新天地へ(第二部最終話)
護送される囚人を一目見ようと城門前には民衆が詰めかけていた。
本日はルガンダの森へ向けて開拓団の第一陣が出発する。
領主である俺をはじめ、ミシェル、チーム・ハルカゼ、ガイルたち、助役のナカラムさんが主だったメンバーだ。
そして、流刑になるティッティーとマルコが護送馬車で運ばれるのである。
馬車の荷台には木製の檻が取り付けられていて、ティッティーとマルコが放り込まれている。
二人は手錠で繋がれた状態だ。
「恥知らず!」
「王都から出て行け!」
「この淫売!」
ティッティーを一目見ようと詰め掛けた人々から怒声が飛んでいる。
中には腐った卵などを投げる輩なんかもいて彼女は頭のてっぺんからつま先までドロドロだ。
大天使ルナディアンの『浄化の光翼』によってティッティーの悪心は六~七割方消えたけど、彼女が無駄な財政出動をさせた事実は消せない。
これも禊の一つとして我慢してもらうしかない。
俺やチーム・ハルカゼは二人を心配したけど。ミシェルだけは違っていた。
どういうわけかため息をこぼしながら、二人のことを羨ましそうに見つめている。
「いいなあ……」
「なんでだよ?」
「だって、二人っきりで檻に入れられて鎖で繋がれているんだよ。私もユウスケと手錠で繋がれたいなあ……」
「おいおい」
「世界中を敵に回しても、二人で手を繋いでいられるんだよ。これ以上の幸せはないわ……。ユウスケはそう思わない?」
うっとりとしているミシェルは怖かったけど、言わんとしていることは理解できる。
「気持ちはわかるけど、俺はもっと平和なのがいいよ。平凡でいいから穏やかな愛をはぐくみたいな」
「うん……そうだよね。ユウスケの言うとおり、私もそっちの方がいい!」
ミシェルは嬉しそうに笑った。
そんな俺たちを見てリガールが感嘆する。
「すごいなあ、ユウスケさんは。ミシェルさんの愛を受け止められる人って世界中探してもユウスケさんしかいないんじゃないですか?」
それを聞いてミシェルはますます嬉しそうにする。
「リガールはよくわかっているわね。そう、私にはユウスケしかいないの。あなたは素直ないい子だから、後で中級火炎魔法の指導をしてあげるわ」
ミシェルはチョロすぎだ。
それにリガールは褒めたわけじゃないと思う。
呆れていただけだ。
まあ、俺もスーパーヘビー級の愛を受け入れてしまったし、それが心地いいから良しとしよう。
そうこうしているうちに助役のナカラムさんが僕らの方へ走ってきた。
「ヤハギ様、出立の準備が整いました。号令をお願いします」
ついに新天地へ向けて旅立つ日がきたか。
異世界から転移してきてもう一年以上になるので、この王都にも愛着が出てきたところだ。
寂しくないと言えば嘘になるが、一緒に行くのは気の合う仲間ばかりである。
「みんな、出立の時間だぞ! 旅の間のおやつのことは俺に任せてくれ。今日はスタミナがアップするお菓子を振舞うからな!」
商品名:蒲焼さん助
説明 :魚のすり身を蒲焼風に仕上げました。絶妙なパリパリ感が美味です。
食べるとスタミナアップ。十六時間の行軍にも耐えられます。
値段 :20リム
ガタゴトと音を立てて馬車が動き出した。
隣に座るミシェルはぴったりと体をくっつけて二人の遠出を楽しんでいる。
俺はといえば領主なんて言う重責に緊張しているけど、本業はやっぱり駄菓子屋だ。
今までもこれからも、やることは大して変わりないだろう。
さあ、駄菓子のヤハギ、ルガンダの森で新装開店である。
(第二部終了)
第三部は新天地の物語となります。
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