新世界の始まり
善人なんて居ない。
神はその事に悲しんだ。
何年も何千年も悲しんだ。
ある日一人の善人が生まれた。
神は喜んだ、純粋な愛を持つ善人を愛した。
神は 善人を誕生させた地球人にご褒美として天使に人間の手伝いをするように命令した。
すると、地球全体を覆うオーロラが現れ、天使のオーブが全人類に舞降り知恵を与えてくれた。
知恵は人類に超人的な覚醒を促した。
ある者は羽を生やし大空を飛び、ある者は神の存在を化学式で証明し、またある者は鉄の肉体を手に入れた。
それから千年の月日が流れ、善人が生まれた場所は東教と呼ばれ急速に発展を遂げた。
大昔の東京だった頃の面影を残しつつ大自然が街を覆っている。
僕は狭いアパートの中で一人朝食を摂る。
トイレ無し6畳間の不便な部屋だが、巨大な木の枝がドアの中まで侵食してきて今にも壁を破壊しそうなこの感じが気に入っている。
テレビをつけると和かな顔のニュースキャスターが映し出される。
僕は頰張っていた漬物を飲み込み天使に話しかけた。
「ねえナナ、このキャスターは今の世界が完璧だと言っているけど本当なの?」
するとオーブが隣に現れて囁く。
ナナ「ユキオ、前にも言ったけど天使は手助けをするだけで答えは教えられないんだよ」
ユキオ「・・・・Hey ナナ!答えを教えて!」
ナナ「OKユキオ 自分で探して!・・・って俺を時代劇のAIサービスと一緒にしないで!」
いつものバカなやり取りに笑みがこぼれる。
僕は朝食を食べ終えると、両手を広げその場で横になった。
ユキオ「は〜〜 平和だ〜〜」
ナナ「そうだね、あと20分で仕事だよ」
ユキオ「・・・・・・・」
難しい元は後回しにしよう。
早々に制服に着替えカバン片手に家を出た。
眩しい光に空を見上げると羽の生えた女性たちが空を飛び回り、下を見下げると鋼体の男たちが道路を整備している。
超人になるには自分を殺す程の努力をしなければならない、だから皆が超人な訳じゃない。
天使の知恵にはなんの力も無いから、力が欲しけりゃ自分で努力するしかない。
僕も憧れてた時期があったけど途中で挫折してしまった。
ナナ「何ドアの前でボケッとしてるの?後5分だよ!」
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