なろうの変身ヒーローものが面白くない理由
変身ヒーローの面白い話が読みたくてちょっとスコップしてみたところ、面白い話がほぼ存在しなかったので、その理由をちょっと分析してみた。
あくまで私見ではあるので、参考程度に読んで欲しい。
よろしいだろうか。ではまず一つ目の結論から書くが、それは『主人公が戦う理由が悲しくないから』である。
どこぞのライダーには涙のラインがあるように、蜘蛛男が大いなる責任を背負っているように、変身ヒーローとは悲しみを背負っているものなのだ。
この悲しみとは『過去に悲しいことがありました』というバックボーンのことではない。『悲しいけれど戦わなければならない』という強制力を持った呪いのようなものであり、顔で笑って心で涙するような苦しみを伴うものなのである。
なろうではこれが『こんな悲しい経緯で得た力ですよ』という小説が大半であり、でも今は全部終わって力を振るうのになんの躊躇いもなさそうじゃん、というツッコミしかできないような雑さを感じる小説ばかりだ。
その悲しいところが変身ヒーローのいいところだろ、そこを書けよ! としか言えない。
いや、その後の日常にテーマ性を持たせられるなら書いても面白くなるとは思うけど。
二つ目に、主人公が変身する理由が雑であることが挙げられる。
そもそも変身の良さとは、姿を変えることで正体を隠すことができるというところである。
逆に言えば変身するということは姿を隠す意図があるということでもあるので、大抵の小説はここにちゃんと理由づけがされている。
が、しかし、残念なことにその理由というのが非常にちっさい利己的な理由であることが多いのだ。
例えば『面倒に巻き込まれたくないから』であったり、『好きな子に正体を知られたくないから』だったり、『よく分からないけどダサい格好で戦わさせられる』だったり。そんな軽くてしょーもない理由ばかりなのである。
そうじゃないだろ! と叫びたい気分だ。
『悪の組織に改造されたから異形と化しても変身しなければならない』とか、『正体がバレると身近な人に危険が及ぶから』とか、『非常に危険なテクノロジーで誰にも渡すわけにはいかないから』とか。あくまでも一例であるが、そういった利他の精神によるものが基本の筈である。
まあ例外的に空飛ぶ鉄男さんなどは身バレ上等でやっているが、彼の肉体は普通の人間なので身を守る装甲として変身しているし、身バレしているが故に自宅を爆破されたり裏切りで命を落としかけていたりする。
身バレとはリスクであり、それは本人だけのものではない。
面白い話では主人公が強ければ強いほど敵も強くなり、巻き込まれる範囲はその分だけ拡大していくのだ。
それを知ったことかと笑い飛ばすヒールならともかく、普通のヒーローが無視したらそれはヒーローではないだろう。
三つ目に、主人公が高校生くらいの中途半端なお子様であるということだ。
これは解決できるのなら問題ではなく、面白いなら高校生でも全然構わないということに留意していただきたい。ただし、本当に解決できるのなら、であるが。
中高生と言うのはガキンチョである。思春期真っ只中で調子に乗りやすく、知識が無い故に全能感に支配されやすいおバカな年頃だ。
そんなお子様に、一つ目で書いたような重い理由もなく力がもたらされれば、普通は暴走する。
では暴走しないように頭をよくすれば良いのかと言うとそうではない。
何故なら頭のいい人間は基本的に孤立するからだ。
頭のいい人間にとって学校というのは基本的に苦痛であり、それは最終的にレベルの高い人間だけでコミュニティを形成しようとするほど過激なものである。
そんな彼らが何をどうしたら命をかけて周囲の人間を命懸けで守るというのだろうか。
とまあ要するに、中高生主人公というのはよほど条件を考えないとリアリティが欠如するのである。
また、恋愛に関しても稚拙になりがちでスケールに欠けるという欠点も存在する。
中高生の話の規模はおおよそ学校と家の話に限られる。何故なら彼らが所属しているのはおおよそその二つに限られるからだ。
さまざまな学園もので部活や生徒会を出しまくるのは、それらになんとか色をつけようと組織の中に組織を作って見せているからである。
しかし言い換えれば、学校という縛りがある限りこの規模からは逃れられない。
そして最大の問題点は、敵が存在するのは学外であるということだ。
敵の出没範囲が例えば日本全土、もしくは一都道府県に限られるとしても、その範囲は恐ろしく広い。
毎日学校に行って半日も授業で拘束される主人公が敵の出現を察知するのは非常に難しいし、よしんば察知できてもその場所に向かうのにどれだけ時間がかかるか分からない。
勿論、これを解決するために予知や予告状などで敵の位置をあらかじめ決めておくことは可能と言えば可能である。
しかしそれをしたところで今度は単位が足りなくなったり、悪くすると退学したり、部活や受験どころではなくなったりする。
そしてそれを解決するために敵の出現頻度を減らせば、ストーリーの緊張感が途切れてしまい、根本的に面白くなくなる。
とまあ、主人公が学生であるということはそれだけの縛りプレイであり、昔からヒーローがフリーターや探偵やフリーの記者などという不安定で自由な職業に就いているのにはしっかりとした理由が存在するのだ。
付け足して言えば子供の何も気にせずに出来るような稚拙な色恋よりも、責任など様々な枷のある大人のラブロマンスの方が面白いということもあるが。
以上がなろうの変身ヒーローものがつまらない理由である。
書いていて三つ目が長くなってしまったのが意外であったが、学生主人公というのはそれだけ無理のある設定なのだと言うことなのだろうなと再確認した気分だ。
そも、大人をなめるな、という言葉もあるように、基本的に子供よりも知識と経験のある大人の方が優秀なのだ。
それでも子供を活躍させるのなら主人公をヨイショするか、周囲を落として持ち上げるしかなくなる。
もしくは主人公が知識で勝ることの出来る時代にタイムトラベルするとか……ああ、だから異世界なのか。
まあその異世界ものでも主人公より強いキャラがポンポン出てくる話の方が基本的に面白いのであるが。
閑話休題。
とかくヒーローとして戦うと言うことは辛く苦しいことである。
様々なものを犠牲にして、悲しみを乗り越えて勝利するからこそ、そこにドラマが生まれるのだ。
チャカポコと音を鳴らしてキラキラ光ってスタイリッシュに敵を倒すのが彼らの格好いいところではない。
歯を食いしばって戦い続けるからこそ、彼らは偉大で格好いいのだ。