『10』魔法少女達の初戦闘
怪人に変える装置のカプセルから出たクレハの姿は、醜い化け物ではなく、変身ヒロインが着てそうな魔法少女の服装に変わっていた。
「こ、こ、これってルカちゃんが作ったゲームの魔法少女にそっくりだ…!」
そう。先程端末を操作していたルカが笑ったのはこの事だった。
未だに驚きを隠せなかったクレハ。
そんな中、足音が響いた。
「?」
クレハがその音に気付き、足音が響いた方へ体を向けた。
すると、その場に一人の少女が歩いてきた。
その子は、長袖の着物に似た青と白の服に青いミニスカートに白い手袋、青のラインが入った白のカチューシャを纏った青のロングヘヤーの少女だっあ。
その少女がスズナだとクレハは気付いた。
「スズナちゃん!」
「…………ワタシはスズナ…デバックの部下である」
「!?」
しかし、スズナの様子かおかしい…
明らかにスズナの顔は無表情のままだった。
そんなスズナはクレハに向かって歩き出した。
明らかにクレハに攻撃を仕掛けようとする気である。
「同じ適合者よ…我らに従え」
(ま、まさかこれって…ルカちゃんが教えたアニメにある洗脳か闇落ち!?)
ルカから進められたアニメを見たクレハはスズナが洗脳されてるとわかった。
スズナが一歩一歩クレハに近づく度にクレハも目線をスズナから変えないまま恐る恐る後ろへ下がっていく…
「デバックに従わない者は…排除する」
(どどど、どうしよう…魔法少女?になったのはともかく、どうやって戦えばいいの!?まさか素手…はないよね)
と、戦う術を考えているが、突然の事なのか中々思い付かない。
今やまさに、大ピンチの状況だと…
その時、何かに当たったときの金属音が響き、スズナは気を失いそのまま前屈みに倒れた。
「………え!?」
一瞬の光景にクレハは思考を停止してしまう。
と、そこへ…
「間一髪でしたわね」
倒れたスズナの後ろにいたのは、中世のお姫様が着てるような黄色のドレスと緑のミニスカート、白のハイソックスをまとった金髪のウェーブの少女。
ルカであった。
「ルカちゃん!」
「まさかスズナのカプセルに洗脳装置が付いていたなんて、ワタクシとしたことが不覚でしたわ」
「ああ、やっぱり…ってそのメイスで叩いたの!?」
ルカの右手に持った物に気付いたクレハ。
それは右手に持った棒の先端に大きめの黄色い宝石が付いたメイスだった。
「他に叩けるものがありませんでしたから仕方ありませんわ」
「痛そう…」
「何はともあれ、叩いて解ける弱い洗脳で良かったですわ」
「全然よくないわよ…」
倒れたスズナが頭を右手で押さえながら目を覚ました。
見たところ洗脳は溶けたようだ。
「スズナちゃん、頭痛くない?」
「痛いわよ。ルカ、もう少し手加減してもいいんじゃない?」
「こうするしか方法がなかったのですわ。まあやり過ぎたのは謝りますわ」
「まあいいわ。それより二人とも、魔法少女?になったの?ずいぶんとルカの趣味炸裂の姿に…」
「スズナもですよ。鏡で確認してくださいまし」
「え?」
ルカにそう言われ、スズナは鏡で自分の姿を確認する。
「な、何なのこれはーー!!??」
自身も魔法少女姿になってることにスズナは驚きつつ顔を赤くしながら右手でスカートの前を押さえ、左手でスカートの後ろを手の平で隠す。
「おー予想通りの反応ですわね」
「ちょっとルカ!もう少しなんとかならなかったのこの服!」
スズナは顔を赤くしながらルカの両肩を持ち、揺らす。
「お、おち、落ち着いて、く、下さい、まし…!」
「ふ、二人とも、そんなに騒いだら…」
クレハは騒がしくなると黒服の男達が戻ってくると思ったのか、二人を静かにするよう声をかけるが…
時すでに遅し…3人の黒服の男達が戻ってきた。
「な、なんじゃこりゃー!!?」
黒服の男達もクレハの変貌ぶりを見て驚きを隠せなかった。
「「「あ!」」」
クレハ達も振り向き、黒服の男達と目があった。
「お、お前達!その姿は一体何だ!怪人になったのか!?」
「え、えっと…その…」
黒服の男達の問いかけに戸惑うクレハだが、ルカが前に立ち、問いかけに答えた。
「ワタクシ達は魔法少女。貴方方デバックの野望を打ち砕く正義の使者ですわ!」
と、どや顔で決めるルカ。
「る、ルカちゃん…」
「何やってるのよ…」
「楯突く気か!小娘共!」
そう言って黒服の男の一人が懐からマガジンタイプの拳銃を取り出し、クレハ達に向けて3発も発射した。
「ひゃっ!?」
スズナとルカは銃弾をかわすが、対応の遅れたクレハは避けられず、両腕でガードするが、腕に当たった銃弾はそのまま跳ねかえった。
「何!?」
「……………あれ?効いてない…」
「クレハ、男達に向かって殴りなさい!」
「え?う、うん」
「な!?」
何ともないのを不思議そうに思うクレハはルカに言われた通り、黒服の男達に向かって人並み以上の早さで走り、近距離で殴り倒し、前の二人を気絶させた。
「す、すごい…!」
「一撃で相手を気絶させるなんて…!」
殴ったクレハが驚く。
それを見たスズナも驚く。
「く、くそ…!」
一人残された黒服の男は倒れた二人を置いて部屋から逃げていった。
それを見たルカは…
「クレハ、スズナ、今のうちに武器の用意をした方がいいですわ」
「ぶ、武器って…私出し方知らないんだけど…」
「私もよ…ルカのその武器、どうやって出したの?」
二人は武器の出し方を知らないとルカに話す。
「右手に意識を集中して、ワタクシが家で見せたゲームのアニメーションに出てきた武器をイメージすればいいですわ」
「イメージ……ねぇ…」
「とりあえず、やってみよう?」
ルカに言われた通り、クレハとスズナは右手に意識を集中してイメージを試した。
すると、二人の右手から光が生み出され、それぞれ両刃の赤い剣と三ツ又の青い槍へと形を変えた。
「ほんとに出てきちゃった…!」
「……見かけによらず、軽いわね。これ」
出した武器を試し振りする二人。
「二人とも、使いかたは実戦で覚えてくださいまし」
「実戦?」
「逃げた黒服の男が仲間を連れてきますわ。気を引き締めて」
「え、ええ…」
ルカの指示通り、クレハとスズナは武器を構えた。
そんな中、ルカか倒れて気絶した黒服の男のポケットを探っていた所をスズナが気付いた。
「って、何やってるのルカ」
「…これですわね」
ルカがそう言って、黒服の男のポケットから何かのファイルを取り出した。
「ルカちゃん、それは何?」
「話は後ですわ。敵が来ましたわよ」
クレハがルカが取ったファイルについて聞こうとしたが、敵がやって来たことをルカがクレハに告げる。
黒服の男が逃げた道から無数の走る足音が聞こえ、それは次第に大きくなり、その先から、敵は現れた。
現れたのは12人の黒いコートと黒いヘルメット姿の人達だった。
ヘルメットのゴーグル部分は人の表情がわかるほどの大きさの円型だが、やや暗めでゴーグルの中が肉眼では見れない。
黒コート達の後ろには先程逃げた黒服の男がいた。
「た、たくさん来た!」
「な、何なのこいつら!」
「確かクリーチャーと言ってましたわ。ワタクシが捕まる前に黒服の男が連れていた者達ですわ」
「や、やれ、クリーチャー達!やっちまえ!」
やけになったのか、黒服の一人は黒コート達…クリーチャー達にクレハ達を攻撃するよう指示した。
クリーチャー達は指示通り、クレハ達に近付き始めた。
「とりあえず、一人4体で」
「4体!?」
「多くない!?」
「戦いに慣れるにはそれぐらいは出来ないと駄目ですわ!」
そう言ってルカが武器を持ってクリーチャーの群れに向かって走り出す。
「もう、こうなったらやってやるわよ!」
スズナも槍を構え、右側のクリーチャー4体を相手に走る。
残ったクレハは息を整え、剣の柄を両手で握り、構え直す。
「……よし!」
クレハも覚悟を決め、左側のクリーチャー4体に向かって走り出した。
「たあああ!!」
クリーチャー達に向かって走り出すクレハは叫びながら両手で持った剣を振り上げ、近距離で前方のクリーチャー2体に向かって斜めに切り下ろし、大きな切り傷を附けた。
切り裂かれたクリーチャーの2体は剣で切られた所から光の粒子が溢れ、次第にしぼんでいった。
しかし、クレハの後ろから回り込んだ残った2体のクリーチャーの内一体が右腕を振り上げた。
だがクレハは慌てて気付き、再び剣を斜めに振り上げ、振り下ろされたクリーチャーの腕を受け止め、そのまま押し飛ばした。
入れ替わる形でもう一体のクリーチャーが襲って来たが、クレハはもう一度両手で持った剣を振り上げ、すぐに振り下ろした。
三体目もしぼんでいった。
残った一体の仰け反ったクリーチャーは立ち上がるが、その間にクレハが近くまで走り、そのまま剣で斬られて倒れた。
四体目もついに消滅した。
スズナの方は、クリーチャー達の口から発射される電気の球を両手で握った三ツ又の槍を振り回しながら攻撃を弾き返している。
そしてそこから素早く相手の懐に入り、一体目を突き刺し、二体目を切り払い、三体目はまた突き刺し、四体目は切り上げた。
すれ違い様にスズナの攻撃を受けた四体のクリーチャーはしぼんで消滅した。
ルカも向かって来る四体のクリーチャー達を右手に持ったメイスで思いきり横凪ぎで次々と打ち倒していく。
飛ばされたクリーチャー達はそれぞれ壁に叩きつけられ、装置にぶつかったり、カプセルに衝突し、最後は黒服の男の近くまで飛ばされ、四体共消滅した。
その光景に黒服の男も動揺を隠せなかった。
「ば、バカな…警察ですら敵わなかったクリーチャーが一瞬で…!」
このままでは不利だと思ったのか、逃げようとする黒服の男だったが…
「!?」
いつの間にかスズナが黒服の男の近くに現れ、首もとにスズナの槍が向けられていた。
「勝負あったわね。許してほしかったら答えて。怪人になった他の人達は何処にいるの?」
スズナが他にさらわれた人達が何処にいるのかを黒服の男に問いただす。
それに対し、黒服の男は少し笑いだした。
「何がおかしいの!?」
「まさか…これで勝った気でいると思ってるのか?」
「どういう事?」
黒服の男の余裕そうな言葉に疑問を持つスズナとクレハ、ルカ。
その時、ズシンと大きな音と揺れが地面から伝わってきた。
「な、何!?」
「スズナ、そこから下がって!」
「え、ええ!」
何かを察したのか、ルカはスズナに今いる位置から離れるよう指示した。
スズナもルカの指示通りに黒服の男から離れた。
すると、黒服の男達が入ってきた入り口が壊され、中から長い首が2つもある全長3メートルの巨大な紫色のドラゴンが姿を現した。
背中には4枚のコウモリに似た翼が、四本足には鋭い爪が、2メートルもする尻尾は2つに分かれ、体全体にはウロコのような物で覆っていた。
その姿にクレハ達は驚きを隠せなかった…
「な、何なのあれは…!?」
「2本首の…ドラゴン…?」
「怪人…では無さそうですわね…」
突然現れたドラゴンを前に少しビビる3人に対し、黒服の男は再び笑いだす。
「ふあっはっはっはっ!強運もここまでだ!キメラの餌食になれ!」
「き、キメラ…!?」
黒服の男にキメラと呼ばれたドラゴン…
すると、2つの頭の視界がクレハ達を捉え、2つの炎を吐いてきた。
「散開して!」
ルカの咄嗟の指示でクレハ達は左右に避け、ドラゴンの炎をかわした。
炎で焼かれた地面は黒焦げになっていた。
その光景を見たクレハ達は驚いていた。
「さすがにあの炎はまずいかも…」
「流石キメラだ。上質な材料を2つ使っただけの事はある。ハッハッハッ!」
ドラゴンの吐いた炎の威力を目の当たりにしたクレハはあれは危険だと思い込んだ。
黒服の男は優勢になって調子に乗っている。
「ところでルカ、あのドラゴン…キメラって言ったっけ?何か知ってるの?」
スズナはルカに黒服の男が言ったキメラについて聞いてみた。
「キメラといえば…複数の生物を組み合わせて作った人工生命体の事ですわ…!」
「ルカちゃん、その情報って…」
「ええ。単にアニメやライトノベルで学んだ事ですわ」
「………まあ、そうよね…」
ルカがキメラについて知ってるのかをスズナが聞いたが、実際はアニメやライトノベルにそういう単語が出てきた事ぐらいだとルカが答え、わかっていたように呆れるスズナ。
「ですが間違ってはいませんわ。そもそもドラゴンは架空の生物で本来存在しないもの。ですが、あの場にいるのはドラゴンに似た物。それを生み出せるとしたら、キメラ以外考えられませんわ」
と、真剣な顔で目の前にいるドラゴンを分析するルカ。
「ルカ、これがキメラだったら何なの?」
「恐らく…他の動物達も材料にされたって事ですわ…!」
「!?」
「酷い……!」
目の前にいるドラゴンがキメラだとすれば、他の生物を材料に使われていると、ルカは冷静に告げる。
しかし、実際のルカの表情からは少しずつ怒りが混み上がり、メイスを持った右手には力が入っていた。
「クレハの言う通り、これはほんとに酷いですわ。動物だって命がありますわ。それを材料にするなんて…人間のすることではありませんわ!」
と言ってルカは黒服の男を睨んだ。
「ふん、新しい何かを求めるのが人間の本能だ。求めて何が悪い」
「限度があると、私はおっしゃってるんですのよ!」
「大体、人間ではないお前達に、人間の本能など分からんがな」
「元人間ですからわかりますわよ」
言葉と言葉のぶつかり合いを続けるルカと黒服の男。
「この際どうでもいい…お前達を捕獲して調べるつもりだったが…やめだ。こいつでお前達をやきつくしてやる!行け!」
と、黒服の男はドラゴンに指示をした。
しかし、ドラゴンは全く動じなかった。
「どうしたんだ、何休んでるんだ?早くあいつらを倒せ!」
なにもしないドラゴンに苛立ち、命令する黒服の男。
すると、鬱陶しいと思ったのか、2つの頭が黒服の男の方へ向いた。
「な、何なんだ?」
少し怯えるも、強気でドラゴンに命令する黒服の男。
しかしドラゴンの2つの頭は口を開けた。
開けた口の中からは炎が少しずつ噴き出していた。
それを見た黒服の男は確信した。
このドラゴンはこちらを殺す気だと…黒服の男の表情は恐怖へと変わった。
「ま、待て!俺は敵じゃない!」
説得するもドラゴンは聞こうとしない。
恐怖の余り、黒服の男はこの場を逃げようとした。
しかし、既にドラゴンは炎を吐いていた。
そしてその炎は逃げようとする黒服の男を包んでいった。
包まれた瞬間、男の断末魔が部屋中に響き渡り、ドラゴンが炎を吐くのを止めると、現した黒服の男は黒焦げとなって倒れた。
いや…黒い炭へと化したのだった。
息は当然していない…
「!?」
「何て事を…!」
「これは酷いですわね…」
焼かれて死んだ黒服の男の姿を見たクレハ、スズナ、ルカは驚きを隠せなかった………




