神隠しは突然に
「ほぇ? 」とマヌケな言葉がこぼれてしたった。でもしょうがないよね。
真っ白い空間の中に僕を含め100人。いや、もっといるかもしれない。
それに人と数えていいのかわからん生き物もいるし。
あれはフィクションの世界なら獣人とかエルフとかナ○ック星人とかいわれている存在もいるし、妖怪かアレは? 他にも多種多様な生き物がいるけど彼ら彼女らも現状に困惑気味みたい。
僕も絶賛困惑中です。
最初こそあった軽い気持ちも現状を理解出来ないと理解してくるともうダメだね。周りを見れば見るほどそれは加速する。
だって学校から帰宅途中にいきなりだよ。予兆もなく。プァァ〜と眩しい光に包まれてとか、魔方陣!展開!とかなく、ただ階段を降りたらこの空間なわけ。わけわかんない。階段も無くなってるし。
とりあえず深呼吸を一回。
吸って〜吐いて〜、うん足りない、さっきから心臓バクバクだし。もう四、五回はやっとこう。
ふぅー。……うん。大丈夫。生きてる。僕、生きてる。
そんな事をしているとこの困惑、喧騒空間をさらに深める存在が降臨した。
まるでオーロラのような帯状の光が天から降り注ぎ白い空間に彩りを加えていく。
さらに何処からともなく鳴り響く不思議な音色。
周りのザワめきも最高潮に達した時、圧倒的な存在感を持った何者かがつぶやいた。
『うーん。こんなもんでいいかな』
えっ? なにが? ていうか誰だ? こちらの疑問も無視して何者かは続ける。
『うん……うん……うん……。よし! 皆の者よ聞けい! ワシゃあ神じゃ』
なっ……えっ……たしかにぽいっちゃぽいけど。そうかなぁとか思ったけど。
『皆の者をここに連れてきたのもワシじゃ。何故だか分かるか? フッフッフ。そう!』
タメを作る神様。息を飲み続きを待つ僕ら。そして周りを確認するように見渡し終えると――
『次の神は君だ!!』
ナニソレ? 神様はズバっと指を差してとてもいい笑顔である。
『まぁ正確には今から皆の者をとある星、名はマールグリン。そこに送る。そこで人生を謳歌してもらおう。ただし、ただ生きて死ぬだけではダメじゃ。つまらんからのぉ。ゴッドポイントを貯めるんじゃ。これは何か行動すると皆の者に与えるポイントじゃ。このポイントを一番貯めた者が次の神じゃ! 高ポイントを貯めた者も神の眷属にしてやってもよいぞ。』
……えーと。あれだ。うん――別に神様になりたくないんですけど! 地球なら、なってもいいかもとか思っちゃたけど! なにマールグリンって!知らんわ!
どうしよう。神様に反論は許されるのかなあ。いきなり『神に逆らうとは、天罰じゃ』とかないよね。
誰か神様になんか言ってくれる人はいないかなあと思って、周りをチラチラと見回すとみんな呆然としているようだ。
そこに震える声で質問する人が。
「あっ……あのっすみません。 わっ私、地球に帰りたい! ……ですけど」
オォォ! よく言った! 僕には無理だよ。しかも地球、日本語、同郷だね。しかも女の子、すごいよ。もう君が神様でいいよ。
僕はお役ご免で帰らせて下さい。お願いします。
彼女の言葉に堰を切ったように続々と神様に質問や願望が。
「あなたは神と申しましたがそれは、我等が唯一神インリジャン様なのですか? 」
「どんなチートくれんの?」
「私も元の世界に帰して!」
「神よ!なぜ3年前我が子を救ってくれなかった!」
「とっとと俺を元の場所にもどせ!」
「ふざけるな!なんでワタシなのよ!」
「どうせなら自分の星がいいんですけど。」
「神か、面白い! 私の名はナルゼルト・アチャ……」
もはやあっちこっちから怒号が神様に向けて発せられている。
アレ? 何故か全部日本語に聞こえる。
日本人どころか人間かあやしい奴まで……って、そんな事より大丈夫かコレ? 神様切れないよね? ちょと皆さん激し過ぎ。僕は少しでも距離を取ろうと後退りながら神様を注視していた。
今さらだけど神様の容姿は人型、ゴッツイよムキムキだし。顔は○○テウスとか言いたくなる古代ギリシャ人風。白髪。――ただデカい。すごいデカい。
あんなのが暴れたらと思うと……。
でも神様に怒りの雰囲気は無かった。それどころか何か考え事のようだ。そして――
『ふむ、神を目指さず帰りたいか。残念だがそれはならん。だが、ゴッドポイントをある程度貯めた者は死んだ時、元の世界の元の場所、元の時間に戻してやろう。
マールグリンで過ごした時間は夢の様に何となく覚えているようにも出来るし、忘却も出来るようにもしようかのぅ。ただポイント数は秘密じゃから頑張って貯めるんじゃな』
『それと、ワシの名は無い。強いて言えば創造神ってところかの。皆の者が神と思っている者はきっと、今回と同じようにゴッドポイントを貯めてワシの代わりにその星々の神になった者かもな』
『フフフ、何故皆の者を選んだか、か、適当じゃ。ワシが今まで創った星からのぅ。まぁワシが連れてきたんだから神に選ばれた者と言ってもいいのぉ。因みに此処に来た時に既にもうチカラは与えた。どう使うかは自由じゃ』
僕らが口を挟む隙もなくそれは告げられた。
『さぁ! もうよかろう!ゴッドロワイヤルの開幕じゃ!! ワシを楽しませてくれよ! ハッハッハッハッハ』
神が最高に楽しそうに言ったそのお言葉を最後に僕等はマールグリンに転移した。