肩をたたくのは
「肩をたたくのは」
妹の実体験。それは母方の祖父が亡くなったときの事です。人が死ぬとそれで終わりではありません。経験がおありの方も多数でしょうが通夜、告別式と葬儀の準備に追われ、お骨になるまでが一苦労。
数日間、弔問客におもてなしをし、お通夜も終えて疲労困憊な中、翌日の告別式のために葬儀場にある遺族用の広い客室のひとつに祖母、両親、私、妹、叔父夫妻、いとこ二人、親族全員で泊まる事になりました。
広いといっても布団を人数分敷くと足の踏み場もなくなる広さでしたが。
通夜の夜から明け方まで、寝ずの番をたてて線香の煙を絶やさぬようにせねばならないしきたりですが近年はそういった負担を減らすために蚊取り線香に似た形状のお線香があるらしく、それひとつで約12時間、燃え続けてくれるから安心してお休みくださいと式場のかたからの説明。
翌日の式のこともあるので少しでも休まねばと私は深い眠りにつきました。
妹は線香の煙を気にしながら寝たそうです。
意識がなくなってからどれくらい時間が過ぎたのかわからない頃、妹はふいに誰かに肩をポンポンとたたかれて目が覚めたそうです。
明け方近い時間。起き上がるといとこ2人も同時に目を覚ましていたようでした。3人とも線香のことが気になったようで、そちらに目をやると
説明では12時間燃え続ける、つまり告別式の日のお昼頃までは燃え続けるはずの蚊取り線香もどきがまもなく燃え付きようとしていたそうです。
慌てて予備のお線香に火をつけ直し、煙は絶えることがなくなったのです。
妹は同時に起きていたいとこ2人のどちらかが起こしてくれたと思っていたそうなのですが、二人とも違うらしく、それどころか、向こうも誰かに肩を叩かれて起きたのだと。
私含め他の親族は全員寝息を立てていてこの一件のときにすら目を覚まさない状態。
後日きくと、この数日前、葬儀の準備に追われていた喪主の叔父も、寒い東北の2月にもかかわらず、うたた寝をしてしまった明け方に誰かに肩を叩かれて目を覚ましたのだとか。
もしその手が祖父のものだとしたら、それは彼なりの優しさだったのでしょうか。
孫が4人いて、なぜ私だけ肩を叩かれなかったのか。
それは恐らく告別式で故人への手紙を勧進帳でやることを考慮しての事だったのかもと都合よく解釈をそえて。