「16」戦いを終えて…
クレハの放った巨大な炎の塊を受け、火柱に包まれたドラゴン。
その炎にドラゴンの体は少しずつ焼かれていく、もだえ苦しんでいた。
そして、だんだんと動きが遅くなり、
ドラゴンは遂に力尽き、バタリと倒れた。
ドラゴンを覆っていた火柱も少しずつ小さくなっていき、消えていった。
火柱が晴れて、姿を現したドラゴンは既に黒焦げになっていた。
クレハは近づき、ドラゴンの元へ来た。
そして2つの頭を見つめる。
すると、突然ドラゴンの2つの頭が弱々しく動きだし、クレハの方に向けてきた。
「クレハ!」
危機感を感じ、クレハの元へ向かうリオ。
「「あり…が…と…う………」」
突然ドラゴンが最後の力でクレハにありがとうと喋りだし、そのまま倒れた。
「!?」
ドラゴンが喋った最後の言葉にクレハは気付いた。
最後に喋ったドラゴンの言葉に、クレハは自分の父と母が喋ってるようにその姿が重なって見えた。
「お父さん…お母さん…!」
クレハは泣き顔になり、力尽きたドラゴンのそばで地面に座り込むように体を崩す。
頭を下げ、泣きながら涙を流していた。
その姿を見て、リオは後ろを向き、クレハの泣く姿を見ないでいた。
ただ、クレハの泣く声が響き、リオの耳に伝わっていく。
(キメラ…あれから生み出してるのは悲劇しかない…あれを作ってるのがデバッグだとしたら…絶対に許してはいけない…これ以上僕やクレハのような悲劇を起こさないためにも…!)
リオは、アルケミストになって困ってる人達を助けたいという目標を目指してきたが、今回の件でデバッグを倒す目的が出来た。
それは自分やクレハのように大切な人を失わせない為に倒すという新たな決意がリオの中に出来上がった証である。
憎いからではない。
殺したいからではない。
それはリオの中の正義の意志が自身を動かしてるのだから。
やがて泣き終えたクレハは頬に残った涙を拭い、リオの側まで歩いてきた。
「ごめんね。心配かけちゃって…」
「いいよ。もう大丈夫なの?」
「うん、もう平気」
と、笑顔でリオに言うクレハ。
それを見て、リオも安心した。
そして、2人はもう動かなくなったドラゴンを再び見る。
「クレハ…僕はこのドラゴン以外のキメラを見たことある」
「え?」
「少し前に1度だけテレビのニュースでアルケミスト達が謎の生物と戦った映像が公開されたんだ。その姿はライオンと蛇と鷲を組み合わせた異形のものだった…これを見て」
リオはズボンのポケットからスマホを取り出して操作し、クレハに画面を見せた。
すると、体の上半身がライオンでその半分が鷹で、尻尾が蛇になっていた。
「これって…キメラ!?」
「うん。クリーチャーの時とは違って苦戦は強いられたけど、最終的にアルケミスト達はそのキメラを倒すことが出来たんだ」
「そのキメラも…」
「1人の人間が犠牲になっている…」
「…………」
一旦黙り込むクレハ。
キメラの存在を更に知ったクレハは、このままではいずれ新たなキメラが生まれる度に人間達がその犠牲者になるだろ。
そんなことを許してはならない。
クレハは決意を固め、リオに伝える。
「リオ君……実は私…!」
「子供2人がこんな所で何をやっている?」
「「!?」」
突如、男性の声が響いてきた。
一般人がここに来ることはあり得ない。
2人は声のする方、ドラゴンの体がある方向へ体を向けた。
そこには、全身黒い鱗の強化スーツを纏った人がいた。
顔はバイザー付きのフルフェイス型のヘルメットを付けてるため素顔が見えないが、声と体のスタイルからして男性であることが分かる。
「あ、怪しい人!?」
「誰が怪しい人だ!というか、変わった格好をしてる君の方が1番怪しいだろ!」
「う、確かに…」
黒いスーツの男から逆にツッコまれるクレハ。
こんな夜に魔法少女の服を着た子がいたら確かに怪しい。
他から見たらクレハはコスプレをした少女として変に見られるだろう。
一方リオは、黒いスーツの人に覚えがあった。
「あ…あ…アルケミスト!!」
「え!?」
クレハは少し驚く。
リオはテレビやネットでアルケミストの姿を見てるため、現れた黒い鱗のスーツの人が誰なのか知っていた。
「俺の声を忘れたか?リオ」
「え?まさかその声…!」
アルケミストと呼ばれた黒いスーツの男性がヘルメットを外すと、リオと同じ黒髪で髪型はリオより短い短髪の青年男性の素顔があらわになった。
「久しぶりだな。リオ」
「カク兄さん!」
「お前が日野森町に来ることは聞いたが、随分派手にやったな」
「ご、ごめんなさい…」
カクは公園の周りを見渡す。
ドラゴンによって殆どの電灯と木は倒れており、道のあちこちにはドラゴンの足跡もあった。
黒焦げになった木に残ってる火も少しずつ小さくなっていってる。
流石にマズかったのか、カクに謝るリオ。
「いいさ。そしてもう1人の君」
「は、はい!」
カクはクレハに声をかける。
「デバッグに囚われた被検体の1人だな?」
「ま、まあ…そう呼ばれました…はい」
そう言ってカクは再びドラゴンの方へ顔を向ける。
「君があのドラゴン…キメラを倒したんだな?」
「は、はい…最終的には…リオ君がいなかったら勝てなかったと思います」
「そうか…俺達でも苦戦してたあのキメラだ。それを2人で倒すなんてな…だが何より町への被害が少なくてよかった。ありがとう」
ドラゴンによる被害は公園の半分程度で、外の町に被害は無かった。
「ところで君、名前は?」
「クレハです。坂野くれは」
「俺は神埼隔。セキュリティア所属のアルケミストだ」
「よろしくお願いします。カクさん」
と、お礼を言いつつ頭を下げるクレハ。
「ではクレハ、1つお願いだが…もう一度火の玉を作れるか?」
カクがクレハに火の玉を見せてほしいと頼んできた。
「え?」
「僕も気になる。クレハの使う力は電脳術じゃないみたいだし」
「1度だけで構わない。この目で見てみたいんだ」
「わ、分かりました。少し離れて下さいね」
「ありがとう」
カクは下がり、クレハは右手を前に伸ばし、炎の塊を作り出した。
それを見たカクは…
「なるほど…これは間違いなく魔法だな」
「一応、そう呼んでますけど…」
「いや、その通りの意味だ」
「え?」
「セキュリティアは、君の持つその力を魔法と呼んでいる」
カクはクレハの作った火の玉が魔法だと語った。
「ええええーーーっ!!?」
「兄さん、魔法ってどういう…」
「おっと、リオにはまだ言ってなかったな。説明したいところだが、まずはその前に…」
「「その前に?」」
「茂みに隠れてるそこの2人、バレバレだぞ?」
と、草木で覆われた所に体を向け、声をかけた。
「………何故バレたの?」
「流石セキュリティアのアルケミストですわね」
草木から出てきたのは、着物風の青い魔法少女服を着た青髪のロングヘヤーの少女とお姫様風の黄色い魔法少女服の金髪のウェーブの少女だった。
「スズナちゃん、ルカちゃん!」
「この2人、クレハの友達?というかクレハに似た格好をしてる」
「うう、そこには触れないで。これでもまだ恥ずかしいのよ」
リオに格好の事を言われて恥ずかしがるスズナと呼ばれる青髪の少女。
「何恥ずかしがってますの?こういう格好こそが魔法少女のチャームポケットの1つでもありますのよ」
「せめてスカートの裾を長くして欲しかったわよ!」
「魔法少女はミニスカートが基本ですわよ!」
「知らないわよ!」
「あ、あははは…」
自信げに言うルカと呼ばれる金髪の少女と、恥ずかしがりながらルカに怒るスズナと呼ばれてる青髪の少女のコントじみた光景に苦笑いするクレハ。
と、ここでリオ達の上空から大型ヘリが降りてきた。
「ヘリ?」
「セキュリティアのスカイクラウドだ!」
「ええっ!?」
「あれがそうですの?」
大型ヘリ…スカイクラウドはリオ達から少し離れた所で着陸した。
「話はヘリの中で話そう。流石にその格好じゃ目立つだろう」
「た、確かに…」
「いや、黒いスーツを着てる方が逆に目立つ気が…」
「気にしてはいけませんわ」
と、カクは4人をヘリの中へ案内する。




