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駄菓子屋ヤハギ 異世界に出店します  作者: 長野文三郎
第三部

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ライマスの厚意


 ミシェルの勧めもあり、翌日はベッツエルへ行った。

場所、家賃(もしくは地代)、税金の折り合いがつけば支店を出すつもりである。

これで利益が少しでも上がれば。それだけ俺のレベルも上がるだろう。


 ベッツエル領主のライマスさんはちょうど在宅中で、待たされることなく面会ができた。

この世界の通信手段は手紙しかないので行き違いは日常茶飯事だ。

俺としても今日行って今日会えるとは思っていなかった。

ライマスさんが不在のときはホテルで二、三日ほどのんびり待とうと考えていたくらいだ。


 うちの商品には組み立てグライダーというのがあるけど、あれは例外である。

組み立てグライダーは飛翔魔法が付与されたプロペラ付きで、思い浮かべた場所や人間のところまで飛んでいく。

翼にメッセージを書き込めば手紙代わりになるという優れものだ。


 こちらは一般に販売することを国によって一方的に禁止されてしまった。

冒険者はもとより、外国に売ることだけは絶対にならん、と国王直々に言われている。

軍事や外交において情報はとてつもない武器となる。

組み立てグライダーを販売することは重大な利敵行為になるそうだ。


 とはいえ、近隣の領主にプレゼントすることまでは禁止されていない。

お隣同士でメッセージのやり取りも多くなるだろうから、ライマスさんにも何個か配っておくとしよう。

そうそう、エッセル宰相にもグライダーを飛ばさないとな。

内容はマニ四駆についてだ。

あの人のことだから商品を取りに使いを寄こすかもしれない。

重職に就いてストレスが溜まっているだろうから、せめておもちゃで鬱憤うっぷんを晴らさせてあげるのだ。


「ようこそ、ヤハギさん。よく来てくださいましたな!」


 居間でライマスさんが愛想よく迎えてくれた。

奥様も子どもたちもそろっている。

家族総出でお出迎えとは、なかなかの歓待ぶりである。

これはいい結果が期待できるかもしれない。


「ヤハギさん、こんにちは。僕たちモバイルフォースを動かすのがまたうまくなったんですよ!」


「私もキャンでダンスが踊れるようになりました」


 ヘンゼルとグレーテルが満面の笑顔を見せてくれた。


「それはよかった。ミシェルもモバフォーのダンスが得意なんだよ。今度、二人で踊ってみせてくれるかな?」


「はい、喜んで」


「今日もお土産を持ってきたんだ」


 俺はまずザコⅡ改を取り出す。


「うわっ、新しいモバイルフォースだ!」


 ヘンゼルは嬉しそうにプレゼントを受け取った。


「お兄様、私にも見せて!」


 ザコⅡ改を兄に奪われたグレーテルは悔しそうに小さな手を振り回している。


「グレーテルさん、お土産はまだあるよ。ほら、新商品のマニ四駆」


「まあっ!」


 グレーテルにマニ四駆を手渡すとライマス夫妻も近寄ってきた。


「ヤハギさん、これはどういったものですか?」


 ライマスさんは興味津々でグレーテルの手元を覗き込んでいる。

おもちゃ好きの夫婦だから、この事態は想定済みだ。

俺はさらに三種類のマニ四駆とコースを取り出した。


「こちらの商品はこのコースを走らせて遊ぶものです。カスタマイズもできますよ」


 俺はマニ四駆の詳しい説明をした。

話を聞きながら家族は次々と車体を組み立てていく。


「なるほど、シャーシ(土台)の種類によってカスタマイズの形も変わってくるのだな」


「コースの種類によって選ぶべきモーターも違ってくるようですわ」


「パワー重視かトップスピード重視か……それが問題だ……」


 この夫婦、理解が早すぎないか……?


「ず、ずいぶんとお詳しいようですね?」


 ライマス夫妻は夢中になっていて頭を上げずに返事をする。


「ライマス家は代々魔道具をよくする家系なのです。妻のエマも同じ趣味です」


「な、なるほど……」


 やがて、四人の車体がそれぞれ組みあがった。


「それでは家族対抗のレースといこうじゃないか!」


 さっそくレースをするのか。

しょうがない、スタートシグナルもおまけでプレゼントしよう……。


 一時間後。


「いやあ、ヤハギさん、堪能させてもらいましたよ。実に楽しいおもちゃだ」


 ライマスさんが興奮で上気した顔をしながら握手を求めてきた。


「喜んでいただけたならよかったです。実を言えばカスタマイズグッズはまだまだたくさんあるんですよ。また今度お持ちしま、痛たた……」


 ライマスさんの目が見開かれ、握った手の握力が三倍になっていた。


「こ、これは失礼! つい興奮してしまいまして」


 いや、いいんですけどね……。

ライマスさんはばつが悪そうに話題を変えた。


「ところで、今日はこれをプレゼントしてくださるためだけにいらしたのですか。そうではないのでしょう?」


 おっと、ライマス一家の興奮っぷりに大事な目的を忘れていたぜ。


「実はですね、ペッツエルに駄菓子屋ヤハギの支店を作りたいと考えていまして、ライマスさんの許可を――」


「作りましょう!」


 話が早すぎる!

マニ四駆よりさらに速いぞ!


「いいんですか!?」


「支店ではモバフォーやマニ四駆の販売も?」


「ええ、改造パーツや便利な道具も売る予定です」


 プラモデルを切り離すために使うニッパーの制作は、すでにサナガさんに依頼済みだ。


「ぜひ出してください! 用地は私どもにお任せを」


「えーと、税金とか鑑札なんかは――」


「無税でけっこうです! 若干の家賃をいただければそれでじゅうぶん!」


「あ、ありがとうございます……」


 予想外に事が上手く運ぶな。


「貴方、お店は屋敷のすぐそばにしてもらいましょうよ。その方がなにかと都合がいいですもの」


「そうだな、利便性はなにより大切だ。角の倉庫を改装して使ってもらおう。徒歩二分で買い物ができるぞ!」


 お、俺はなにも言うまい。

ライマスさんのご厚意に甘えることにした。



4月13日にアース・スターノベルより3巻が発売されます。

詳しくは活動報告をご覧ください。

よろしくお願いします。

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