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夢見るラプラス

特異型には干渉しないというスタンスを星間連合はとる。


それには様々な理由があるのだが、まず第一に共存が困難である。


精神優位種族には、その特性に応じていくつかの分類がある。


ほぼ全体に共通して言えるのが、意識のみの存在であり、物質世界には干渉できないということだ。


そこで彼らは、有機生物の精神に寄生し、優位種ならではの超常的な能力を貸し与える、つまり物質世界への「窓口」を得る。


その「窓口」となる有機生物を、彼らは「契約者」もしくは「宿主」と呼ぶ。


しかし何事にも例外はある。


契約者を必要としない、極めて特殊な能力で現世に干渉できる種族。


これを、一般的に特異型と呼ぶ。


代表例としてまず挙げられるのが、特異一種のペンタモールだろう。


とうに絶滅した種族ではあるが、確率を支配するという絶大な能力を有していた彼らは、その能力ゆえに「窓口」を必要とせず、従って有機生物の管理下で必然的に生じる制限をまったく受けなかった。


過去、未来においても比肩しうる者はいないだろう最高位の能力「特異一位」と称されるゆえんである。


そんな彼らにも、終焉のときは等しく訪れる。


その当時、下位種族と目されていた現ペンタモールの反乱である。


現在「特異二種」と呼ばれている彼らの能力は、他者の特性を模倣するというものだ。


しかしそれは飽くまでも彼らの言い分であり、本質的には「特異一種」と同じ性質の能力だとされている。


旧ペンタモールを打ち破った、対抗しえたというのも理由のひとつだが、何よりも同じ環境で生まれ育った種族がまったく異なる方向性の能力を獲得することはありえない。


それでも彼らの主張が公に認められたのは、ひとえに星間連合が特異型との不毛な争いを嫌ったからだ。


もうこの際だからぶっちゃけてしまうと、列強の特異型は基本アホなので、うまくヨイショして遣り過ごしたいのである。


というか精神優位種は例外なく基本アホなのだが、特異型は特筆すべきアホなのだ。


しょせん肉体もなく、そのへんをふらふらとして生きている連中なので致し方ない。


わかってもらえただろうか?


などと、我が契約者さまに長々と説明をしたところ、彼女はわたしを冷たく一瞥し、


「だから学校に来たの?」


と、おっしゃった。


校内を探検していたのがバレて職員室に連行された先の出来事である。


一向に良くならない風向きに、わたしは開き直って言う。


「ふっ、特異型なら辿り着けなかったろう。だが、わたしは違う」


この身は六歳児なれど、わたしは立派な社会人なのだ。

ひとりでお留守番とか、ありえないと思う。


ラプラスをなめるなと言いたい。

未来が視えるのだ、ひとり遊びもままならない。


仕事を下さい。


「という訳で、上からの命令でな。仕方なく、あの少年の監視に出向いたのだ」


結果、よくわからないことがわかった。


さすがに教え子のこととなれば他人事ではない。

シズノはかすかに興味を示した。


「彼は普通の子です」


「異世界に侵入できる人間がか?」


星間連合の現地工作員に支給される装備の大半は、他種族の能力をどうにかして再現したものである。


何かと世間がうるさいので、非殺傷、不可視性に優れた逸品揃い。


とくに分配機、正式名称ポータルアバター「銀河3」(宇宙的単語なので自粛)は、再現率の高さとメタリックな意匠が人気のモデルだ。


その結界を突破してきたということは、すなわち①「契約者」②「能力者」③「その他」の三択しかない。


そしてこの星に不法滞在している、仮に星人エックスとしよう、そいつが特異型だとすれば、宿主はいないことになる。


特異型にとって契約者など足枷にしかならないからだ。


まさか寝床に困ってなどということはあるまい。


そもそも同じ優位種のわたしなら、契約者を見れば一目でそれとわかる。


なんかオーラが違う。


あの少年には、なんていうか、そういう契約者特有の、だるだる感? がなかった。


つまり、あの男たちの証言をあてにしてやっていくしかないのである。


「…………」


わたしの反論に、シズノは少し考えてから白旗を上げた。


「まあ、そういうことにしておきましょう」


よし、方針は固まった。


わたしは重々しく頷き、


「とりあえず現状維持で」

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