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第14話「五大厄災-飢饉の幻獣-II」

目の前に広がる広大な砂漠

勇者は唾をゴクッと飲みながら

一歩足を踏み出した、その時ーーー


「ちょっと待ちなされ」


隣からそう声が聞こえ、勇者はバランスを崩し転倒した


勇者

「…?」


「無闇に砂漠に足をつけてはならん

この先は危険がいっぱいじゃ」


白髪で口髭を生やしたおじいさんがそう語る


勇者

「えっと…あなたは…?」


おじいさん

「村長じゃよ、昔はな…」


おじいさんはため息混じりにそう答えた。


ーーー


勇者は村長に案内され森の中にある集落を訪問。

村長と話をする事にした。


村長

「事情はわかった。しかし自前知識なしに砂漠を彷徨(うろつ)くのは無謀じゃ、広くて迷うなんてそんな生易しいものじゃない」


「猛毒を持つマモノや流砂、砂嵐

暑さによる幻覚症状

砂漠はそんな危険がつきまとう場所じゃ

素人のお前さんじゃまず間違いなく命を落とすじゃろう」


凄んだ顔をする村長に

勇者は思わずゴクッと唾を飲んだ


勇者

「他のものはどうした?

姿が見当たらないが…」


村長

「連れてかれたよ全員」


村長は険しい表情で答える


村長

「怪物…ゲレプルにな」


勇者

「ゲレ…プル…?」


頷く村長


村長

「村に突然現れたんじゃ…」


村長の話によれば

村にゲレプルという怪物が現れ

村人をさらって行ったという


村長

「村のものは全員行くのを拒んだが

空腹には誰も抗えず…全て奴の目論見通りに…」


勇者

「空腹…」


村長

「怪物は砂漠にある洞窟を住処(すみか)にしてるようでな、村の兵士たちも討伐に向かったが

それきり音沙汰なしじゃ」


勇者

「そのゲレプルというのは

もしかして…」


村長

「おそらくお前さんの言う

厄災とやらの一人じゃろう」


村長は深く頷きながらそう答える


村長

「お前さんが厄災を討伐するために旅をしていると言うのはわかったが、さっきも言った通り砂漠は危険がいっぱいじゃ。先へ進むのなら準備を十分に済ませた方がいい」


村長はそう言って席を外し、隣の部屋からリュックサックを持ってくる


村長

「こいつは砂漠探索用キット

水筒、目掛け、コンパス、地図、テント

砂漠を歩くのに必要な道具が揃っておる」


勇者

「おぉ…」


村長

「それと」


村長は勇者にあるものを手渡す


村長

「こいつは師団の戦闘服…

村人が連れ去られていくのを止めるために

怪物に立ち向かった兵士たちの遺品じゃ」


勇者

「……」


勇者は真剣な面立ちで師団の服を受け取った


村長

「それを身につければ砂漠の暑さも凌げるじゃろう」


村長

「いいか、何事も無茶は禁物じゃ

無謀は勇気とは言わん、マズイと思ったら

いつでも帰ってこい」


勇者はコクっと頷き、その後しばらくやり取りを交わした後、村長の家を離れ

砂漠へと向かったーーー



サングラスをかけ師団の服に身を包んだ勇者は

ラクダに乗り、目的地へと向かっていた


ガイド

「まずは第一の野営を目指すぞ」


勇者

「あ、あぁ…頼む」


村長

『砂漠は広大じゃ、迷うと命の危険がある

ガイドをつけよう。言葉数は少ないが信用のおける男じゃ』


ラクダを引いて歩くガイドの背中を眺める勇者


勇者

「……」


ラクダを止めて勇者に声をかけるガイド


ガイド

「降りろ、ここからは徒歩だ

流砂地帯だから慎重に歩け」


勇者はガイドの言う通りにし、ラクダから降りて徒歩で野営を目指す。


勇者

「(コンパス…使い方がイマイチよくわからないが

地図を見ると野営の方を指してる…のか?)」


勇者は若干不安を抱えつつも

ガイドを信じて前進した。



勇者

「(それにしてもゲレプル…

一体どんな奴なんだ…?

バティスと同じくらい手強いのだろうか

祈りは捧げたが、まだ不安だな…)」


勇者

「(あのタワーも気がかりだし、町は無事だろうか…)」


考え事をしながら歩く勇者は

ふとぬかるみに足を取られてる事に気がつく


勇者

「!?」


ゆっくりと自身の体が沈んでる事に驚く勇者


勇者

「流砂だッッ!!」


勇者は流砂に体を呑まれていた



勇者

「お、おい…!!」


ガイド

「動くな!!落ち着け!!」


村長

『地下の湧き水などで地盤が崩壊する現象

それが流砂じゃ。無闇に動くと体を飲み込まれ身動きが取れなくなってしまうじゃろう』


勇者

「くっ…!!」


勇者は村長の言葉を思い出し

動きを少なくしていく


勇者

「なぁ!見てないで手を貸してくれ!!」


ガイド

「まずは前屈みになって足を浮上させろ」


ガイド

「慌てるな、ゆっくりと…」


勇者

「こ、こうか…?!」


ガイド

「そうだ、流砂はもがけばもがくほど

体を呑まれてしまうからな」


勇者

「くっ…うっ…(重い…!)」


ガイド

「よし、そのままゆっくりと

這うように地上に戻ってこい」


勇者は言われた通りに実行し、なんとか

流砂から脱出することに成功する


勇者

「はぁはぁ…」


ーーー服を脱ぎ、砂や泥を落とす勇者


勇者

「すまん助かった…」


ガイド

「ちゃんとついて来いと言っただろう

なんで別の方向へ歩いたんだ」


勇者

「す、すまん…考え事をしていて…」


ガイド

「お前本当にソレで世界を救えるのか?」


勇者は返す言葉も見つからず

ポリポリと頭をかいて反省する


ガイドから服を着せてもらい

勇者は再び歩き出すーーー


ーーー


野営に到着し、周囲を見渡すガイド

その後ろをとぼけた顔で歩く勇者


ガイド

「やはり既に持ち出された後か…

兵士に頼んでソリとパフを譲ってもらおうと思っていたが」


勇者

「ソリとパフ?」


勇者は不思議そうに聞く


ガイド

「暑さを凌ぐパフ、ひんやりパフと

砂漠を移動するソリだ。どちらも砂漠には重要」


勇者は首を傾げつつもとりあえず

納得するそぶりを見せる


ガイド

「仕方ない、しばらくは徒歩で洞窟を目指すぞ。赤い旗が目印だ」


ガイドにそう言われ、勇者は野営を後にする



しばらく歩き続ける二人

強い風が吹き、砂漠は砂の霧で覆われていた


砂が弾丸のように勇者へ飛んでくる


勇者

「だっ…!!いたっ…!!」


ガイド

「離れるな!!」


視界が悪く、勇者は目を瞑りながら必死に移動する


勇者

「くっ…!」


勇者は耐えきれず地面に伏せ

砂が通り過ぎるのを待った


ガイドが遠ざかっていくのをかすかに開いた目で眺めながら


やがて風は過ぎ、勇者は砂漠の真ん中で孤立状態となった


勇者

「…まずい、はぐれてしまった…。」


ーーー


野営の方を指すコンパス


勇者

「とにかくまずはガイドさんを見つけないと…」


勇者は近くの高台に登り、辺りを見渡す


勇者

「広い…どこにいるのか全くわからん」


辺り一帯、砂だらけ

ガイドの姿はおろか、建物なども見当たらない


しばらく見渡していると

急に足場が崩れ、勇者は地上へと転がり落ちる


勇者

「ぐはっ」


勇者が体を起こしていると

前方の砂が盛り上がり、中からサソリのようなマモノが2体這い出てくる


勇者

「…なっ!!こんな時に…!!」


勇者は急いで立ち上がり、剣に手をかける


マモノ

「グシュルァァッッ」


一匹のマモノが勇者に飛びかかる


勇者はそれを回避して

剣で斬りつける


マモノ

「グシャァッッ」


勇者

「くっ…!!」


勇者は急いで振り返り、残りのマモノも撃退する


マモノ

「ゴシャァァッッ」


勇者

「はぁはぁ…」


勇者は喉の渇きを潤すために

水筒に手をかけると

水が残りわずかな事に気づく


勇者

「まずいな…」


勇者は辛い顔をする


勇者

「水はガイドさんに預けてしまったし

今手元にあるのはこれくらいか…」


『砂漠は危険がいっぱいじゃ』


勇者は村長の言葉を思い返し

サバイバル術を試していく



勇者は小瓶を取り出し、そこに尿を入れる


ジョボボボボ


勇者

「……」


ガイド

『水がなくなったら尿を飲め』


勇者

『尿!?』


ガイド

『尿の大半は水分だ、昔の旅人は砂漠で迷ったらそれを飲んで渇きを凌いだ』


勇者

「ぐぬぬ…」


勇者は固唾を飲んで尿の入った小瓶に口をつけ

喉奥にそれを流し込む


ガイド

『量が多い方を飲め、少ない方は老廃物まみれで体に悪いからな』


勇者

「…ゲボェッッ」


勇者は尿をすぐに吐き出し、咳き込む


勇者

「(ひどい味だ…!こんなの飲み物じゃない…!!)」


ガイド

『本来なら水が尽きるのはあってはならない事

生き残るための最終手段だ』


勇者はむせ返しながらも

我慢して尿を飲み干した。



-夜間-


村長

『砂漠の夜は昼と比べて極寒じゃ』


勇者

「(さ、寒い…!!)」


勇者

「(なんだこれは…昼間とは全然違うじゃないか!!どうなってるんだ砂漠!?)」


勇者はパフなどを使い震える体を抑えながら

日が昇るのを待った。



-翌日-


水が底をつき体力を激しく消耗する勇者

もはや厄災のことなど考える余裕すらなく

ただひたすら水を求め砂漠を彷徨う


勇者

「…くっ」


焼けるような灼熱と太陽の光で

徐々に体力を削られていく


勇者

「…!!」


その時勇者はあるものを見つける


勇者

「あれは…!」


遠くにある景色

そこに見えたのはヤシの木が生い茂る

泉の沸いた地帯、オアシスだ


勇者は我を忘れてオアシスの元まで走り寄る


勇者

「…??」


走れど走れど

なかなかオアシスに辿り着けない


村長

『逃げ水というのを知っているか?

砂漠ではよくある光景じゃ、水が見えるが近づいても近づいても辿り着かない。蜃気楼の一種じゃ、ただの錯覚じゃから見つけても走って近付かんようにな、体力を奪われるだけじゃぞ』


勇者は走りながら村長の言葉を思い出し

しばらくして立ち止まり、膝からその場に崩れ落ちる


勇者

「はぁ…はぁ…」


もはや体力は限界に達していた


勇者

「み、水…。」


しばらく時間が進み、勇者は仰向けで

太陽に照らされていた


勇者

「はぁはぁ…(なんてことだ…)」


勇者は今の状況にひどく落胆していた


勇者

「(世界を救うはずだったのに、厄災を倒して

みんなを守るはずの僕が…こんなところで

命尽き果てるのか…??)」


勇者は朦朧(もうろう)とするなか

ふと視線を平行線に向ける。

そこであるものに気づく


勇者

「みどり…」


見つめる先にあるぼんやりした風景に

初めは何なのか分からずぼーっと眺めただけだったが、しばらく見つめるうちに

それが何かを認識した時、勇者はガバッと体を起こし、静かにつぶやいた


勇者

「オアシス…?!」


また蜃気楼かと思い、勇者は慎重にそれを確認する

先のものと違ってぼんやりとしておらず

勇者はそれが本物であると確信する


勇者

「……!!」


勇者は歓喜に打ち震えながら

オアシスに向かって全力疾走する


勇者

「くっ…はっ!!」


頭から泉に飛び込む


勇者

「ぶくぶくぶく…」


しばらく顔を水の中につける勇者


勇者

「ぶはぁっ……!!」


勇者は水面から一旦頭を持ち上げて

水滴を払った後、今度は全身を水に浸からせ

水浴びを始める


勇者

「♪〜」


勇者は目的を一時忘れて

その場のひとときを楽しんだ


ーーー


水浴びを終え、オアシス内を歩く勇者


勇者

「ん?これは…」


ふと足元を見ると砂に埋もれてひょっこりと顔を出すパフがあるのを見つける


「なぜこんなところに…」


勇者がパフに手をかけて取ろうとする


勇者

「ん?!重いな…くぅっ!」


砂に埋もれた影響か、パフが重くてなかなか取れず勇者は勢いよく砂からパフを引き抜く


勇者

「なっ…!?」


勇者は引き抜いたパフと一緒に出てきた死骸を見て思わず声を上げる


勇者

「僕と同じ服…じゃあこれは兵士の…。」


「ひどい損傷だ…アバラが粉々になってる…

腐敗の影響か…?」


死骸をしばらく眺める勇者


勇者

「すまない、貰っていく」


勇者は黙祷を捧げたあと

パフを持ってオアシスを出る


ーー


パフを強く握りしめる勇者

すると勇者の周りを水が覆う


勇者

「おぉっ」


興奮する勇者


勇者

「涼しい…全然暑くないぞ…!!」


いいものを見つけたとうきうきしながら

勇者はひんやりパフを握りしめて

砂漠を走ったーーー


ーーー


ガイド

「?」


ガイドの見つめる先にうごめく影

それは勇者だった


勇者

「お、アレはガイドさんか!ついに見つけたぞ!」


勇者はガイドさんとの再会を果たし

本来の目的を再開した。



道中、第二野営にてソリを手に入れた勇者は

ガイドの指導のもと、ハンドル型のマモノを捕まえ片手で操作し、砂漠を駆け抜けていく


勇者

「ガイドさん!あとどれくらいかかるんだ?」


ガイド

「この地帯を越えたらすぐだ」


ガイドもソリに乗り勇者を案内する



しばらく砂漠を駆けていると

地面が何やら揺れ動くのを察知する勇者


勇者

「ガイドさん…?なんか揺れてないか?」


勇者の言葉にガイドもすぐに異常を察知する


ガイド

「まずい…!!」


ガイドがそう言った瞬間、砂の中から

大きな影が飛び出す


「「ゴアアアッッ!!!!」」


勇者

「…っ!!!」


魚型の大きなそれは空へ跳ね上がった後

口を大きく広げ、再び砂へと潜っていく


ガイド

「っ…!!」


ガイドがそれに巻き込まれる


勇者

「ガイドさん!!」


大きなそれは砂を移動し、勇者の行手を妨害する


勇者

「くそっ!!許さん!!」


右手にはハンドル、左手にはひんやりパフと

両手が塞がった状態の勇者


勇者

「(近づいたところを一気にやるしかないな…!!)」


勇者はソリを操作し、マモノの周りを巡回しながら攻撃の機会をうかがう。


マモノは再びジャンプして

今度は勇者目掛けて降ってくる


マモノ

「ゴアアアッッ!!」


大きな口が勇者を飲み込もうとする


勇者

「くっ!!」


勇者はハンドルを切り、カーブをえがいて

それを回避する


勇者

「僕から近づかなきゃダメだ!」


勇者はパフを脇に挟み、マモノへ少しずつ近づいていく。


勇者

「ふんっ!!」


勇者はマモノに近づき、剣を勢いよく振り下ろす

だがマモノは微動だにせず、スイスイと砂を泳ぐ。


勇者

「硬い…!表面じゃダメか…!

口の中を切るしかないな!!」


勇者がそう構えていると

突然ズンッと地上が大きく揺れ、

勇者の体が空へと舞い上がる。


目の前には大きく口を開くマモノの姿が


勇者

「!?」


勇者は咄嗟に両手で握りしめた剣を

大きく振るい、マモノ目掛けて斬撃を飛ばした。


斬撃に接触したマモノは真っ二つに両断され

地上へと落下。


勇者は真っ二つに裂かれたマモノの間をすり抜けて、マモノが落ちた場所より少し離れた場所へ落下する。


ーーー


勇者

「ぐあっ…!!」


勇者は体を半分起き上がらせ

辺りを見渡した


落下時に出来た砂塵でよく見えないが

周囲にはマモノの残骸と赤い旗

よーく目を凝らしてみると

目の前には洞窟があるのが確認できた


勇者はゆっくりと起き上がり

体についた砂も払い落とし、洞窟を見つめる


勇者

「ここが村長が言っていた…」


勇者はゴクッと生唾を飲んだ後、

洞窟に足を踏み入れ、奥へと消えるーーー



五大厄災-飢饉の幻獣-II(完)

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