ガチャポン
早朝にボッタクーロから外へ出るとミネルバが立っていた。
彼はダンジョン深部に行っていたから、会うのは三日ぶりだ。
「奇遇だな、ユウスケ。こんなところで会うなんて」
なんだか最近しょっちゅうあっているので奇遇という感じはしない……。
「おはよう、ミネルバ」
「ユウスケは今からダンジョンか? ちょうど私も行くところだから一緒にいこうではないか」
少々強引に誘われて、俺たちは連れ立って出勤した。
「ところで鑑札は買えたのか?」
「いや、しばらくはダンジョン内で商売をすることにしたよ。早く金を貯めてアパートを借りたいから」
「そうか……」
月々12000リムの出費は痛いし、地下の方が客の入りはいい。
特に昼間の客は売り上げに大きく貢献していた。
昨日から一人で階段前休憩所まで移動するようになった。
行きも帰りも他の冒険者たちと一緒だったし、モンスターカードさえあればそれほど危険ではないと判断したからだ。
今日はミネルバと一緒だからさらに安全だろう。
どういうつもりでいるかはわからないけど、護衛としてはこれほど頼りになる者もいない。
休憩所の定位置につくと俺は『開店』で店を出した。
「あれ、新しいゲームが増えているぞ。前のとは違う10リムゲームとカプセルトイじゃないか!」
商品名:10リムゲーム『大陸制覇』
説明 :10リム銅貨で遊ぶゲーム 景品は防御結界符
値段:一回10リム(10リム銅貨以外は使えない)
「おお、これは国取り合戦じゃん! 俺が知っているのとはちょっとちがうみたいだけど」
「ふむ、ノーチス大陸の地図が描いてあるな」
ミネルバも興味を示して寄ってきた。
筐体の前面には大陸の地図がかかれており、俺たちがいるのもこのノーチス大陸とのことだ。
「これはどうやって遊ぶのだ?」
「横に置いてあるダンジョン攻略ゲームと一緒さ。まずは10リム硬貨をここに入れる」
コインを入れると画面の下にある左右のルーレットが回り出した。
左のルーレットには数字、右のルーレットには絵柄が描かれている。
「このストップボタンを使って、最初に左側のルーレットを止める」
「ふむ、数字は10だな」
「でかい数がでたな。チャンスだぞ。次に右のボタンで絵柄を確定させるんだ」
絵柄は姫、王、魔女、髑髏の四種類だ
「プリンセスが出れば数字の分だけ国を占領できる。キングが出れば二倍の国だ。でもウィッチが出れば数の分だけ占領した国を失う」
「魔女は悪者扱いか……。それでスカルが出たら?」
「死はすべての終わりさ。そのままゲームオーバー」
ストップボタンを押すと現れた絵柄はプリンセスだった。
画面に配置された10の国のランプが点灯される。
「こうやって大陸にある50の国をすべて占領すると景品がもらえるというわけさ。おっと、スカルが出てしまったな」
これでゲームオーバーだ。
「ミネルバもやってみるか?」
「私はいい。ユウスケがやっているのを見ている方が楽しいから」
知り合いの女の子にこういうことを言うのがいたよな……。
恐ろしい嗄れ声なんだけど、たまにミネルバが女の子に思えるときがあるのはこういうときだ。
「そうか。で、こっちのガチャポンはなんだろう?」
比較的大きなカプセルトイで、種類としては新しそうだ。
商品名:カプセルトイ ミニチュア家具(全8種類+シークレット)
説明 :有名家具メーカーによるミニチュアの家具。熟練の職人が一つ一つ手作りで作っています。第一弾は椅子・ソファー特集
値段 :300リム
正面の説明書きには革張りのソファーやビロード張りの椅子の写真がついている。
どれも本物の素材を使っていて、とても高級そうだ。
俺もコンプリートして店に飾っておこうか?
コレクターの心をくすぐるラインナップだった。
ところが、こちらのカプセルトイは冒険者たちに見向きもされなかった。
なぜだろう……。
「値段が高すぎるんですよ」
凍らせたあんず棒を食べながらミラが教えてくれた。
ミラとメルルは休憩のために戻ってきている。
たしかに300リムというのは駄菓子のヤハギの中では高い方のラインナップになる。
「特殊なマジックアイテムってわけでもないもんね」
メルルも興味はないようだ。
「でも、かわいいだろう。並べてみたくなったりしないか?」
「私たちはお人形遊びをする年齢じゃないよ。300リムを使うんだったら他の商品を買うわ」
冒険者たちはみんな現実的だ。
どうもこの商品は売れる気がしない。
ところでこういうときってどうなるのだろう?
ある一定期間が過ぎれば中身の入れ替えはあるのだろうか?
自分に損が発生するわけではないので深刻にはならないけど、その辺の事情は興味がある。
俺は身銭を切ってカプセルを一つ引く。
出てきたのは黒い革張りのシングルソファーだ。
縫い目も美しく、読書椅子として使えれば座り心地もよさそうである。
俺にはサイズが小さすぎるんだけどね。
しばらく観察して楽しんだ後、そのソファーは棚の上に飾っておいた。
珍しい客が駄菓子のヤハギにやって来たのはそろそろ店を閉めようかという頃だった。
「ごめんくだされ」
やけに甲高い声が聞こえたので、立ち上がって周りを見回したのだけど、お客の姿はどこにもいない。
「あれ、気のせいかな?」
「いやいや、ここですよ」
と、声はするのだけれど姿はない。
もしかして透明人間のご来店か?
「ユウスケ、足元だ」
ミネルバに言われて下を見ると、身長が15センチも満たない小人が三人立っていた。
一人は長いひげを生やしたおじいさんで、他の二人は青年って感じだ。
「いらっしゃいませ」
「ご店主、うちの若いものがこちらのお店でステキな椅子を見たといいましてな、まだ商品があるのなら見せてもらいたいのですが」
家具というのはやっぱりトイカプセルのことだろうなあ。
俺は飾ってあったミニチュアのソファーをそっと床の上に置いた。
「これのことでしょうか?」
「おお! すばらしい。なんと座りやすそうな椅子だ」
「ねっ、長老。オイラの言った通りだったろう?」
もう店じまいをしたいのだけど、小人たちは椅子を囲んで大騒ぎを始めてしまった。
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