるようになった

厄災にかかった人達も……誰も信じられなくなって……〉


迫害される住民と、それを笑う民


〈僕は手段を探した、厄災を治す手段……

(もと)を正せば全てはそれが元凶だ、それを無くせば

みんなまた、元の状態に戻れるんじゃないかって……〉


「なるほど」


「……」


勇者の話を(かたわ)らで親身になって聞いてくれている女性


「……ところで君は誰なのかな?

まだ名乗ってもらってないんだが……」


勇者は女性の妙に馴染んだかのような態度に

疑問を見せた


「あ、失敬!!」


女性は飛び跳ねるように部屋の中心に立ち

右脇に大きな本を抱えて敬礼のポーズを取った


「私はこの城に仕えております、主に歴史やマモノなどの情報を調べる学者であります!!女王様に勇者様のサポートを任され参上致しました!!」


「……」


勇者は女性のオーバーな言動に困惑した表情を見せた


「五大厄災に関する勇者様のご活躍、私も耳にしておりました!そんな方をサポートできると思うと私は感激に浸る思いであります!」


「勇者様、なにか分からないことがあったり

困ったことがあればぜひとも私を頼りにしてください!

私いっぱい本読んでますので地理や伝承など色々詳しいです!!」


「あ、あぁ頼りにしてる……」


勇者は女性の勢いに押されて

流されるままに協力を承諾したーーー


ーーー


「ーーー神は三方向から攻めてくる、地図を見てくれ

…ここと、ここ、それからここだ」


机に地図を広げ、ペンで神の攻めてくるポイントに丸をつける勇者


「奴らはじっくりと時間をかけてこの世界を滅ぼす算段らしい、理由はわからないが奴らにも何か思うところがあるんだろう」


「奴らの動くタイミングは不明、次元の狭間が現れた時が開戦の合図だ……と、意識の者はそう言っていた」


「なるほど!一人は勇者様が既に撃破なされたのですよね」


「ん…?あ、いや、その…倒したというよりは何だろう……?」


勇者は上手く言葉が出ない


勇者

「まぁとにかく、神が攻めてくる前に

なんとしても止めなくてはならない

現地には既に兵士が配置されているが

今の兵力では心配だ

みんな厄災の影響もあって多くは出撃できない」


学者

「だから兵力を集める必要があるんですね!」


勇者

「そうだ」


学者

「さすが勇者様!統制のセンスも抜群ですね!!」


勇者

「ん、まぁ……全部女王様が言った事なんだが」


学者は目をキラキラと輝かせながら

勇者を見つめていた


勇者

「正直言って僕はまだはっきりと

作戦の全容については理解できていない

全て請け売りだから……」


勇者が自信なさげにそう言うと

学者は目を閉じ手を握り合わせて語りかける


学者

「理解していないようで理解をしている……

記憶を消されたと聞いておりましたが

勇者様はやはり、他の人にはない力をもっているのですね!」


勇者

「そ、そうか……?」


勇者は学者の言葉に僅かな違和感を覚えつつも

褒められたことを素直に受け取った


学者はふと勇者の机の上にある紙に目をやる


「これは……手紙ですか?」


学者にそう聞かれ、

何気なく紙を手にする勇者


「ふむ、女王から託されたものだ

これからこいつを持って島の住人と交渉しに行くところだ」


「直接ですか…?」


「え?」


勇者が驚いた顔でそう返すと

学者は両手で自らの口を塞ぎ慌てた反応をする


「あ、いえ!申し訳ございません!

私程度のものが口出しをーーー」


「あ、いや…直接以外のものがあるのか…?」


「え…?」


ーーー


勇者は学者に案内され別室へ移動


学者

「こちらです」


勇者

「おぉ……」


部屋の隅にある机の上を見て勇者は目を丸くする


「キュピッキュピッ」


そこにいたのは綺麗な青色の体色に、赤色の尻尾を持った少しプックリめの小さな鳥だった

学者が鳥の頭や顎にそっと指を置いて優しく撫でる


学者

「ファッフィー、古くからの言葉で"届ける者"という意味を持ちます、城では"フゥ"と呼ばれ親しまれてきました」


勇者

「フゥ……」


学者

「この子に手紙をくくりつけて、送りたい場所まで飛ばすんです」


勇者

「ほう……」


学者はそう言って戸を開くと

手紙を括り付けたフゥを持ち上げた


学者

「飛行速度がビックリするほど速くて

400マイル離れた場所でも約1秒で到着し、手紙を届けてくれるんですよ」


勇者

「そうなのか……距離はよくわからないが

なんだか速そうだな」


学者はコクっと頷く


学者

「宛名は二通、一通を届けて返事を貰えば

二通目も継続して届けてくれます」


学者

「返事をもらえなかった場合でも、数分すれば自発的に戻ってくるので再度送り届ける事もできます」


外に放されたフゥはゆっくりと上昇した後、翼を大きく広げて飛行の態勢を整え、軽い音と衝撃波が鳴り、それと共に姿が一瞬で見えなくなった


勇者

「行ったのか……?」


学者

「もう届いた頃だと思いますが、ここからは相手の返事次第です、気長に待ちましょう」


学者にそう返された勇者は若干不安に感じながらも手紙が来るのを待つことにした



ーーー


手袋の中にコルク栓のようなものを入れ

そこに手を突っ込む勇者


学者

「それは?」


勇者

「失った指の代わりだ、やはり右手の方が剣を振りやすいからな、こうやって詰め物をしておけば

少しは握れるようになるんじゃないかって」


勇者はググッと手を握りしめる


学者

「厄災につけられた傷…ですか」


勇者はコクっと頷く


勇者

「厄災が滅んだあとも僕は色々と模索した

ヒントなんてなかったけどしらみ潰しに

祈り石も回りながら、厄災を打ち消す手がかりを探した、結局何も見つからなくてここまで来てしまったが……」


勇者は厄災を倒した後の記憶を振り返る


学者

「大変でしたね……」


勇者

「本当に大変だった……、聖者に話を聞いても何も情報を得られない、おまけに失ったはずの指がズキズキと痛むし……」


学者

幻肢痛(げんしつう)ですね、手足を失った方に多く見られる症状です」


勇者

「幻肢痛……」


学者

「未だに原因が解明されてなくて、仮説がいくつかある程度なんですよ」


勇者

「……」


学者

「あ、すみません……!!無神経でしたよね!?」


勇者

「幻肢痛か……それがこいつの正体……

無いはずなのに、そこにあるような感覚があるんだ、かゆみがある時が一番厄介で、かこうとしてもそれがないからかくこともできない……」


学者

「脳が失ったものをまだあると認識して神経に指令を飛ばしているとはよく聞きますが……」


勇者は指を眺めてしばらく黙った


学者

「……勇者様?」


勇者

「いや、なんでもない

原因が知れてよかった、感謝する」


学者

「あ、いえ、滅相もありません

今のはただの成り行きですので、困った事があれば何でも相談してください!」


勇者は学者の笑みに少しばかり

安心感を覚えるようになった



ーーー


学者

「勇者様、手紙が届きました!」


勇者

「おぉ……!」


学者

「さっそく、読み上げますね」


勇者

「頼んだ」


学者

「えー、拝啓(はいけい)、女王陛下

お手紙拝見いたしました

貴女らの事情、察するに余りあり、

その疲弊には深く〜〜〜〜……」


学者の読み上げを黙って聞く勇者


学者

「〜であるなら接見の元、貴女の申し出、(うけたまわ)ります……との事です」


勇者

「なるほど、全くわからん」


学者

「要約すると、それぞれの入島の許可が降りました」


勇者

「そうなのか!では早速……」


学者

「あ、待ってください、どちらから行かれますか?」


ここで学者からクロメ島か影の島、どちらを選択するか聞かれ、勇者は少し迷った末、クロメ島を選んだ


勇者

「ふむ、まずはクロメ島から行こうか

ここからなら結構距離も近い、神の動きにも即対応できるように」


学者

「なるほど、さすが勇者様です

クロメ島へは手配のものが船を回すと

手紙に書いておりました」


勇者はクロメ島へ行く準備を始めた



ーーー


学者

「クロメ族は長く人間と関わりを持たない部族です、過去何人か島に足を運びましたが、すぐに追い返されてしまい彼らに関する資料もわずかしかありません」


学者

「一説には彼らは戦闘に長けた部族とも言われています」


勇者

「それは頼もしいな、女王はそれを頼りで手紙を書いたのだな」


学者

「その生態は謎に包まれています

大昔、魔王討伐にも参加しなかったので

おそらく一筋縄ではいかないと覚悟しておいた方がいいかもしれません」


勇者

「うむ、ぼく…私もそれは承知の上だ」


学者からクロメ族に関する情報を一通り聴き終えた勇者は城を出る段階に入った


学者に見送られる勇者


勇者

「何かあったら文をよこしてくれ、交渉を中断してすぐ駆けつける」


学者

「承知いたしました!お気をつけて」


勇者が背を向けた時、学者はふいに

何かを呟こうとしたが声が詰まった


学者

「勇者様…ぐすっ…あっ」


突然涙をポロポロと流す学者

振り返った勇者はそれを見て戸惑った顔をした


勇者

「ど、どうした……?」


学者

「あ、いえ……すみません、どうも堪えきれなくて……」


勇者がそっと近くに寄ると

学者は涙を拭い、寂しそうな顔をして小さく呟く


学者

「女王は亡くなったんですよね……」


勇者

「……!」


それを聞いた勇者は目を大きく見開き

同時に深いざわつきが心を襲った


学者

「女王は私の憧れの人でした……

彼女がいたから私は、今の私があるんです……」


「勇者様……神を、彼女の命を奪った

その仇をどうか打ってください」


涙ながらに訴える学者に対し

勇者は真剣な顔つきで答える


勇者

「あぁ、それだけは必ず果たす」


その言葉を聞いた学者は

涙を拭いながら再び柔らかな笑みを浮かべた


勇者

「では、行ってくる」


学者が見送る中、勇者は城を後にした


ーーー


〈女王の仇は必ず取る〉


街に出てクロメ島を目指す道中、

住民の話し声が微かに聞こえてくる


「でさぁ可哀想だから優しく声かけてやったら

そいつすげぇ睨んできてさ」


「お前らに俺の何がわかる!!って急に怒鳴ってきて、ほんと殺されるかと思ったぜ」


「俺もさっきすれ違い様に嫌な顔されたんだ」


「厄災に罹ると凶暴化するって話は本当らしい

奴らには関わらない方がいいな、完全に頭がおかしくなってる」


「怖くて道も歩けやしない」


「早く死んでくれねーかな」


「はは、オイオイ……」


勇者は聞こえないフリをして口を強く紡ぎ、静かに街を後にしたーーー



統一戦争-出発-(完)

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