最終話
ルガンダに春が来た。
地面を覆う雪も解け、日当たりの良い場所では水仙が咲き始めている。
まだまだ寒さは続くけど日に日に過ごしやすくなっていることを実感する毎日だ。
冬の間にゾリドを使った開発はかなり進んだ。
街道までの間道はすっかり舗装され、馬車二台がすれ違えるほど立派な道になっている。
はっきり言ってしまえば国が管理している街道よりも立派なくらいだ。
国道よりも県道の方が広いみたいな感覚だね。
道の整備だけじゃなくいろいろなものを作ったぞ。
畑や宅地は三倍以上になったし、公衆浴場なんかも用意した。
ジェノスで温泉を掘ったのだけど、見事に引き当てたのだ。
公衆衛生は大切だもんね。
ただお風呂というだけじゃ寂しいので、前世の知識をフル活用して岩盤浴やサウナなんかも用意した。
ダンジョンの横に穴を掘って洞窟風呂なんかも作っている。
これが地元民だけではなく観光客にも受けている。
ルガンダはダンジョンの街としてだけではなく観光の街としても発展しているのだ。
最近では湯治にくる富裕層も増えた。
目下、新しいホテルを建設中である。
おかげで雇用が創出され、人口はまた増えた。
今は三百十六人もいるらしい。
発展が急速すぎて住宅の数が追い付かないくらいだよ。
ナカラムさんはヒーヒー言いながらも行政書類の作成に忙しい。
いっそナカラムさんが領主をやればいいのに、なんて思ってしまうけど、そうもいかないようだ。
このように穏やかに暮らしていたのだが、事件は突然起こった。
ある風の強い日、いつものように店を開いていると、助役のナカラムさんが緊張で体中の筋肉を強張らせながら駆け込んできたのだ。
「ヤハギ様、大変です! のんきにもんじゃを焼いている場合ではございませんぞ!」
「これはもんじゃじゃなくて、新商品のアンコ玉だよ」
「どちらでもかまいません! 王都より伝令が参ったのです!」
「伝令ってなに?」
「わかりませんが緊急事態のようでございます。使いの方には居間でお待ちいただいておりますので、至急領主館へいらしてください」
別に悪いことをした覚えはないから、叱られるようなことは何もないと思う。
あ、ひょっとして転送ポータルの存在がばれたかな?
それともゾリドについてだろうか?
考えていても仕方がない。とりあえず使者とやらに会ってみるか。
「みんな、すまないけど今日は店じまいだ。また明日な」
心配するみんなに別れを告げて領主館に戻った。
領主館で使者に対面した。
向こうは俺にうやうやしくお辞儀をして国王からの勅書を手渡してきた。
捕縛の兵士もいないから俺を捕まえるとかではなさそうだ。
どれどれ国王はいったい何を書いてきたのだろう。
「えーと……ルガンダ領主ユウスケ・ヤハギ。この度、余は――……はあっ!?」
内容にびっくりして思わず声が出た。
すかさず隣にいたミシェルが質問してきた。
「どうしたの、ユウスケ? 国王は何と言ってきたの?」
「これ……召集令状だ……」
「はっ?」
「陛下からの命令だよ。兵士を連れて参戦しろだって……」
これぞまさに青天の霹靂だ。
俺は駄菓子屋領主として戦争に駆り出されることになってしまったようだ。
もっとも、結論から言うとこの戦いはすぐに終わる。
俺の運命がまたしても大きく変わるのは終戦後のことだった。
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第三部はここまでです。
次回より第四部が始まります。
どうぞお楽しみに!
本日9月15日『駄菓子屋ヤハギ』の4巻が発売されました。
こちらは完結巻となっております。
どうぞよろしくお願いします!




