異世界だね
テレビのチャンネルを変えるが如く目の前の景色が変わる。
しばし呆気に囚われているとハッと我に返り右を見て、左も見る。そして後ろも、ついでに上も見た。
――周りにいた人達は居ない。僕だけポツンと一人だけ。どうやら来てしまったらしい。異世界へ? 本当に? 夢の可能性もあるな。そっと頬をつねってみる。……痛い。
だからもっと判りやすいエフェクトとか付けてよね……せっかくの異世界転移なんだから。
認めたくないなー。けど認めなきゃな、一応地球に帰る方法もあるし。ポイント貯めなくちゃね。死ねないよ。こんな何も知らないし、誰も居ない世界でなんて。
よし!覚悟を決めますか。異世界生活。
そうと決めたら先ずはアレをやろう。
今の僕は何かおかしい。ランナーズハイならぬ異世界ハイかもしれない。
僕は後ろを振り向き岩山に視線を向ける。高さ10メートルぐらいか……凸凹もあるし足場になりそうなところもある。頑張れば登れそうだ。
岩山に向かって歩き出そうとすると足下からガッと音がした。ショルダーバッグ? 神様の贈り物かな? まあ、いいや。貰っておこう。今は岩山だ。
岩山を登るルートを確認。目指せ頂上。
岩が重なりあって出来ている足場を一段ずつゆっくりと登る。
唯一の難所と呼べるのは最後の2メートルと少し。この“少し”が厄介だ。ここはロッククライミングみたいな事をしなきゃいけない。岩を蹴り上げてジャンプして手を掛けて懸垂して肘か脚を引っ掛けて登ることも考えたけど僕には無理。現在高さ8メートル。そんなアクション恐い。
ってことでまず、左脚を凹みに置き体重を掛ける。よし。そこから手で岩を掴む、次は右脚を少し上の凹みに乗せてグイッと身体を伸ばす浮いた左脚を……ここに置いて、手を片手ずつ更に上の岩を掴む。そしてまた身体を伸ばす。それを焦らず繰り返すと、遂に手が頂上に。慎重に身体を伸ばすと胸から上は頂上に、後はゆっくりと脚を上げて、無事登頂!!
ふっふっふ。来た。ついに来てしまった。岩山の頂上に!
では早速実行しようかな。
まず端に寄り、顔は正面に、脚を少し広げ、手はどうしようか、両腕も広げよう。息を大きく吸い込む。
いざ!
「僕は! この星の!! 神になる!!!」
「どん!!!」
ふっふっふ。実は異世界、第一声はこれにしようと思って今まで口を開かずいたんだ。場所も高い所が良かった。
いや神になる気は全く無いけどね。
なんとも言えない高揚感に浸っていると「キュルシュピーーン」と頭の中で何かが違和感が、えっ? 狙われてる!?
バッとその場に伏せる。恐る恐る顔をあちこちに巡らせると、目の前にメッセージが表示されていた。
《ゴッドポイント1000獲得しました》
………………えっ
…………僕、何した?
岩山登って神様なる宣言。コレだけだよな……それで1000。高いのか低いのか分からないけど……いいの? こんなんで? 神様選ぶ基準なんだよねゴッドポイントって……。
一気に冷めたし、覚めた。なんで僕、岩山登ったんだろう?
……そうだアホな事をしている場合ではなく高い所から人、街を見つけようと思ったんだ。
立ち上がり砂を払う。改めて頂上からの景色を眺める。
――うん。下で見た通り結構広い範囲で平原が続いている。5キロや10キロでは足りないよね。こっちは無理。反対方向を見ようと移動開始。
端を歩きながら辺りを見回していると、一本の大木があった。
でっかいなー。さすが異世界。と思って凝視していると大木の陰に何かいる?
更に目を凝らす。やっぱり何かいる。けど、半分以上隠れていて判断できない。
って言うか、僕、目が良くなりすぎじゃない?ハッキリ見えるぞあの大木、これが神様がくれたチカラ?……だったらショボ過ぎる。
がっかり。はっ! 違う今はあれの確認だ。どうしよう。人か違う生き物か分かる方法……とりあえず手を振ってみよう。
両腕を大きく振る。すると向こうも隠れながら小さく手を振る。
手を振るってことは、人間?――第一村人発見だ!?