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駄菓子屋ヤハギ 異世界に出店します  作者: 長野文三郎
第一部

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死神とキャロルチョコ


 朝食は屋台で野菜スープと大きなソーセージを食べた。

懐具合ふところぐあいに余裕ができたので好きなものを食べられるようになって嬉しい。

値段はスープが150リムで、ソーセージが350リム。

肉を使った料理は全体的に高い気がする。


 お腹がいっぱいになった俺は予定通りプラプラと王城前広場にまでやってきた。

途中のかばん屋で革のリュックサックを購入する。

冒険者が使うような大き目の作りで、生活必需品を入れておくのに便利そうだ。

これで有り金をほとんど使ってしまい、ポケットの中には3000リムを残すのみとなっている。


 王城前の広場はダンジョン前広場よりずっと大きく、清潔だった。

どうやら専門の清掃人を雇っているようだ。

隅の方には大きな掲示板があり、国からのお報せなんかが張り出されている。

たとえば「橋の通行料が上がりました」とか、「重罪犯が検挙されました」みたいなやつだ。

大雑把な官報かんぽうみたいなもんだな。


 目当てのものを探してきょろきょろしていると、それはすぐに見つかった。

魔女ミシェルの手配書である。

映画のポスターくらいのサイズの紙に肖像画が描かれていた。


 どこか疲れたような物憂げな黒い瞳、目の下には少しクマができている。

髪は漆黒で肩よりも長い。

白いブラウスを盛り上げる胸は大きく、暗く地味ではあるが美人であることは間違いなかった。

ちょっと不貞腐ふてくされたような表情をしているけど……。


「これが魔女ミシェルか……。けっこう美人じゃん」


 思わずつぶやいたら、後ろからしゃがれた声をかけられた。


「そうか?」

「うおっ!?」


 思わず飛びのくと、そこにいたのは銀の仮面をつけた死神だった。


「ミネルバさん、脅かさないでくださいよ!」

「そんなつもりはなかったのだが……」


 チョコどら効果のせいか、ミネルバに対する恐怖心は薄れている。


「こんなところで何をしているんだ?」

「噂の魔女の顔を知っておこうと思いまして」


 俺と死神は並んで手配書を見上げた。


「お前も魔女を狙っているのか?」

「とんでもない。俺はただの露天商ですよ。それに、なんだかこの魔女はかわいそうで……」


 あ、こんなことを言ったらヤバかったか? 

ボッタクーロの女将さんにも注意されていたのに忘れていた。

だけどミネルバは気にしていないようだ。


「どうしてそう思う?」

「だって、一方的に婚約を破棄されたんでしょう? まあ、呪いをかけるというのはやり過ぎだと思うけど、同情の余地はありますよ」

「ふむ……。ところで」


 なんだか死神がモジモジしだしたような……。

コイツ、何をクネクネしているんだ?


「その……本当か?」

「何がですか?」

「さ、さっき言っていたではないか、こいつが美人とかなんとか……」

「ああ、魔女の話ですか」

「うむ。こ、こんな女のどこがいいのだ?」


 むむ、死神は見かけに反して地味子より陽キャが好きなのか? 

人は自分にないものを求めるというのは事実らしい。


「けっこうイケてるじゃないですか。そりゃあ性格は暗そうだけど、付き合ってみるといい子かもしれないし」

「ふーむ、そういう意見もあるか……。だが、こいつはぜんぜんモテなかったという話だぞ。あくまでも小耳に挟んだ噂だが……」


 話が長くなりそうなのでおやつを出した。

新商品のキャロルチョコだ。

一口大のチョコレートで味のバリエーションがたくさんある。

包装もカラフルで見ているだけで楽しくなるのだ。


 商品名:キャロルチョコ

 説明:一口大のチョコレート。食べると少し幸せな気持ちになれる。

 値段:20リム


「どうぞおひとつ、チョコレートです」

「す、すまぬ……」


 甘いものが大好きな死神はあたふたと包装紙を開いている。


「さっきの続きですが、魔女がモテなかったというのは意外ですね」

「この国では陽気な女がモテるのだ。それに魔女には色気がないし……」

「えー、そうかな? ちょっと疲れた感じが色っぽいじゃないですか。胸だって大きいし、俺ならぜんぜんアリですけどねぇ」

「そ、そうか? こいつ、尻もかなりでかいぞ。不格好じゃないか?」

「ますますけっこう! 地雷系の臭いはプンプンするけど、それを補って余りある魅力を持っていますよ」


 俺はなんで死神とボーイズトークをしているのだろう? 

それに、どういうわけか魔女を擁護ようごしたい気分でいっぱいだ。

会ったこともないのに妙なことである。


「ところで、魔女について詳しいですね?」

「昔、見かけたことがあるだけだ」

「もしかして、ミネルバさんも魔女のファンだったりして」

「フン、あんな奴は嫌いだ……」


 ミネルバがキャロルチョコを仮面の端から口に入れた。


「あ、イチゴ味……」

「今あるのはイチゴ、キャラメル、ミルク、ピスタチオの四種類なんです」

「ぜ、全部箱で売ってくれ!」


 さすがは甘いもの好き! 

いきなり2400リムの売り上げになってしまった。


「……名前は?」

「へっ?」

「お前の名前を訊いている……」

「ああ、俺は矢作祐介です」

「ユウスケか……」


 キャロルチョコを食べたせいだろうか? 死神といてもなんだか楽しく、愉快な時間を過ごしている。

会話も時間とともにフランクになってきた。


「買ってもらって嬉しいけど、甘いものの食べ過ぎはよくないよ」

「だって好きなんだもん」


 だもん? 

いきなりかわいい言葉遣い……。

とは言え声は男のしゃがれ声だ。


「い、いや……、やめられないくらい好きなのだ」


 そういえばミネルバは女性ものの下着を持っていたな。

ピンク色でシルクのやつ。

俺は気にしないけど、他人には教えたくない事情があるのかもしれない。

深くつっこむのはやめておく方がいいかな。


 お昼近くまでミネルバとお菓子のこととか最近の話題なんかについて喋って、けっこう仲良くなってしまった。


「ところで、もう一度確認なんだが……」

「なんだよ?」

「本当に魔女を可愛いと思うか?」

「何度も言わすなよ。まあまあ好みってだけの話だよ。会ってみないとわからないさ」

「ふむふむ……」


 なんだか知らないけど、死神はやたらとしつこかった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] モンスターのいる荒事まみれな世界だと全体体育会系みたいなもんで陽キャがモテるのでしょうなあ
[一言] ははは、これはまさに駄菓子の取り持つ縁って感じですよね~ 笑。
[良い点] フラグたってますよ
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