「19」いざ、商店街へ!
「さて、話が終わった所でそろそろお腹が空いてるでしょ?カク、外食に連れてってあげて」
「チサトはどうする?」
「これから本部に報告しないといけないから遅れてくるわ」
「分かった。いつもの店でいいか?」
「ええ。後で来るから先に食べてて」
と、チサトはカラーコーン型の端末のキーボードを操作し、通信を始める。
カクはスーツを脱ぐために電話ボックスぐらいの大きさのコンテナの中に入った。
と、ここでスズナがあることに気付く。
「ねぇ…今思えば私達、魔法少女の格好をしてるよね」
と、スズナの言葉にクレハとルカはハッと気が付く。
確かにクレハ、スズナ、ルカの3人は魔法少女の服を着た姿になっている。
流石に町中をこの格好で歩いたら目立ってしまうだろう。
「ルカちゃん、これ元に戻らないの?」
「そうですわね…とりあえず、元の姿に戻るよう念じてみたらどうです?」
「あのね…」
「仕方ありませんわ。ホムンクルスに関しては全くの白紙ですから…それに武器や魔法がイメージで出せたのですから元の姿に戻れるのも難しくない筈ですわ。つまり、何事もチャレンジですわ!」
ルカの推測通り、確かに武器や魔法はイメージで生み出された物で、クレハの飛行もイメージで成功している。
だとすれば、元の姿に戻れるのもイメージで可能なはず。
ルカは試しに目を瞑り、念じてみた。
すると、光が弾けるかのようにルカの姿は制服の姿へと元に戻った。
「うわぁ…」
「うん。簡単ですわ」
両手を腰に付け、ルカは余裕な表情を見せた。
「ルカちゃん凄い」
「ホムンクルスになる前の格好ね。なら私も…」
ルカに続いてスズナも元の姿に戻るよう念じてみた。
すると、こちらも元の制服姿になった。
髪の色も青から元の黒に戻っていた。
そしてクレハも念じてみた。
すると、魔法少女の服から元の制服に戻り、髪の色も桃色から栗色に戻っていた。
「元に戻った…!」
「ふう…一時はどうなるかと思ったわ」
元の姿に戻れて一安心したクレハとスズナ。
「それが元の姿なんだね。というか、その制服…磯風中の?」
元の姿に戻ったクレハの制服に目が入り、リオは覚えがあった。
「ええ。ワタクシ達が通う中学ですわ。ご存じですの?」
「兄さんが通ってたからその制服に覚えがあったんだ」
「そうなんだ…リオ君はどこの学校なの?」
「星曜学園に入ろうと思ってるんだ」
「星曜学園?」
「この日野森町の中央区に建てられた大きな学園でね、僕もそこに入学する予定なんだ…そこしか学校無いんだけどね」
日野森町には、学校と言える施設は星曜学園のみで、小学校、中学校、高等学校等は全て星曜学園に統合されている。
「話がズレましたわね。今後また敵が現れた時に戦う際、魔法少女になると念じれば先程の姿になれますわ」
「確かに」
「最後に言っておきますが、くれぐれもワタクシ達がホムンクルス…魔法少女だって事をセキュリティア以外の人間に知られない。混乱を招きますからね。リオ君もお願いしますわ」
「うん。分かったよ」
「それが賢明ね」
「絶対にバラさないよ」
4人は秘密をバラさないよう決意した。
そして丁度スーツを脱ぎ、ジャケットを着たカクがやって来た。
「待たせた。それじゃあ行こうか…と、それが君達の本来の姿なんだな」
「あの、カクさん、私達の事は…」
「お前達の事はバラさないから安心してくれ」
「ありがとうございます」
クレハ達の事をバラさないと言ったカクに礼を言うクレハ。
「カクさん、外食と言いましたけど、何処に行くんですの?」
「それは見てのお楽しみだ。変わっているがオススメの店だ。味も格別だ」
「兄さんオススメの店?」
「何だろう…?」
クレハ、リオがどんな店なのか少々気になってしまう。
というわけで、チサトを残し、カクはリオ、クレハ、スズナ、ルカを連れて公園を出た。
ドラゴンが現れた時の騒ぎで公園の外回りには警備隊達が集まっていた。
もちろんセキュリティアから派遣された者達である。
隊員達に頭を下げ、一行は公園から離れて約十分…何処かの商店街のゲート前にやって来た。
天井には複数のプロジェクターによって映し出された幻想的な映像奥まで続いていた。
「綺麗……」
「ここって商店街?」
「ああ。日野森商店街。この先にオススメの店がある」
「騒ぎからそんなに経ってないのに賑やか…現場から離れてるから?」
「そうなりますわね」
ドラゴンが現れた時の騒ぎでほとんどの人達は建物の中へ隠ったが、この商店街は現場から結構離れてる為、まだ人がいて賑やかでいるとスズナが言う。
カクと一緒に一同は商店街の中へ入っていった。
周りには八百屋、肉屋、本屋、服屋と、ありとあらゆる店があった。
しかし、4人はここで違和感を感じた…
いや、違和感を感じたのは2人だけだった。
「へい、らっしゃい!」
紺色のエプロンを付けた下半身ズボンで上半身裸のムキムキマッチョなボウズの男がやって来た客に大根を売っている。
「今日も新鮮なのが揃ってるよ!」
青いビニール製のエプロンを着た海パン一丁のムキムキマッチョなボウズの男が発泡スチロールの箱に氷を敷き詰めて、新鮮な鯛、鯖、鯵を並べていた。
「奥さん、今日はお祝いか何か?」
「ええ。息子の誕生日だから大きめのお願いね」
ケーキ屋では、奥様と対等に話してる白エプロンを付けた半裸のマッチョな男がいた。
頭に頭巾を付けているが、恐らくボウズだろう。
「コロッケ5つ下さい」
「コロッケ5つですね!少々お待ち!」
惣菜屋では、頼まれたコロッケを揚げている以下略…
「何ですの!?ここは~!!?」
異質な光景に我慢できず、つい叫んでしまったルカ。
周りの人も、ルカの叫びに驚く。
「る、ルカちゃん!?」
「どうしたのよ」
「何か忘れ物でも?」
クレハ、スズナ、リオがルカに気をかける。
「貴女達はなんで平気ですの!?この異質な光景!店員全てガチムチのボディビルダーじゃありませんの!!」
と、落ち着きを失い、ツッコむルカ。
「この店の人も!」
服屋にいる半裸のボディビルダー。
胸の筋肉を揺らして自身をアピールしている。
「この店の人も!」
ヘヤーサロンで働いているボディビルダー。
同じく胸の筋肉を揺らしてる。
「この店の人も!!」
電化製品店で客に最新の薄型テレビを進める以下略。
「この商店街の店員全てボディビルダーしかいませんわよ!!どう見たって変じゃありませんの!!」
このルカの発言にクレハ達は…
「そうかな?」
「普通だと思うけど…」
「普通の基準がおかしいですわよ!!そもそも他の人達も何平然としてますの!?」
クレハとリオの返答にルカは指摘する。
「ルカの言うことも分かるけど、騒ぐのはよくないわ」
「そ、そうでしたわ…ワタクシとしたことが、不覚でしたわ」
スズナの気遣いで落ち着いたルカは騒いでしまったことに恥ずかしがっていた。
「それにしてもルカがツッコミに入るなんて珍しいね」
ルカの意外な一面に気になったスズナ。
「確かにこの光景でその反応をするのも無理ない。この商店街の8割の店にはボディビルダーが担当している」
「だから何故この商店街にはボディビルダーが沢山いますの!?」
カクの説明にツッコむルカ。
と、ここでカクがルカの疑問に答えた。
「この商店街は、ここに住むボディビルダー達によって作り上げたんだ」
「えっ?」
カクが喋ったこの商店街の事実にルカは驚く。
そしてクレハ、スズナ、リオも驚く。
「俺がアルケミストになったばかりの頃はこの商店街もここまで大きく立派な作りじゃなかった…屋根も最初から無かったからな。それでも今と変わらないぐらい賑やかだった。だがそんな商店街に突如クリーチャーが現れた。8メートルもある岩の人形だった。商店街を守るために俺を含むアルケミストのメンバーでそのクリーチャーを相手にした。だが技術や経験が足りなかった俺達はそのクリーチャーに苦戦を強いられた。結果、倒すのに時間が掛かってしまい、そのクリーチャーによって商店街のほとんどの建物が半壊、全壊してしまい、防衛としては初の失敗だった…その後俺達は町の修復作業に取りかかろうとしたところ、代わりに引き受けてくれたのが、今この商店街にいるボディビルダー達だ」
「「「ええっ!?」」」
「それでこのクオリティですの!?」
「ボディビルダー達の中に機械メーカーの者がいたからな」
リオ、クレハ、スズナが驚く中、ルカはボディビルダー達が修復作業した商店街のクオリティの高さに驚いた。
「更には活性化の為に自ら様々な店を開いた。お陰でここは大きく発展し、今の商店街が出来たんだ。ボディビルダー達が沢山いるのはそういうことだ」
「そうだったんですか…」
「因みに50人も住み着いている」
「多すぎですわよ!」
と、歩いてる内にクレハがとある自動販売機に目が入った。
全て暖かいのボタンしかない上に、カンのパッケージには右手に持った味噌汁の入ったお椀を前に出した笑顔のボディビルダーが載って、タイトルも、「熱い!男の味噌汁!」と表記されていた。
「ボディビルダーさん、味噌汁も出してるんですね」
「商品開発も力を入れてるらしいからな」
カクの話を聞き、ここのボディビルダーは何でもありなのかと再認識するルカ。
「まさにボディビルダーのなせる技だ」
「ボディビルダーの認識間違ってますわよ!?」
「ボディビルダーだからじゃないかな?」
「貴方のボディビルダーのイメージって何ですの!?」
「キレのあるツッコミね、ルカ」
カク、リオのボディビルダーの認識にルカがまたしてもツッコむ。
「ところで兄さん、オススメの店は?」
「もう着いた。ここだ」
と、カクが足を止めた。
止まった先の店は、檜の看板が入り口の上にかけた外見の飲食店で、名前は白兎と大きめの筆で書かれている。
「ラーメン屋?」
「みたいね…」
「ここで出してるのはただのラーメンじゃない。とりあえず入るぞ」
一同は白兎という名の店に入った。




