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牙を剥く異世界

 誰かの声がする。ん……ぐっ。朝? 目を開くと美女が辺りを見回しながら僕を揺すっていた。


 …………あー、はいはい。異世界ね。そうだった。


「おはよー」


 って言うか早いよね? 空はまだ日の出直後って感じ。ミーザは早起きさんかな? 

 

「あっ、起きた? 何かいるの、あそこ、それにあっちにも、見える?」


 ナニカイル? 何か? そこで一気に意識が覚醒する。バッと上体を起こしてミーザの指が示す方を見る。


 んー……動物かな? あっちにもこっちにもいる。距離は離れている。でも昨日は辺り一面生き物はいなかったは……ず……! 魔物……!? 


「何か変な感じがするんだけどミーザは? 」


「私も何か違和感がある。やっぱりアレが魔物……? 」


 朝から勘弁してよーと思いつつ身構える。どうしようか……。倒すか逃げるかだよね。一番近くには一匹でいるのが150メートルくらい先に。他にも点々といるけど、まだ安全圏だと思う。


「ミーザって闘える人? 」


 ふと気になる質問をぶつけてみた。その答えによっては……。


「一応ね、でも一人ではないわね。 戦うつもり? 」


 戦えるんだ。だったら……。今逃げても街に着くまで魔物に遭わずに全部回避または逃げきる……。ムリくさー。


 だったら此処で魔物と一戦してみるのも有りかな。どのくらいの強さなのかも分からないし。一匹ずつ

戦えるのもいい。よし! 


「僕、戦った事ないんだ。だから試しにあそこにポツンといる一匹と戦ってみない? 魔物の強さも分からないし危険があると思うけど、どう? 」


「うーん、確かに危険だけど魔物の強さは知りたいのよね。マミは大丈夫なの?」


「多分ね。それに昨日まではこの平原に全く魔物なんていなかったのに、今日突然いるっておかしいよね。これも神様の仕業かな? だったら最初から強い魔物は無いはず……」


 んー、自分で言っててもおかしい気がする。逆か? 昨日一日、魔物を消していたのを元に戻したのかな。……有る気がする。なんか神様、異世界生活の準備は丁寧で親切だし。


 あー、朝から頭使わせないで欲しい。もういいや。戦ってみますか。


「じゃあ、取り敢えず一匹やってみますか」


「ええ、先ずは一匹。でもちゃんと準備してからね」


 準備と言ってもどうやって倒すか。まぁ魔法で遠距離からは確定として、何の魔法でいくか……。定番は火……グロいか。氷も突き刺すのか……無いかな。後は雷? うーん、どうでしょう? 光もあるな、レーザービームって感じか。水で窒息……初戦で使う物じゃないな。


 とアレコレ考えているとミーザが呪文を唱えて高さ2メートル程、横幅もごっつい土のゴーレムを作り出していた。


「それも魔術? デカいね」


「魔術よ。壁にもなるし移動にも使えるわ。このクレイマンを前にだして魔物と対峙させて後ろから魔法でズドン! よ」


「おー、いいね! 安全そう。それでいこう! 」


 ミーザの魔術獣のゴーレムが魔物を捕まえていてくれれば更に良い。


 魔物にゆっくりと近付いていくと、茶色で毛深いロバみたいだった。ただ脚は蹄ではなく大きい爪が生えていて鬣は赤茶色で逆立っていた。


 魔物から30メートル程離れたところで止まりゴーレムだけを近付ける。因みにゴーレムはドシンドシンと歩くのではなく、スーっと摺り足かスケートみたいに進む。不思議だね。


 さすがにロバの魔物もこちらに警戒しだしてゴーレムに向かって唸り声を上げる。それをお構いなしにゴーレムが接近し……パンチ! ドゥっとくぐもった音が響く。


 「グゥオフゥッウ」とロバの魔物が呻きながら横に吹っ飛ぶ。アレ? 弱い? ゴーレムが強いのかな?


 ちょっと予想外の展開に疑問符をつけていると、ミーザがすかさず魔法をズドンと発動。

 火魔法だ。30センチ程の球体が未だ倒れているロバの魔物に当たり、その瞬間ボワっと炎となりロバの魔物を包み込む。


 オーとかホーと歓声や感心をしていると炎が消えていきロバの魔物は消えていた。……はい? 終わり?


 思わずミーザを見るとミーザもポカーンとしていた。


「ミーザ強よいね。消し炭だね。骨すら残ってないよ」


「えっ、ええ残ってないわね。でも、えっ、えっ? 」


 自分でもビックリなのか僕と焼け跡を何度も見返す。……その顔がちょっと面白い。


「魔物が弱いのか、ミーザが強いのか、或いは両方かだね。でもそれならそれで一安心だね」


「そ、そうね。一先ずそう納得しましょうか……」


 そう。それなら魔物も恐くはない。大丈夫だ。ただ僕の魔法も通じるか試さないとと思いながら焼け跡へと進む。本当に何も無いのか確認しなきゃね。


 焼け跡はロバの魔物がいた所だけだった。周りには燃え広がってはいない。……不思議だね。


 その中心部にビー玉位の茶色い玉が落ちていた。おもむろに拾い上げて眺める……戦利品かな。


「何かあったの?」


 後ろから尋ねられ茶色いビー玉を摘みながら


「戦利品? 」


「焼け残り? ……ビー玉? ……もしかして魔石?」


「あっ! 魔石ね。そうだね。ほぇー」


 これが魔石か、しげしげと眺めてミーザに渡す。

 受け取ったミーザも魔石をいろんな角度から眺めている。


 改めて周りを見渡すとまだ魔物はいるけど、こちらに駆け寄ってくる事もなくその場で思い思いに過ごしている。


「じゃあ次は僕の番だね。僕の魔法が通じるか試してみるよ。ゴーレムで援護頼めるかな? 」


「ええ、任せて。さっきと同じくクレイマンを先行させるわ」


 魔物も大して強くないみたいだし、いざとなればミーザの魔法もある。余裕がある! 


 今回もロバの魔物をゴーレムでパンチ! 吹っ飛ぶ魔物。

 30メートル程離れた場所から魔法をズドンとするために倒れたロバの魔物を指差して呪文を唱える。使う魔法は……。


「光よ集まれ! レーザービーム!」


 ……ちょっと恥ずかしさが上回って簡単な掛け声に留めた。けども僕の指先に魔力が溜まり、それが光となって指先からビーと飛び出し続け魔物を貫いた。……土壁よりも魔力を使ってる気がする

 

 するとレーザービームに貫かれた魔物は身震いをしてパタリと動かなくなり霧の様になって霧散した。


「えっ!? 魔物ってそうゆう系!? ゲームじゃん!」


 驚いた! そりゃあ骨も残らないわ。けど更に安心。コレなら倒しても罪悪感が無い! 魔物も弱い!

 しかも攻撃魔法を使ってテンション上がってる。今なら中2チックな呪文もバンバン言える。


 ルンルン気分で魔物跡に向かうと魔石と爪が落ちていた。はて? ドロップ品かな? ホントにゲームじゃん。


 魔石はさっきと同じ、爪は僕の手の平の半分位の大きさ。何に使うんだろう?


 まぁ、いいや。初戦闘でドロップゲットは幸先いい。早起きしたかいがあったね。……起こされただけだけど。


 眠気も吹き飛んでるしどうするかな。


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