異世界の夜、おやすみ
手引き書を読み終わってもゴッドポイントの獲得メッセージが出ないのでウィンドウで確認する。最後ら辺読み流したのがダメなの? と思ったら35ポイント増えていた。……ポイントが小さいとメッセージは出ない様だね。30ポイントは魔法を初めて使ったからか……還元セールみたいでお得感がうれしい。
日も傾いてきたし夜になる。どんな景色になるのやら。
暗くなる前にミーザが魔術を披露してくれた。ワクワクしながら見ていると期待以上のものだった。
「私の魔術は魔力を使って火、水、土、風、光、闇を形作り擬似獣を創りだす。それを〈魔術獣〉と言うの」
魔術獣……翻訳の問題かとても噛みそうなお名前で。
「では、〈我が魔力よ闇を照らす光となるべき姿を獲れ、カーンベル〉」
ミーザの右手に魔力が集まり、光輝きだしてから頭、胴体、四肢、翼、尻尾と形付いていく。
3、40センチの発光する兎みたいな魔術獣がそこにいた。
「かっかわいー! 何コレ! 光ってるんだけど眩しくないし、かわいいし、魔術スゴい!!」
「ふふふ、まだ驚くのは早いわよ。それっ!」
魔術獣がミーザの手から飛び立ち、僕の周りを飛び回る。お〜癒される、翼を動かしてもパタパタと音もしないでスーって移動してる
「魔術獣の最大の特徴は術者と意志疎通ができ術者の思い通りに動いてくれることなの」
ほぉー、自然魔法と召喚魔法の良いとこ取りか。
「ミーザはすぐ魔法も使えそうだね。」
「ええ、さっき試したら使えたわよ。呪文がいらないのは楽なんだけど、違和感が凄いあるのよね」
あっ、使えるんだ……地球人不利じゃん……。まぁいいや、地球人も良い事があるさ。きっと……、多分。
ちょっとガッカリしている僕へ話題を変えるように「そろそろ晩ご飯の準備でもしましょうか」と提案が。
もちろん了承した。思えばお菓子しか食べていないし運動もかなりしている。お昼は食べる気も無かった。ていうか食料に気付いていなかった……。
神の鞄に入っている食料はパンが30個、乾麺(パスタかな?)が2キロぐらい、肉(詳細不明)、野菜(詳細不明多数)、チーズ、塩、砂糖で、フライパンが1個か…………料理出来ません。
「ところでミーザは料理出来る? 僕は数える位しか作ったことないけど」
「うーん、私も大した物は作れないわね。ハーブも無いみたいだし。今回は焼くだけにしましょうか」
「そうだね。パンもあるし、はははは」
「ふふふふ」
異世界の初めてのご飯は塩っぱかった。
その晩は、今さらだけどこれからについて話し合った。
僕は元の世界に戻る為にこの世界で出来るだけ長生きしようと思う。何ポイント必要なのか分からないから出来るだけ貯めるしかない。ホント教えてくれればいいのに。
そりゃあ家族や友達に最低でも4、50年は会えないのは寂しいし悲しい。けど地球に戻ればこの世界の記憶も朧気。元通りになると思う。それならこの世界を悔いなく生きて後腐れ無く地球に帰ろうと思った。
まぁ、まだたった半日の異世界生活、いつ変えてもいいやぐらいの決意だけどね。
ミーザは元々あと3ヶ月もすれば魔術師の見習いから魔術師になれたらしい。 そしたら旅に出て見識を広げ何処かの街に住み着き、弟子を取り、更に魔術を発展させる。と言うのが未来像だった。しかし此処にいる……。
どうにも一番悔いが残っているのは師匠にお別れをしていない事らしい。4歳の時からお世話になっていて母代わりでもあったらしい。
なのでミーザもこの世界を生き、元の世界に帰る事を目標にしている。
当面の目的は僕が見つけた街に行く事にした。道中の移動手段はまかせてとミーザの逞しい言葉、存分に頼らせて貰いますよ!
そんなこんなを喋っていたら、もう結構な時間、寝ましょうかと横になったら目に入った異世界の夜景……特に何も感じなかった。
別に地球と大して変わらないんじゃないかな?地球の夜景とかも興味無かったし……異世界だから急に興味が出るもんでもないか。
あっ、月が無いかも、新月の可能性もあるか……ふぁあぁあ、欠伸が、限界か、うん、いいや、寝よう。
「おやすみー」
「はい、おやすみなさい」
こうして異世界生活の1日目が終わった。