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駄菓子屋ヤハギ 異世界に出店します  作者: 長野文三郎
第三部

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引っ越しのごあいさつ


 移住してきて二週間が経過したけど、ルガンダの開拓は順調だった。

ダンジョンは地下二階まで攻略され、最近では地下三階に挑戦するチームも出始めている。

それに伴い魔石の採取量も増えた。


 また、エッセル男爵が送ってくれた新しい開拓民も到着している。

ほとんどが農家の三男や四男で、親から相続する土地のない人ばかりだ。

ルガンダなら無料で土地が与えられることに加えて、家畜まで貰えると聞いてやってきたそうだ。

さっそく牛や鶏などの世話を頼んだので、牛乳や卵の供給はやや安定してきた。


 道なども少しずつ整備され町の体裁が整えられつつある。

意外にもティッティーが頑張ってくれて、魔法でいろいろと手伝ってくれるのだ。

口ではぶつくさ言いながらも、今はミシェルと協力して集落を守る防御壁の製造を頑張ってくれている。


 すべてが順調に見える開拓事業だけど、一つだけ問題も発生している。

食料問題だ。

領民のほとんどが若い冒険者なのでみんなよく食べるのだ。

四週間はもつだろうと想定した小麦だったけど、そろそろ底を尽きそうな事態になっている。


 朝食の席で俺とミシェルは今日の予定を話し合った。


「このままじゃまずいから買い出しに行ってくるよ」


「だったら私も行く! 久しぶりに二人きりでいたいもの」


 領主館を兼ねた駄菓子屋は人の出入りが多い。

助役のナカラムさんの執務室もあるので、ミシェルと二人だけで過ごす時間が少なくなっているのだ。

ずっと働き通しだったから、隣町まで買い物に行けばいい気分転換になるだろう。


「じゃあベッツエルの町へ行こう」


 ベッツエルはルガンダから十五キロほど離れたところにある町だ。

大きな町だから買い物にも困らないだろう。


「でも、お金は大丈夫? なんなら私が立て替えてもいいんだよ」


 大魔法使いであるミシェルは超大金持ちだ。

だけど俺はミシェルのヒモになるつもりはない。


「みんなが頑張ってくれたおかげで魔石はたくさんあるんだ。買い取ってもらえば仕入れには困らないさ。それと引っ越しのあいさつがまだだからベッツエル領主のところにも顔を出そう。ミシェルのことも紹介するからね。俺のフィアンセって」


 そう、俺たちはついに婚約したのだ。


「ユウスケ~!」


 猫みたいに顔を胸に擦り付けるミシェルがかわいかった。



 ベッツエルへ行くには馬を使った。

店舗を次元収納代わりにできるので荷物の運搬は楽なのだ。

ミシェルは二人乗りを主張したけど、馬がかわいそうなのでそれは諦めてもらった。


「それにしてもひどい道だよな。これじゃあ流通は盛んにならないよ」


「そうね。少しずつでも道幅は広げないとね」


 道々、ミシェルがウィンドカッターを使ってくれたおかげで、張り出した枝や下草なんかは綺麗に取り除かれた。

それだけでも随分歩きやすくなっている。

そのうち拡張工事などをして、人々が行き来しやすいように整備しないとならないだろう。



 一時間半ほどでベッツエルに到着した。

周囲を石壁に囲まれた立派な町である。

主要街道にある立派な町で、人口は四千人くらいらしい。


「先に領主にあいさつに行こう。ひょっとしたら食料を売る商人を紹介してもらえるかもしれないからね」


 俺たちはくつわを並べて町の中央へ進んだ。



 面会したベッツエル領主のライマスさんは四十歳くらいの紳士だった。

お腹周りが大きく、のんびりした印象の人だ。

奥さんもぽっちゃりとして優しそうな人で、俺とミシェルの訪問を喜んでくれた。

ライマスさんの家は代々この町の領主をやっているそうだ。


「よく来てくださった、ヤハギさん。さあさあ座ってください。冷たいクリームをお持ちしますからね」


 王都で買っておいたワインを手土産に渡したら喜んでもらえた。


「これはありがたい。都から遠く離れるとワインは貴重なんですよ」


 この辺は寒くてブドウが取れないそうだ。

そのかわりリンゴが名産で、リンゴ酒をよく作るとのことだった。


「ヘンゼル、グレーテル、お前たちもヤハギさんにごあいさつしなさい」


 ライマスさんの子どもたちを紹介された。

お兄ちゃんのヘンゼル君は十歳、妹のグレーテルさんは八歳だそうだ。


「こんにちは、ヤハギさん」


「ごきげんよう」


 貴族は社交性が重んじられるので、小さいながらもきちんとした挨拶ができる子どもたちだった。

二人とも素直でかわいらしい。


「こんにちは。ヘンゼル君とグレーテルさんにプレゼントがありますよ」


 モバイルフォースのガンガルフとキャンを取り出して手渡した。


「ありがとうございます。でも、これはなんですか?」


「王都で大流行しているおもちゃなんですよ」


 モバイルフォースについて説明すると、子どもたちはさっそく組み立てを開始した。

モバフォーは今でも王都で競技人口を増やし続けてている。

エッセル男爵との約束で月に二百個を送ることになっているのだ。


「出来上がったら機体をおでこにつけてみて」


 ミシェルが子どもたちにモバフォーの動かし方を教えていた。

かつては魔法学院で教師をしていたし、第一回大会のチャンピオンでもあるミシェルなら大船に乗った気で任せられる。

やがて、モバイルフォースが動き出すと子どもたちは歓声を上げた。


「僕のガンガルフが動いた! 動いたぞ!」


「私のキャンも動いたわ!」


 自分の力で人形が動くとあって子どもたちは大はしゃぎだ。

ライマスさんも興味津々のようだ。


「これが噂のモバイルフォースですか。都ではこれを使った闘技大会も開かれているそうですね」


「ライマスさんもご存知でしたか」


「噂には聞いていましたが、実物は初めて見ました。実に面白い!」


 子どもたちは順応が早く、もう取っ組み合いの相撲みたいなことをして遊んでいる。


「ああやって遊んでいるだけで魔法の訓練にもなるんですよ。モバイルフォースを使うことによって新しい魔法が使えるようになった人が何人もいるのです」


 代表的な例はリガールだよな。

リガールはモバイルフォースの練習をしていたおかげで火炎系の魔法が使えるようになったのだ。


「それは素晴らしい。どれ、お父さんにも少しやらせてみなさい」


「お母さんもやってみたいわ」


 ライマス夫妻は子どもたちからモバイルフォースを借りて遊びだした。


「これはなかなか……」


「貴方、勝負をいたしましょう」


 今度はライマス夫妻がモバイルフォースに夢中になってしまった。

最初はおとなしく待っていたヘンゼルとグレーテルだったけど、モバフォーを手放さない両親にじれてきたようだ。


「お父さん、僕のガンガルフを返してよ!」


「私のキャン……」


「ちょっと待っていなさい。おっと!」


「そうよ、私たちは今手が離せないの。うりゃっ!」


 う~ん、ライマス夫妻もモバイルフォースにどっぷりとはまってしまったな。

仕方がないのでグフフとザコもプレゼントすることにした。



――――――――――――――――――――――――――――――

アース・スターノベルより1巻が発売されました!

よろしくお願いします!!


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