「38」魔人&巨鳥 2
二体のフォトニックギアと戦う魔法少女3人。
しかしダメージは通らず、こちらの体力が消耗し、劣勢を強いられた。
「相当タフだな、魔法少女達は…」
「ですがこのまま粘り続ければいずれ彼らの力も消耗するでしょう。その時こそチャンスです」
「ああ、だが油断するな。敵が何かを仕掛ける前に確実に叩くぞ」
赤城、加賀は再びクレハ達に攻撃を仕掛けるためにエネルギー弾と拡散ビームを発射する。
流石に躱せないので今度はルカが前に立ち、魔法を使う。
「プラズマシールド!!」
ルカが新たな魔法の名前を唱え、前方に電気をまとった黄色い円形のバリアが貼られた。
ルカ自身が隠れるほどの大きいバリアな為、クレハ、スズナもルカの後ろに回った。
無数のエネルギー弾とビームが直撃するも、ほとんどをバリアが受け止めている。
「ルカちゃん凄い!」
「敵の攻撃は何とか防げるわね」
「いえ、流石にこの魔法も魔力を消費しますから、何度も使ってたら今度は防ぎきれませんわ」
ルカの言うとおり、プラズマシールドは魔力を消費する防御魔法。
アルケミストの光学シールドより強力だが、魔力が少なくなると性能も落ちる魔法の特性上、長時間の展開はいずれ破られる危険も伴う。
なんとか活路を作りたい所だが、相手の攻撃が激しくて、中々そのチャンスが来ない。
アンドレアはイフリート、ガルーダに向けて電脳術による光弾を発射したか、全て弾かれてしまい、しかも赤城、加賀に目を向けなかった。
完全にリオとアンドレアは蚊帳の外状態である。
「くそっ、何か他に方法は…」
アンドレアは下唇を噛みつつ、3人の戦いを見てることしか出来ずにいた。
助けに行きたいが、アルケミストの電脳術では赤城、加賀のフォトニックギアに傷1つ付けることが出来ない。
参加したところで足を引っ張ってしまうのが目に見えている。
今は、ただ指をくわえて待つしか無いのだ。
と、思ってた矢先…
なんとリオが左手の平に込めた光の帯を放ち、ガルーダの右翼に巻き付けていたのだ。
「な、なんだ!?」
魔法少女達に気を取られて、リオの事を忘れていた加賀は突然のリオの行動に気付くのが遅れた。
「リオ君!?」
「うおおおおーっ!!!」
気合いと共にリオはガルーダの元へ走り出し、股下をスライディングですり抜けた。
「何!?」
そして後ろに回り込んだリオはそのままガルーダの左翼に光の帯を巻き付け、今度はガルーダの両足をまとめて巻き付けていく。
「し、しまった!翼が!?」
ガルーダは脱出使用とするが、両翼と両足がガッチリ縛られてるため動けない上に飛ぶことも出来ない。
「フォトンワイヤー…!攻撃が通らなくても妨害なら可能って事か…」
フォトンワイヤー
フォトンエナジーで形成した光の帯を作る電脳術の簡単な技の一つ。
森の上や天井などにかけて跳ぶ移動用の他に、相手を巻き付ける拘束や捕獲としても使える。
アンドレアはこの技をよく使う事から偵察班のリーダーを務めていた頃もあった。
リオがフォトンワイヤーでガルーダを拘束出来た事で、自身も力になれることを確信した。
攻撃は出来なくても、妨害ならいけると。
「みんな!青い機体は僕が抑えるから赤い機体を倒して!」
ガルーダの動きを封じたリオがクレハ達に呼び掛ける。
ガルーダは、拡散ビームを放った後に僅かに動きが止まっていた。
それをリオは見逃していなかったのだ。
リオは2体の連携を崩すために、拡散ビームを放った後に動けないガルーダの動きを止めるよう、電脳術で作り出した光の帯で両翼と両足を縛り上げたのだ。
ルカはそれらを理解し、スズナにある一手を伝えた。
「雪月花、今の内に大技の準備を!」
「え、何故私!?」
「あの機体の装甲を抜くには貴女の魔法が適してますわ!急いで!」
「わ、分かったわ!」
「フローリアン、2人であの機体を足止めしますわよ!」
「分かった!」
ルカの指示に合わせ、スズナは大技の準備に取りかかる。
先ほど放とうとしたアイスニードルよりも強力な魔法の準備である。
スズナの周囲に青いオーラが浮遊し、更には記号のような青く光る文字が無数に現れ、スズナを中心に回っていた。
(ぶっつけ本番だけど、この機を逃すわけにはいかない…!)
目を瞑りつつ、スズナは魔法の発動に集中する。
左手を掲げ、その上に氷が生成され、何かの形へと作られていく。
「させないと言って…」
「それはこちらの台詞ですわよ!」
「雪月花には手を出させない!」
イフリートがスズナの妨害に向かうが、クレハとルカがそれぞれの魔法…ファイアボール、サンダーボルトを放ち、イフリートの動きを止めに入る。
ファイアボールはイフリートの胴体に当たり、爆発と共にイフリートの動きが止まり、サンダーボルトは地面に当てることで煙を起こし、視界を奪う。
ダメージは受けたが、大きな痛手には至らない。
流石のイフリートも、仲間がいなければ連携が取れなくなる為、魔法少女2人でも対処は難しい。
「加賀、そっちはどうなんだ!」
「無理です!翼と両足を縛られて動けません!」
「ちっ、小癪な真似を…!」
このまま相手が何かを仕掛ける前に、赤城は再びイフリートを前進させる。
「止めてみせる!」
クレハが再び接近するイフリートに向かってファイアボールを放つ。
しかしイフリートは横に向きを変えて曲がり、クレハのファイアボールを躱した。
それどころか、イフリートはスズナがいる場所から離れた方向へと向かった。
「え!?」
「悪いが、お前達は後回しだ!」
と、足のブースターを吹かしてクレハから遠ざかる。
しかも今イフリートが向かってる先には、ガルーダを拘束しているリオがいる。
赤城の狙いはガルーダの拘束を解くためのようである。
「しまった!狙いはリオ君の方ですわ!」
「リオ君逃げてー!!」
クレハは大声でリオに呼び掛けるが、聞こえていないのか反応が無い。
急いで向かうクレハとルカだが、ブースターでスピードを上げたイフリートには追いつけない。
このままガルーダの拘束が解かれたら、2機は再び連携を取り、こちらが窮地に立たされるだろう。
徐々にリオとの距離を詰めていくイフリート。
しかし、地面から無数の壁が現れ、イフリートの進行を阻止してきた。
イフリートの大きさでは通るのは無理である。
「この空間は、こちらの錬成でも干渉出来そうだな」
なんとアンドレアが電脳術の錬成を使って、イフリートの進行先に壁をいくつか作り出していた。
イフリートがリオを狙うことを想定し、事前に準備していたのだ。
「攻撃が通らなくても、妨害ぐらいならどうかな?YEAH!」
DJのノリで赤城を挑発するアンドレア。
「なめるなよ!」
イフリートの胴体が上下に開き、何かの大きな発射口があらわになった。
「!?」
そしてそこから大きめの赤いビームを左からなぎ払うように放った。
その太さは約50センチ。全ての壁を破壊した。
「まだ武器があったのか…なんて威力だ…!」
見た限り、イフリートが持つ最大の武器と言えるだろう。
アンドレアは大きく横に飛び、ビームを躱していた。
壊れた壁の先にはガルーダを捉えているリオの姿が…
「見つけた!」
リオの姿を捉え、赤城はイフリートのブースターを更に吹かせ、加速する。
「突破された…マズい!」
再び妨害したいが、創造は発動に30秒も必要とし、再使用に一分掛かるデメリットも兼ね備えている。
他の電脳術が通用しない以上、アンドレアにはこれ以上の妨害は出来ない。
リオとの距離もあとわずか。
イフリートの右手のアームがリオの方へと伸ばそうとした次の瞬間…
「貰ったぁ!!」
「先輩!下がって下さい!これは罠です!!」
「!?」
「これを待ってたんだ!」
加賀が必死に後退するよう赤城に伝えるが既に遅く、リオの右手には直径1メートルの炎の球が生成されていた。
「こ、これは!?」
「いっけえええええーーーー!!!」
リオは巨大な炎の球を2メートル先まで迫ったイフリートに向けて投げた。
この距離からの攻撃に赤城は対応が遅れ、回避が間に合わず、炎の球はイフリートの胴体に直撃し、爆発に巻き込まれる。
「先輩!!」
イフリートが爆発に巻き込まれたその光景を見て、加賀が呼び掛ける。
リオも炎の球による爆風を見て警戒する。
一方、リオの放った炎の球にアンドレアは驚く。
「炎の球……!電脳術では不可能だった炎の生成をあの子が…!」
一方、爆風は晴れ、姿を現したイフリートの胴体の装甲は炎の球の直撃により溶けており、あらわになった中の砲身まで溶けて、プラズマを起こしていた。
これでは先程の赤いビームは撃てないだろう。
「馬鹿な、電脳術さえも耐えられたイフリートの装甲が…!?」
信じられないと思ってる顔をする赤城だが、もう一人の脅威には気付いていない。
「氷を貫け!アイシクルランス!!」
スズナが魔法の名前を叫ぶと、スズナの頭上に出来上がった約2メートルの大きな長いつらら…槍が発射され、イフリートの後ろに目掛けて加速し飛んでいく。
「な!?」
これに赤城は反応が遅れ、巨大な氷の槍はイフリートの後ろのバックパックに当たり、爆発を起こした。
しかしそこまで大きな爆発は起こらなかったが、バックパックはボロボロに大破した。
空いた穴はとても大きく、その威力が見て分かる位であった。
「やった!」
「初めてにしてはよく出来ましたわ」
「く、くそ…」
クレハとルカが喜ぶ中、悔しがる赤城。
「ふう…これで先程のスピードは出せないわね」
胴体はリオの炎の球で破損し、後ろはスズナの氷の槍でボロボロになり、更には破損箇所にスパークが起きてるせいなのか、イフリートの動きが鈍っていた。
更に突然空間が少しずつはけて落ちていく。
「ちっ、電脳結界展開装置がやられた…」
イフリートが大きなダメージを負ったせいなのか、空間は剝げ落ち、その外は元の現実世界の風景が見えていた。
「景色が…」
「元の場所に戻っていくわね…」
「相手はもうボロボロですし」
「これだけボロボロなら電脳術も通るだろうな」
「ぬう…」
赤城達が有利な状況がリオの一手により逆転され、窮地に立たれてしまったのは予想外であった。
一方イフリートは電脳術が通る程まで防御力が低下し、バックパックが壊れた事で機動性が落ちてる。
次に大技を撃ち込められたら負けは必至。
しかし…敵はイフリートだけで無い。
「やってくれたな…アルケミスト!」
なんと加賀のガルーダが、リオの光の帯から抜けだし、至近距離から拡散ビームを放とうとしていた。
リオがイフリートに撃った炎の球の生成を優先した事で、ガルーダを拘束していたフォトンワイヤーの強度が弱まり、簡単に引き千切られてしまったのだ。
「!?」
リオも突然のガルーダの攻撃に動揺し、動けない。
このままでは拡散ビームをモロに受けるだろう。
しかしこの子はそれを許さなかった。
「やあああああーーーー!!!!」
気合いの叫びと共にクレハが弾丸のような速さでガルーダの近くまで飛んできた。
そしてクレハが右手に握ってる剣には炎をまとっていた。
「い、いつの間に!!?」
「リオ君には攻撃させない!」
クレハは炎をまとった剣をガルーダの頭に目掛けて振り下ろした。
すると、ガルーダの頭が炎の剣により左右に斬り分かれた。
その後クレハは剣を消し、リオを担いで後ろへ飛んだ。
切り裂かれたガルーダの頭部は爆発したが、まだ動ける状態だった。
「頭部がやられた!?」
「魔法剣!?」
加賀は先程クレハの炎の剣によってキメラ並みの防御力を持つガルーダの装甲を切り落とした事に驚く。
対しルカはクレハの剣に炎が纏っていたことに驚いた。
リオを担いだクレハはルカの元へ着地した。
後からアンドレア、スズナも合流する。
「怪我してない?」
「ううん大丈夫。ありがとう」
助けたリオをクレハは気を遣い、リオは気遣ったクレハにお礼を言う。
気が付けば空間は全て剥がれ落ち、すっかり周りの景色は元に戻り、今は商店街の外…最初にやって来た門とは反対の門の近くの円形状の大広場にいた。
中々の広さで、何かのイベントや祭りなどに使われそうな所である。
電脳空間内で先程の広いフィールドで戦っていたのはこの辺りだったのかとみんなは思った。
「勝負ありだな」
アンドレアが勝負が付いた事を赤城、加賀に言う。




