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駄菓子屋ヤハギ 異世界に出店します  作者: 長野文三郎
第三部

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133/141

未来を垣間見た

本日二本目


 夜になり辺りがすっかり静まり返ると、俺とミシェルは寝室で千里眼の準備をした。

ついに未来を見るときがやってきたのだ。


「本当に大丈夫なの?」


「ミシェルは心配症だな。今度は前のようにはならないさ。ラムネで魔力循環を良くしてあるし、ノームにもらった清流の指輪もある。マジックステッキチョコレートで魔力を高めればきっと未来が見えるはずだよ」


「でも……」


「いざというときはミシェルの治癒魔法があるから大丈夫だって。期待しているからね」


「うん……」


 床に座って深呼吸をした。

前回は死にかけたけど、今日はそこまではならないだろう。


「千里眼!」


 目を閉じて魔法を展開すると、あの呼びかけが聞こえた。


 「進みますか?」「戻りますか?」


 進むを選択すると体中が軋むような痛みに襲われた。

脳を万力で締め付けられるような感覚だけど気を失うところまではいかない。

よし、成功だ。


 途切れそうな意識をつなぎ留めながら耐えていると二つの検索ボックスと地図が現れた。

未来を見る方法は二つあるようだ。

一つは時間と地点を選択するタイプ。

もう一つは検索ワードに引っかかったリストを選ぶタイプになる。


 地図は半径10キロ以内、時間は十二時間先まで指定できた。

それが今の俺の限界なのだろう。

レベルが上がれば見える時空はもっと広がるはずだ。


 とりあえずキーワードを「雷」と「落雷」にして検索をかけてみたけど、リストは一件も表示されなかった。

つまり半径10キロ内で十二時間以内に雷の落ちる場所はないのだろう。

仕方がない、今回は別の未来を探ってみるか……。


 少し考えて、明日の朝のダンジョン前を指定した。

すると、すぐにビジョンが展開した。


 お、露店を開いている自分が見えるぞ。

明日も冒険者たちは休まず仕事に精を出すようだ。

チーム・ハルカゼが走ってきた。

メルルがいつものようにスクラッチを引いている。

……お……? 

おお! 

珍しくメルルが当たりクジを引いているじゃないか!


 そこまで確認して千里眼を閉じた。

頭痛が限界に達し、肩から腰にかけて耐えきれない痛みが走っている。


「ふぅ……」


「ユウスケ、しっかりして!」


「死にはしないから安心して。レベルが上がったおかげで前みたいに気を失ったりはしないから。いてて……」


「どこか痛むの?」


「首から肩にかけてがひどいんだ。悪いけど治癒魔法を……」


 ひんやりとしたミシェルの指が俺の首にそえられた。

そこからじんわりとした癒しの魔力が流れ込んでくる。


「マッサージもしてあげるからユウスケは楽にしていて」


「悪いけど今日は甘えさせてもらうよ」


「もう、四六時中甘えてくれていいのに♡」


 ミシェルは確実に俺をダメ人間にしようとしているな……。

滑らかに背中を上下する手を感じながらうっとりと目を閉じた。


「それで、未来は見えたの?」


「今のところ十二時間先までしか見ることはできないんだ。でも天候の悪い日を選べば、どこに雷が落ちるかは判明すると思う。半日あればあらかじめ準備はできるだろう?」


「そうね。それだけあればエネルギーパックと変換器の準備は余裕よ。後はエネルギーパックを完成させないとね」


「そっちはどうなってるの?」


「ほぼ完成なんだけど、まだ足りない材料があるの。モンスターがドロップするアイテムなんだけど、レアな物質がなかなか手に入らなくて」


 確実にドロップするわけじゃないので、ミシェルがどんなに強くても入手は難しいようだ。


「だったら他の冒険者にも頼むとしよう。必要なアイテムをリストにしてよ。掲示板を作って張り出してみるから。適正価格で買い取ればみんなも喜ぶだろう」


「それはいい考えね。いよいよルガンダにも買い取り所ができるんだ」


 王都ではこうした依頼や買い取りはギルドがやっていたっけ。

ルガンダにもそれと似た感じのシステムができるわけだ。

とりあえずは俺とナカラムさんで運営して、ゆくゆくは正式なギルドを立ち上げればいいだろう。

うん、ルガンダもだんだんと町の体裁を整えつつあるな。

喜ばしいことだ。


「どう、ユウスケ、気持ちいい?」


「ありがとう、おかげで楽になったよ。今度はミシェルにしてあげるね」


「私はいいよぉ……。ユウスケが気持ちよくなってくれれば、それでうれしいもん……」


「いいから、交代」


 ここからの展開は千里眼がなくてもわかるだろう?

イチャイチャタイムの流れを肌で感じて、俺たちは期待と愛情のオーラを出しながら指を絡ませた。



 早朝からナカラムさんと掲示板を作った。

なにせ木だけはたくさんあるので、材料には困らない。

パワフルなナカラムさんがガンガンと金槌を振るい、掲示板はすぐにできてしまった。

露店のすぐ横に立てたので店に来る人は嫌でも気づくようになっている。


「こんなもんでよろしいですかな?」


 ナカラムさんは自画自賛するように看板の出来栄えに目を細めている。


「上等ですよ。おかげで助かりました」


「いえいえ、これくらいのこと」


 上腕筋がピクピクしているな。

最近わかったのだが、ナカラムさんは嬉しいと筋肉が震える癖があるのだ。


「あれ~、ユウスケさん、何を作っているの?」


「おはようございます、これは何ですか?」


 やってきたのはメルルとミラだ。


「お、いいところに来たな。チーム・ハルカゼも協力してくれよ」


「協力? ん~……おお、買い取り表だ!」



 ルガンダでは以下のドロップアイテムを買い取ります。


 パイナス・ウェーブの銀角 2万リム

 痺れウナギのヒゲ 8000リム

 地獄神官の杖 1万2000リム

 メタルゴーレムの心臓 5万リム


 この四つがそろえばエネルギーパックはすぐにでも完成するそうだ。

冒険者たちが頑張ってくれれば近日中に集まるかもしれない。


「王都よりも買い取り価格が少しいいですね」


「ジェノスブレイカーが動くかはこいつにかかっているからね。みんなよろしく頼むぞ。特に希少なメタルゴーレムの心臓を持って来てくれたら、ウチのお菓子をカゴいっぱい詰め放題だ」


「本当ですか!?」


 やけにミラが食いついてきた。


「もちろんさ」


「じゃ、じゃあ、ミルキーせんべいに練乳をかけ放題にしても……?」


「かまわない!」


 ミルキーせんべいはミラにとって最近のお気に入りらしい。


 商品名:ミルキーせんべい

 説明 :軽くサクサクした食感のお菓子。

   食べると7秒間の空中浮遊が可能になる。

 値段 :20リム


 駄菓子屋ヤハギではミルキーせんべいにはソース、梅ジャム、練乳の三種類から一つを選び、塗って食べることができる。

ふるさと日本においてだと、関東では梅ジャムが一般的で、練乳は大阪に多いそうだ。


 ミラはこの練乳を塗ったミルキーせんべいが大好きなのである。


「メルル、行きましょう! たっぷり練乳を塗ったミルキーせんべいをお腹いっぱい食べるのです」

「わかった、わかった! わかったから引っ張らないでよ……って、おおうっ! 当たった! スクラッチカードが当たったわああああっ!!」


 メルルの手には剣の絵柄が三つ揃ったスクラッチカードが握られている。

よしよし、千里眼の効果も実証されたな。

いよいよ楽しみになってきた。



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― 新着の感想 ―
[一言] ジェノスブレイカーを動かすのに1.21ジゴワットの電力が必要なんだな
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