『8』空想から現実へ…
「う、う~ん……」
クレハが意識を取り戻す。
目を開くと、何やら人が一人入るほどの大きさの透明の筒の中にいた。
筒越しに見えるのは奇妙な機械とクレハが入っている透明の筒が沢山並んであったが、中は誰も入っていない。
周囲は広く、天井も2階分の高さがある。
右奥は両サイドで開く扉があり、反対側の殆どは暗い色のガラスで覆われており、外の様子がわかるほど見やすい。
その場にいるのはクレハを気絶させた先程の3人の黒服の男達であった。
そしてその一人は黒いシルクハットを被っていた。
クレハは先程黒服の男に腹を打たれ、気絶するまでの事を思い出し、意識が覚醒する。
「な、何ここ!?それにこれは…!」
突然の状況に混乱しつつ、筒の周りをペタペタと触るクレハ。
そんな光景に黒いシルクハットを被った黒服の男が口を開く。
「お目覚めのようだな、阪野くれは君。君が今いるのはカプセルの中だ」
「カプセル…?」
話をしてきたシルクハットの男にクレハは少し落ち着き、困った表情で聞く。
「貴方達は誰なの!?私をさらって何をする気なの!?」
「知りたければこっちを見るんだな。丁度始まる頃だ」
「始まる……?」
クレハはシルクハットの男が指した方へ顔を向けると、そこには1台だけのクレハと同じカプセルがあった。
その中に閉じ込められたのは、一般の男性が焦りながら筒を叩いていた。
「出してくれよ!俺はまだ死にたくなんかないんだよ!」
「何か勘違いしてるようだな…お前はこれから…生まれ変わるんだからな」
そう言ってシルクハットの男は端末を操作する。
するとカプセルが起動し始め、中にいる一般の男性の背中に数本のコードのようなものが刺さり、カプセルの中から白い煙がたちこもり、男性の体を包み隠していく。
「うわああああ!!?あつういいぃっ!!?たすけてぇ…くれぇ…!!?」
「何!?」
突然中の男性が苦しむように叫びだした。
煙のせいでシルエットとなった男性の姿は、次第に体から両手両足へとブクブクと膨張していき、まるで人ならざるものへとその形を変えていった。
「あ……ああっ……!」
その光景を見るクレハは驚愕していた。
そして30秒後、機械が止まり…カプセルのケースが下から外れるように上がった。
たちこもった煙が晴れると、そこには紫色の肌をした大きな男だった。
体全体の体格は大きくなり、顔の輪郭も変わっており、目は宝石のように赤く、体のあちこちには白いトゲが飛び出し、頭には2本の角が生えるなど、かつて人間だった頃の面影は無かった。
唯一あるとすれば、裂けてボロボロに破けて残った男性が来ていた衣服の切れ端位である。
その変わり果てた男性の姿にクレハは怯えていた。
「これは…まあまあだな」
「あの人に……何をしたの…!?」
変わり果てた男の姿にシルクハットの男が関心する所、クレハが少し怯えながらも問いかける。
「彼は生まれ変わったのだよ。怪人として」
「怪人…?」
怪人という単語を聞いたクレハに対し、もう一人の黒服の男が説明した。
「この装置は体内にフォトニウムを流し込まれた人間を変異させる代物でな、変異した人間は我らの方で怪人と呼んでいる。最も、怪人になると基本、元の人格と記憶は消えてしまうがな…」
「消えるって……!?」
「更に怪人にするには適合したDNAでなくてはならないから誰でもいいわけじゃない…でないと…」
黒服の男がそういい続けると、突然オーガが苦しみだした。
「!?」
頭を抱えつつわめき続けるオーガは、やがて糸が切れたかのように倒れた。
「このようにくたばってしまうわけだ」
「!!?」
生き絶えたオーガはそのまま光の粒子となって消滅していった。
その光景にクレハは自身がどうなるか察し、恐怖を覚えた。
「いやぁ………!」
「怖いだろうな…だが安心しろ、阪野くれは…お前は適合者だ。このような事態にはならない」
「そういう問題じゃないよ!どうしてこんな酷いことを…!」
涙目になりながらもガラスを叩き、問い詰めるクレハ。
「我々には…戦力が必要なのだよ。セキュリティアを圧倒するためのな」
「セキュリティアを…?」
「元々我らはプロジェクトFの一員だった。我らはフォトニウムから発するエネルギーを何かに使えないかと考えた。そこで浮かんだのが、フォトニウムを動力とした…強力な兵器だ。今までのとは比べ物にならない物のな…だが政府、セキュリティアは兵器の利用を承認しなかった。それどころか、我らをプロジェクトから外したのだ!」
そう言って黒服の男は左手に力を入れつつ、話を続ける。
「許せなかった…我らを追放した奴等を…だから我らは誓った。デバックという組織で我らの素晴らしさを、この島中に知らしめようと!」
黒服の男の話に対し、クレハは怒りを覚え始めた。
「おかしいよそんなの……その為なら…何故お父さんとお母さんを撃ったの!?やり方が違うよ!」
クレハの反論にムッと来たのか黒服の男は言い返す。
「黙れ。犠牲はつきものなのだ。貴様にはわかるまい」
「そんなの分かりたくないよ!」
「貴様ぁ…!!」
「もうよせ」
怒りの限界に達する黒服の男をシルクハットの男が止めに入った。
「そういうことだ。今日中には君も怪人になってもらう。なってしまえば自身の人格は変異し、俺達の仲間になるのだからな。きっと君の親二人も今頃、怪人以上の化け物になってるだろう」
「…そんな……!?」
絶望的状況に力が抜けたのか、クレハは膝を地面に付けてしまう。
「安心しろ。怪人になれば恐怖も…悲しみも味わうことも無くなる。お前もすぐに親の後を追わせ……!?」
再び装置に触れようとするシルクハットの男だが、突然爆音が響いた。
「どうした!」
「「て、敵です!セキュリティアの者が攻めてきました!」」
部屋のスピーカーから別の男性の声が響いた。
クレハも先程の爆音に気付き、驚いていた。
「何!?ステルスフィールドは可動してるのか?」
シルクハットの男は無線を取る。
「「装置を全て破壊されてこの場所も丸見えですです。現在この基地に侵入してきてます!」」
「数は!?」
「「地下に一人います。ですが地下に続く通路を塞がれて…!」」
「バスーカで壊せ。俺達もすぐに向かう」
そう言った後、シルクハットの男は無線を切り、カプセルに入ったクレハの元へ近づく。
「お楽しみはしばらくお預けだ…!」
と言って、シルクハットの男は部下の黒服の男達を連れて部屋から出ていった。
「あれが怪人…」
「えっ?」
聞き覚えのある声がクレハの耳に入る。
「近くにいるんでしょ、クレハ」
「スズナちゃん、ここにいるの?」
スズナの声に気付くクレハ。
視界にはいないが、声がした方から隣にいることを理解した。
服はクレハと同様学生服である。
「ええ。家に帰る途中、デバックの連中に捕まって今はこのカプセルの中よ。そっちは?」
「うん、家の前で捕まって…」
「クレハの父さんと母さんも…」
「……もう……」
「っ!?」
クレハの親もさっきの男性のように化け物にされた。
それよりも、自分達が怪人にされる衝撃が二人には大きかった。
「私達、このまま怪人になってしまうの…?」
「このカプセルに閉じ込められてる以上…私達には何も出来ないわ。残念だけど……」
クレハが諦めかけた。
と、そこへ…
「諦めるのはまだ早いですわ!」
「え?」
「その声…!」
クレハとスズナは聞き覚えのある声を聞いた。
すると、クレハ達がいるカプセルの元へクレハと同じ学生服を着た金髪の少女がやって来た。
ルカだった。
「二人とも無事で何よりですわね」
「ルカちゃん!」
「どうしてここに?」
「ワタクシもあの黒服の男達…デバックの連中に捕まってしまいましたが、隙を狙って気絶させてきましたわ」
「ルカちゃん戦えるの?」
「護身術は学んでいましたが、所詮遊び程度ですわ。数の暴力には勝てませんわ。今は何者かの侵入で警備が手薄になってますけど、このまま逃げてもすぐに捕まりますわ」
戦うのは無謀。逃げるのも不可。と、ルカは冷静に言う。
「じゃあどうするの!?」
と、スズナはルカに問う。
するとルカは目を閉じ、間を開けたところで目を開き、二人に告げる。
「ワタクシが、怪人になって戦う」
ルカの告げた答えにクレハとスズナは驚愕した。
「ええーっ!!?」
「と言っても、化け物っぽくしませんわ。この機械は、変化した姿を自分で作ることができるようですから。上手くいけば怪人とは違うものに…」
「ちょっとそれ大丈夫なの!?」
「先程の黒服の男の操作を見て覚えましたわ。パネル操作するだけの簡単な仕事ですわね」
と言って機械の端末に立つルカ。
「大丈夫なの?もし化け物みたいになったら…」
「そうだよ。ルカちゃんが化け物になるなんて嫌だよ!」
「姿はどうであれ、今はこれしか方法がありませんわ。二人を助けるためにも、ワタクシは覚悟を決めますわ」
決心の固いルカ…
友達を守りたいという思いはルカの表情を見てしっかりと二人に伝わっていた。
そのルカの姿を見てクレハは遂に決心をした。
「ルカちゃん、私も怪人にして」
クレハが自身を怪人にしてとルカに頼んだ。
「く、クレハ!?」
「ルカちゃんだけに大変な思いはさせたくないよ。それに、あの光景を見て黙ってるなんて出来ない…私もやるよ。覚悟…決めたから…!」
クレハの決心に迷いはなかった。
スズナもこれに同意し、決心をした
「ここで私がやらなかったらきっと後悔するわ。私もお願い」
「スズナちゃん…!」
「友達として、放っておけるわけないでしょ?」
クレハ、スズナも怪人になることを決意した。
それに対しルカは…
「もう二度と人間に戻れないかもしれないのですわよ。それでもよろしいのですか?」
「大丈夫。もう決めたから」
「ルカ、私達の命…預けるわ」
二人の決心に納得したルカは…
「わかりましたわ。ならすぐに始めましょう。男達が来る前に片付けませんと…!」
そう言ってルカは端末を操作した。
「簡単なインターフェース…これなら誰でも使える訳ですわね」
ルカが操作している端末は、簡単な項目をさわって操作するタッチスクリーン式であった。
最初の選択で個別、一括という項目が現れた。
ルカは迷わず個別のパネルを押して選んだ。
人数は3人に設定した。
次はフォトニウムの使用について、移植、注入、照射のパネルが現れた。
ルカは少し迷ったが、先程の男性の変貌を見て、照射を選択した。
最後に、どの姿にするかを選ぶ選択肢が表示された。
各パネルには2本足で立つ人に近い狼から人の原形を留めていないとかげのようなものまで表示されている。
先程男性がなってしまった大男まで載っていた。
しかしルカはある項目に目をつけた。
それは、3Dモデルに似せるという項目であった。
それを目にしたルカは何かスイッチが入ったのか、目を光らせ、少し笑いだした。
「る、ルカちゃん?」
「ついに…ついにこの時が来ましたわ…!」
「え、何?」
「何か嫌な予感がするんだけど…」
突然様子がおかしくなったルカの姿にクレハとスズナは不安になる。
変わってルカはテンションが上がり、端末を器用な早さでカタカタと操作する。
「手の動きが早くなってる!?」
「ほんとに嫌な予感がしてきた!」
端末の画面は最後に「以下の設定で実行しますか?」と、これまで設定した内容が表示され、実行と再設定のパネルが現れた。
ルカは迷わず実行を押した。
すると、「10秒後に起動します。カプセルに入ってください」というメッセージが表示された。
「これでいいはずですわ。後は入るだけ。ふっふっふっ……」
そう言って喜ぶルカは開いたカプセルの中に入る。
「ルカちゃん笑ってたけど…私達をどんな風になるんだろ……」
「私…多分わかったかも…」
クレハとスズナがそう思いつつ、ルカが入ったカプセルが閉まり、ついにカプセルは動き出した。
「始まった……あれ?」
クレハは違和感を感じた。
なんと背中に刺すコードが出ていなかった。
そしてそのまま白い煙に包まれた。
(なんだろ…なんか体全体がポカポカしてきた。まるでお日様に当てられて…いや、低温の岩盤風呂に入ってる気分…血流良好、腰通改善…ってなに考えてるの私!?)
クレハがそんな例えを考えつつ、ノリツッコミをする内に30秒後…カプセルが開いた。
(開いた…もう私…怪人になったのかな…?)
そう考えるクレハが立ち上がると、まず自分の視界の周りを見る。
特に問題はない。
次に両手を見る。
「?」
クレハの両手は人間のままだったが、何故か見慣れない白い手袋を着けていた。
(私…手袋着けてたかな?というか、体に違和感が…)
と、考えるところ、クレハの視界に長さ3メートルの鏡が入り、クレハは鏡の近くまで来て鏡に映る自身の姿を見た。
「……え!?」
クレハは驚愕した。
鏡に映るクレハは学生服ではなく、桃色と白のドレスと白いミニスカート。長い袖とハイソックスをまとった姿だった。
しかも髪の色は桃色に変わっていた。
そんなクレハのその姿は怪人と呼ぶより…
魔法少女と呼ぶべき姿だった…!
「なにこれーー!!??」
驚愕したクレハの声が部屋中に響いた。
ここからは何もなければあとがきを書かないと思います。ネタが思い付かないので…




