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第10話「五大厄災-伝染の魔神-I」

大陸から戻り塗装屋に石を渡す勇者


塗装屋

「ほう、こいつが例の…実物を見るのは初めてだな。よしちょっと待っていろ」


塗装屋は鍋の下まで行き

石をその手前にあるテーブルに置いて

ハンマーで叩きつける


塗装屋

「石をこうして砕いて、鍋の中へ放り投げる。

少し煮えてきたら、色が混ざるようにスプーンでかき混ぜる」


塗装屋の作業を勇者は黙って見守る


塗装屋

「よし、これでいい。あとは装備をここに浸して

数時間干すだけだ。勇者よ、剣をこちらへ」


勇者が差し出した剣を鍋に放り込む塗装屋


塗装屋

「防具類は私が特注で用意しておいた

数時間経ったらまた見に来い」


ーー勇者は数時間、暇を潰したあと

再度塗装屋を訪れる


塗装屋

「戻ったか、剣の方はもう出来たぞ

あとは防具だけだ」


勇者は剣の方へ歩く


勇者

「これは…」


壁に立てかけられた赤く燃え上がったような剣


塗装屋

「力の剣とでも言おうか」


勇者は恐る恐るそれを手に取る


勇者

「べ、別段…何も変わってないような…

(変わったのは色くらいか…?)」


塗装屋

「使えばわかる、今までの倍以上の力が出せるはずだ」


塗装屋は鍋の中から飾り物を取り出す


塗装屋

「そら、出来たぞ。これで全てが揃った」


塗装屋は飾り物を日が当たる場所へ置き、マントを持って戻ってくる


塗装屋

「こいつが守りの石で作った特注品

守りの衣だ」


勇者

「守りの…ころも…?あ、ちょっ…」


塗装屋は勇者の付けていたマントを外し、守りの衣をかぶらせる


塗装屋

「こいつで身の守りが数倍になったはずだ」


勇者

「ほ、ホントか…?」


勇者はなんとなく胡散臭さを感じたものの

とりあえず今はそんな場合じゃないと自分を納得させる


塗装屋

「あとはあれが完成次第

お前は全ての準備が整う」


勇者

「また待つのか…」


しばらく待ち、塗装屋が「そろそろか」と飾り物が干してあるところに向かい、それを手に取って戻ってくる


塗装屋

「これが癒しの石で作った、耳飾り

癒しの耳飾りだ」


緑とオレンジに輝く耳飾りを勇者の前に差し出す


勇者

「み、耳飾りっ…!?」


勇者はそれを見て仰反る


勇者

「ちょっと待て!まさか穴を開けるのか!?」


恐怖で引きつる勇者に塗装屋は冷静に答える


塗装屋

「安心しろ、こいつはただの付けピアスだ

穴など開けん」


塗装屋はそう言いながら勇者の耳に耳飾りを取り付ける


勇者

「うぅ…。」


塗装屋

「よく似合っているぞ」


力の剣、守りの衣、癒しの耳飾りを装備した勇者


塗装屋

「さぁ勇者よこれでお前は以前より遥かに力が上昇したはずだ、調子に乗った厄災とやらに思い知らせてやるといい」


まだ実感がなく、戸惑う勇者


目的を果たした勇者は塗装屋に別れを告げる


勇者

「すまん、世話になったな」


塗装屋

「人類の存亡がかかってるからな

協力するのは当たり前のことだ。しくじるなよ

お前には数億人の命がかかっている。」


勇者はその言葉に深く頷き、馬にまたがって

塗装屋を後にしたーーー


ーーー


-火山の廃村(はいそん)-

火山のふもとにある廃村

かつてここには多くの村人が暮らしていたが

今は見る影もなく、歪な形の岩やボロボロの家などが静かに点々とあるだけだった。


勇者

「厄災の居場所はわからないが…

ムースと戦った場所は僕が記憶を失って目覚めた地点だった…。厄災の影響にゆかりのある地点に

おそらく奴らの仲間がいるかもしれない」


勇者は村の中を探索し、厄災の気配を探し歩く


勇者

「くっ…どこもボロボロだ…」


勇者は辺りを見渡して歯を強く噛み締める


勇者

「(結局彼らを助けてやることはできなかった…

ここの子供と初めて出会った時に必ず助けると約束したのに…)」


勇者は村の中を歩く度に助けられなかった無念に

胸が締め付けられていく。


勇者

「ダメだ…今はまだ…

まずはやることが終わってから

…それからだ、それから後悔しよう」


勇者は必死に自分を言い聞かせながら厄災を探す。



勇者

「一通り探したが…どこにも手かがりはない

ここにはいないのか…?」


勇者は諦めてそこから立ち去ろうとした時

何かの気配を感じてその場から急いで離れる


大きなケモノのような黒い足が

勇者のいた場所に叩き込まれる


勇者

「な、なんだ…!?」


勇者の目の前には

複数の赤い目でこちらを睨む黒い怪物がいた


勇者は剣を抜き、その怪物を威嚇する


勇者

「マモノめ…!!こんなところにまで…!!」


勇者は厄災探しを中断し、まずは怪物を倒すことにした


ーーー


村の中で黒い怪物と激しく交戦する勇者


黒い怪物は四足で犬のように村中を駆け回り、勇者の視界を錯乱させる


勇者

「くそっ…このスピード、大きさ、強さ!!

こいつ今までのマモノとは…!!」


怪物はしばらく駆けたあと、変則的に勇者の元へ飛びつき、大きな牙を彼に見せつける


勇者

「ぐっ…!!!」


勇者はそれをギリギリで回避する


勇者

「集中しろ、奴が迫ってきたら…反撃だ!!」


勇者は剣を静かに構え、反撃の機会を窺う


怪物は再び村中を駆けたあと、もう一度さっきの戦法を取ってきた


勇者

「ふん!バカめ!!」


勇者はさっきとは浅く回避して剣で怪物の首辺りを斬りつける


勇者

「やっ……!」


直後に勇者は村の建物まで吹き飛んでいった


勇者

「ぐほっ…げほっ…なんだ…!?さっきの黒い物体…!?尻尾か!?」


勇者は怪物から尻尾によるカウンターを食らっていた


勇者

「ハァハァ…!でも…痛くないぞ…!!」


勇者は守りの衣による影響でダメージをそこまで受けていなかった

さらに勇者の傷がどんどん塞がっていく


勇者

「すごいな…本当に効果あったのか…」


勇者は感心してよそ見をした隙を怪物に狙われる


飛びついてきた怪物をジャンプでかわす勇者


勇者

「ふんっ!!」


怪物

「グルルルルゥゥ…ッッ」


勇者は怪物の背に飛び乗り、剣で数回斬りつける


怪物

「グルァァァッッ!!」


暴れる怪物から一旦、バック宙で離れる勇者


勇者

「剣の効き目もデカイ…!!いいぞ!!ほんとに僕は強くなっている!!」


怪物は勇者の方を見て、後方へ大きくジャンプし

遠く離れた場所に着地して口を大きく開ける


勇者

「……ッッ!?」


怪物の口から光弾のようなものが発射される


勇者

「ぐっ……!!」


勇者はなす術なく、その光弾をまともに喰らってしまう。


激しい爆風とあたりに広がる土煙


勇者

「まさかこんな攻撃を仕掛けてくるとはな…」


勇者はほぼダメージを受けずにその場に立っていた。


勇者

「今までの状態だったら今頃粉々だっただろう…」


勇者は怪物に向かって静かに剣を構える


勇者

「マモノめ、僕はお前たちを決して許さないぞ!!」


怪物は唸り声を上げながら勇者の元まで突進する


勇者は腰を少し低くしてバッターのように構えて

突進してくる怪物目掛けてジャンプ


すれ違い様に怪物の横腹辺りを切り裂き、着地する


切り裂かれた怪物は着地することなく地面に沈んだーー



勇者

「終わったか…」


しばらく怪物を見つめた後

勇者は剣をしまい、怪物から背を向けて

その場から離れようとする


勇者

「…!!」


勇者の背後で怪物の体が徐々に黒ずんでいき、瘴気のようになって辺りに漂いはじめる


勇者

「なっ…!?」


やがて瘴気は勇者の目の前に集まっていき

人影のようなものを形作っていく


『なるほどな、貴様が勇者…』


勇者は驚きつつも何かとてつも無いものを感じ取り、急いで剣を構える


『我が分身を倒すとは…その力、満更ハッタリでも無いようだな』


勇者

「お前は…ッッ!?」


勇者がそう問いただすと

声の主はゆっくりと口を開く


『我が名はバティス…伝染の厄災』


勇者

「伝染の…!!じゃあお前が…!!」


姿を表したそれは

大きな尻尾や耳に黄色い体色、腕4本で

何か動物のような見た目をしていた


『ムースを倒したようだが、その太刀筋……

奴の気まぐれも呆れたものだな』


低いトーンで勇者を睨みつけるバティス


『一つ忠告しておこう。

俺はムースほど甘くはないぞ。』


バティスはそう言うと、その場から消えて

一瞬で勇者の側まで接近し、蹴りを放つ


勇者

「なっ…!?あが、あががっっ!!??」


勇者は咄嗟に剣で攻撃を防ぐが

蹴りの威力に耐えきれず弾き飛ばされる


勇者

「ぐああっっ…!!!」


何度もバウンドしながらもなんとか

踏ん張り、体制を立て直す勇者


バティスは躊躇なく接近し、またしても蹴りを放つ


バティス

『どうした勇者、その程度か。』


必死に蹴りを受け止める勇者


バティス

『この俺を倒して見せろ』


勇者

「ぐぐ…(すご…ッッ!?力がッッ!?)」


しばらく耐えたが、とうとう力負けして

勇者は彼方まで吹き飛ぶ


勇者

「ぐっ……があああぁぁ!!」


バティスは遠くまで勇者が吹き飛んだのを確認すると

天に舞い、4本の腕に何かを溜める


バティス

『土に帰れ』


4本の腕を前に出すとそこから光弾が出現

「ボォン」と放たれた光弾は勇者目掛けて飛んでいく


光弾は勇者に着弾し、激しい大爆発を起こす

辺りを巨大な煙が覆い、勇者はその中で仰向けに倒れ、口を開いたままピクリとも動かなくなった。


バティスが地上へと降りてしばらくすると

激しい地鳴りが発生して、地面から釘のような巨大なタワーが迫り出し、天へと登っていく


天まで登りきったあと

頂上にいるバティスが四つの腕を広げ、こう叫ぶ


バティス

『我が伝染の力よ、愚かな人間どもをチリ一つ残さず蝕み尽くせ』


タワーの一部が緑色に発光する

中心部分には激しく光るビリビリした物体


空は暗雲に包まれ、世界は病に冒されはじめるーーー



五大厄災-伝染の魔神-I(完)

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