表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駄菓子屋ヤハギ 異世界に出店します  作者: 長野文三郎
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/141

粉末ジュース(ぶどう味)

 太陽が西に傾き、駄菓子屋の繁忙期はんぼうきがやってきた。

俺は下校する小学生を待つように、地上に上がってくる冒険者たちを待っている。

口コミでうわさが広がったらしく、すでに数人のお客さんがお菓子を買っていってくれた。

そんな中、俺は向こうから歩いてくる二人組に目を止める。

店の常連であるメルルとミラの二人だった。


 だけど、様子がおかしい。

元気の塊みたいなメルルがミラの肩につかまりながら、足を引きずって歩いているではないか。


「どうしたんだ?」


 俺は立ち上がって二人の方へ駆け寄った。


「メルルがダンジョンのトラップに引っかかってしまったのです。めまいの呪いにかかってしまいました」


 めまいの呪いは軽いもので、それ自体に命の危険はない。

だけど倦怠感けんたいかんがひどく、まともに動けなくなるため、ダンジョン内でかかると恐ろしい呪いでもあった。


「いいものがあるからこっちに来てくれ」


 俺はミラを手伝って、メルルを天秤屋台てんびんやたいのところまで連れてきた。


「コップはあるかい?」

「はい。あ、お薬をいただけるんですか?」

「いや、薬じゃない。ジュースだ」

「ジュース?」


 俺がメルルに飲ませようとしているのはこれだ。


 商品名:粉末ジュース(ぶどう味)

 説明:120mlの冷水に溶かして飲む 無果汁 解呪の効果あり

 値段:30リム


 ちなみに粉末ジュースはぶどう味の他にも、いちご、メロン、パイナップル、オレンジの五種類があり、効果もそれぞれだ。

ぶどうは解呪、オレンジは解毒、いちごは消費魔力軽減(15分)、メロンは取得経験値1・2倍(10分)、パイナップルは取得金額1・2倍(10分)である。


「ミラ、水はあるかい?」

「すぐに作ります」


 ミラは魔法で空中に水球を作り出した。


「そんなにたくさん要らないよ。水が多すぎると味が薄くなって不味くなるんだ」


 どうせなら美味しく飲んでもらいたいからな。

俺は金属のカップに粉末と水を混ぜ合わせてぶどうジュースを作った。


「さあ、これを飲んで」

「ん……」


 メルルは息も絶え絶えという感じだったけど、小さく口を開けた。

そこにゆっくりと出来上がったジュースを流し込んでやる。


「コク……コク……ゴクゴクゴク!」

「どうだ、気分は?」

「もうないの?」


 おいっ! 

ジュースの効果は劇的でメルルはケロッとした様子で起き上がり、お替りを催促してくる。

さっきまで青白かった顔にもう赤みがさしていた。


「粉ジュースはちょっとしかないんだよな。子どもの頃は5袋同時に溶かして飲むのが夢だったよ」

「それわかる!」


 俺とメルルはアハハと笑っていたけど、ミラは驚いたままだ。


「メルル、本当にもう大丈夫なの?」

「うん。なんだかスッキリしちゃった!」

「すごい……。あの、ジュースは五種類あるようですけど、効果は全部同じなんですか?」


 俺が他のジュースの説明もしてあげると、メルルはパイナップル味に興味を示した。


「つまりあれ? 私がジャイアントビーを倒すとするじゃない。ジャイアントビーが残すお金ってだいたい100リムくらいだから、このジュースを事前に飲んでおけば120リムになるってこと!?」

「まあ、そういうことになるね」

「10袋、全部ちょうだい!」


 店の在庫をすべて買い占められてしまったぞ。

これでパイナップルジュースは欠品だ。

一方でミラは他のジュースを欲しがった。


「ぶどうとオレンジを三つずつください」


 きっと慎重な性格をしているのだろう。

解毒と解呪を選んでいる。


「さてと、今日も10リム玉チョコにチャレンジしてみるか!」


 パイナップルジュースを買い占めたミラが10リム玉チョコの箱に手を突っ込む。

さっきまで呪いにかかっていたとは信じられないくらいの元気さだ。


「あっ、お前らも来てたのか」


 朝にカレーせんべいを買ってくれた冒険者たちもやってきた。

なんだか仲間が増えている。


「いらっしゃい。カレーせんべいはどうだった?」

「おかげでスタミナが全然切れなかったぜ。最初はうさんくさいとおもったけど、あれはマジですごいな。飴玉のおかげで動きも素早くなったし、今日は親方に褒められまくったぜ!」

「じゃあ、だいぶ稼げたんだね?」

「おうよ、だからまた買いに来たんだ」


 若い冒険者たちはワイワイと騒ぎながら品物を物色している。


「お兄さん、これはなに?」

「それは魔笛ラムネ。吹くとピィーって音がしてモンスターを引き寄せるんだ」

「なにそれ、怖すぎ!」

「罠とかを張ってから使えばいいんじゃないか?」

「なるほど! 1つください」

「強いモンスターが多いところでは使わないようにしてね。60リムです」


 売れ行きは好調だ。


「ウガーッ! また外れた!」


 メルルがまた10リム玉チョコでハズレを引いたらしい。


「もうそれくらいにしておきなよ」

「うるさい、うるさい! もう一個だ」


 ギャンブルだったら大損するタイプだけど、10リム玉チョコくらいならかわいいものなのかもしれない。

でも彼女の将来が心配だ。


「メルル、熱くなり過ぎだぞ。これでも買って食え」

「それは?」

「ミニミニコーラだ」


 小さなプラスチックケースにはコーラ味のラムネの粒が詰まっていて、やけに硬い粒が俺の好みだったりする。


商品名:ミニミニコーラ

説明:コーラ味のラムネ 鎮静効果がある

値段:40リム


「メルルは常に一つ携帯しておいた方がいいかもね。人生が破滅しないように」


 ミラがかわいい笑顔で、キツい一言を吐いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ