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駄菓子屋ヤハギ 異世界に出店します  作者: 長野文三郎
第二部

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レプラスを追え


 俺は新しい商品を取り出した。


(こいつでレプラスをおびき寄せよう)

(金貨!?)

(よく見てくれ。お菓子だよ)


 商品名:金貨チョコ

 説明 :ポット入りのチョコレートで金貨の形をしている。

     見た目は本物の金貨そのもので、持ってみるまで判別は難しい。

     食べると金運がごくわずかにアップする。

 値段 :20リム


(軽い……)

(お菓子なんだから当たり前だろう、涙ぐむなよ)


 メルルはがっかりした様子でアルミ製の包装を開いて、チョコレートを食べている。


(この金貨チョコとジュエルキャンディーを置いておけばいいんじゃないか?)

(ええ、これならレプラスをだますことができそうですね。さっそくマジックトラップを設置します)


 ミラは呪文を唱えながら床に魔法陣を描き出した。

このマジックトラップは直径50センチほどの円形をしている。

モンスターが一歩でもここに足を踏み入れれば、たちまち動きを封じられてしまうそうだ。


(とは言っても長くはもちません。動きを止めていられるのはせいぜい20秒くらいですけどね)

(20秒もあればじゅうぶんよ)


 メルルはムラサメレプリカでパチパチと手のひらを叩きながら請け合った。



 すべての準備が整うと、俺達は岩陰に隠れた。

そして壁に石をぶつけて小さな音を鳴らす。

レプラスたちは何事かと、すぐにウォーハンマーは構えながら小走りでやってきた。


「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃ!」

「ぎゃあぎゃあ!」


 金貨を見つけて興奮しているようだ。

レプラスは用心深い性格をしているのだけど、お宝に目がなく、見つけると理性が吹っ飛ぶらしい。

血走った眼付きで真っ直ぐにチョコレートへ殺到した。


「ぐげあ!?」


 マジックトラップに足を踏み込んだレプラスが叫び声を上げた。

見れば全身が痺れたかのように、弓なりになって硬直している。

すかさずメルルが飛び出して、赤く光るムラサメレプリカを一閃させた。


「ひとつ!」


 胴体を両断されたレプラスが煙となって消えていく。

ムラサメレプリカの切れ味は実戦でも恐ろしいほどの威力だ。

レプラスが消滅すると、あとには紫色をした豆粒大の魔結晶と銀貨が二枚残された。


「ふたつ!」


 俺の驚嘆を他所に、メルルは二体目のレプラスを袈裟懸けに斬る。

魔法で強化された肉体は俊敏で、ただただ圧倒されるばかりだ。

こちらのモンスターも一撃のもとに討ち取られてしまった。


 ところが、三体目は少し様子が違った。

マジックトラップの効果が切れてきたのか、レプラスは何とか戒めを解こうと身をよじっている。

メルルの方もこれまでの連撃が嘘のように、目に見えて速度が落ちてしまった。


「疲労か? それともムラサメレプリカを使ったことによる反動?」


 オモチャとはいえ妖刀だ。

もしかして呪いの類があるのか?


「大丈夫です。見守ってください」


 俺の心配を察したのかミラが声をかけてきた。


「だけどメルルが……」


 そのときメルルが動いた。

敵に攻撃の的を絞らせないようにジグザグに前進していく。

レプラスの方はまだマジックトラップの効力からぬけだせないようだ。

ウォーハンマーを持ち上げて構えるが、その動きはもたもたしている。


 赤い刀身が再び閃くとウォーハンマーを握った右手がぽとりと落ちた。


「うぎゃーっ!」


 痛みに転げたレプラスの足が魔法陣から抜け出てしまった。

レプラスは大地を転がったが、ピョンと跳ね起きその場から逃げ出していく。

俺は手にしていた八連発ピストルを構えた。


「待ってください!」


 ミラが俺の手首を握って標的を逸らす。


「逃げられてしまうぞ?」

「メルルはわざとレプラスを逃がしたのです」

「わざと? 討ち取れたのに?」

「ええ。レプラスの巣にはお宝がため込まれていることが多いのですよ。リスクはありますが、巣を探索するために逃がしたのでしょう」

「そういうこと。追うわよ!」


 レプラスを追いかけるメルルの背中を追って、俺とミラも走り出した。



 地図作りに来ているというのに、いつの間にか俺は冒険者稼業に手を染めていた。

メルルとミラの勢いに飲まれてしまったというのが正直なところだけど文句はない。

彼女たちには世話になっている。

これが一攫千金のチャンスというのなら、手を貸すくらいはしてやりたいと思う。


 薄暗いダンジョンの通路の奥に、レプラスのごつごつした背中が見えている。

俺たちは距離をとりながらその背中を追っている最中だ。

負傷しているせいでレプラスの動きは鈍い。

尾行はそれほど難しくないだろう。


「でも近づき過ぎちゃダメだよ。あいつが巣に戻らないかもしれないからね」

「わかった。ところでレプラスのお宝ってどれくらいあるのかな?」

「少なくとも30万リムはあるって話だよ」


 メルルはワクワクとした表情で教えてくれる。


「三人で山分けしても一人10万リムですね。これで貯金が増えます」


 ミラも夢見心地だ。

冷静沈着な彼女にしては珍しい。

それくらいのチャンスということなのだろう。


「だけど、巣に他のレプラスがいたらどうする?」


 敵は手負いの一体とは限らないのだ。


「そのときは助っ人を頼むしかないかな。取り分は減っちゃうけどね」

「ガルムさんに協力を頼みましょう。もちろん情報料は取りますよ」


 冒険者たちは共闘することが多いのだろう。

ルーキーの頃からの知り合いはこうやって成長していくのだな。


 通路の奥に見えていたレプラスの背中が闇にのまれた。


「あれ? 少し急ごう」


 先頭を歩くメルルが駆け出していく。

ほどなく俺たちは二股に分かれた分岐点にたどり着いた。


「しまった、どっちに行ったんだろう?」


 用心しすぎて、距離を取り過ぎてしまったようだ。

床を見ても血の痕などは見当たらない。


「早くしないと本当に見失ってしまうかもしれませんね」


 仕方がない。

ミシェルには叱られるかもしれないけど、あの力を使うか……。


 俺はその場に座り込み、静かに目を閉じた。


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