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第7話 少女の決意






おかしい。

変だ。

奇妙である。

なんでなんだ?


ここは街道。俺たちを乗せた馬車は、特にこれといったトラブルも無く順調にティース市への道を進んでいる。


だが、そこに違和感がある。

異世界物の定番と言えば、道中での襲撃だ。襲撃者が魔物なのか盗賊なのかは作品にもよるけど、兎に角、異世界小説で旅と言えば襲撃だ。それなのに、現在のところ俺たちは順調に進んでいる。


全く、これといった脅威が見当たらない。


色々と考えた結果、一つの仮説が思い浮かぶ。


「この辺は魔物が少ないのか?」


そう言えば、最初にこの馬車を手に入れた時に遭遇した盗賊達も一桁レベルだった。そんな低レベルでも、荒野で普通に生存できていた。それを考えれば、魔物の類は存在しないというのも十分あり得る話だ。

俺が自分で考えた仮説に一人納得していると、奴隷少女の一人が声を掛けてくる。


「ご主人様。この辺りにも魔物は沢山生存しています。普通は、ちょっと村を出るとすぐに遭遇するものなんですが……」


ん?

魔物がいない訳じゃないのか?


「だったらなぜ、俺たちは全く遭遇しないんだ?それに、村の中に魔物が入り込まないのはなぜだ?」


「村には教会がありますから。偉大なる女神“ユミ=ホダチ”様が守ってくれているんです。私たちが魔物に遭遇していない理由は分かりません。てっきり、ご主人様が魔物除けの神具か魔法具をお持ちなのだとばかり思っていましたが?」


え?

魔物除けの道具?

そんなのあるの?

取り敢えず、俺は持ってない。だけど、この馬車は元々商人の者だし、その手の道具が搭載されていたとしてもおかしくはない。



俺がそんな風に思案していると、特に理由も無しに魔物が出現しないせいで、奴隷たちも不安に思ったらしい。


「ご主人様。魔物は、近くに強力な魔物がいると、逃げ出します。もしかしたら、そのせいなのでは」


近くに強力な魔物?

さっきマップを見たときは何にもなかったが……。念のため、もう一度マップを見る。


やっぱり何もいない。

巨大ミミズと言うモンスターならばチラホラと街道周辺にいるものの、それらのモンスターは別段俺たちを襲撃するつもりもないらしく、端っこの方で小さくなっている。

うーむ。


念のため、マップの表示エリアを拡大。余り地図を大きくしても見辛いため、馬車周辺のみを表示させていた画面を、デフォルトに戻す。


え?

え!?

何じゃこりゃ?


地図画面の左側、つまりは西側に無数の赤い光点。


こんなの何時の間に出てきたんだ?

詳細を表示させるべく、一際赤い光を放つ点を拡大させる。

“魔王 Lv71”


へ?

魔王がこんな序盤から出て来るなんて、聞いてないんですけど……。


まあ、でも。大したことは無いな。何せ、こっちのアミナはレベル88。それに比べれば大したことはないからして、アミナに丸投げしてしまえばそれで良いだろう。最悪の場合、“全マップ蹂躙”を使えば良い訳だし。尤も、これを使うと、アメダス辺境伯爵領それ自体を殲滅してしまうから、なるべくなら保留しておきたいけど。


取り敢えず、当面の方針としては、ティース市到着後は魔王を避けて東へと進もう。アメダス辺境伯爵が誰だかは知らないけど、魔王に自分の領地を侵略されてそのままにはしない筈。必ず、抵抗の動きを見せるはずだ。魔王を倒せないまでも、時間稼ぎぐらいにはなってくれるだろう。







「ご主人様。どうかなさったんですか?何か不安材料でも?」


俺があれこれ思案していると、不安そうな顔をした奴隷少女の一人が、声を掛けてくる。

ついでに、好感度を上げようとしたんだろう。俺の方へと手を伸ばして、ズボン越しに俺の一物を握りしめてくる。


「っ!!」


童貞の俺には、女の子のそんな行為は刺激が強すぎる。膨張した息子を隠すべく、思わず少女の手を払いのけてしまう。


「ギャ!!」


短い悲鳴を残して、その少女は絶命する。当然だが、20もレベルが下の少女にとって、それは致命的な攻撃になってしまったのだ。伸ばされた腕はたやすく引きちぎられ、その余波で少女の首が半分もぎ取られている。少女の鮮血が、俺たちと馬車の荷台を汚す。


しまった……。またやってしまった。これで二回目だ。俺の馬鹿!学習能力が無いのか?

普通の人間は死にやすいから、力加減には気を付けないといけなかったのに……。




「きゃあああああああああああああああああああああああ!!!」


と、突然、少女の一人が絶叫を上げて馬車から飛び出す。その少女は最初、若草色のワンピースを着ていたんだが、先程の鮮血シャワーを頭から浴びた所為で、真っ赤に染まっている。

馬車から飛び降りた少女は物凄い勢いで、全力で走り去っていく。それも巨大ミミズと言う魔物が潜んでいる方に向かって。


「止まれ!」

俺は少女を制止する。

だが、少女は耳が聞こえないようだ。静止を無視してミミズの居る方へと走っていく。


「とまれ!止まるんだ!」


だが、静止を無視し続ける少女。

クソッ!どうして止まらない!そっちは危険だ!



ザバアアアア!!

突如、地面が盛り上がり、直径が1メートルぐらいあるミミズが出現。

「いやああああああああああああああああああああ!!」

絶叫を上げる少女を丸呑みにすると、再び地面へと戻っていく。


ボキ!ボキ!

ミミズが入って行った穴から、異音がする。きっと、少女の体を骨ごと咀嚼している音なんだろう。


ポイ

暫くすると、穴から赤色をしたボロ雑巾みたいな何かが出てきた。





え?


「結構高い値段で購入した奴隷だったのに……」


こんな減らず口を叩いたのは、いきなり目の前で少女二人が死亡する光景を目撃したことへの精神的ショックを和らげるため。

余りの急展開に茫然とする。結構かわいい子達だったのに……。イチャイチャする暇も無く、こんなにあっさり死んでしまうなんて。


と言うか、最初の少女の死は不可抗力だった。だが、二番目の少女のアレは何なんだ?いきなり絶叫を上げて馬車の外に飛び出した挙句、人の静止も無視して化物が待ち構えている方に疾走するとか……。


馬鹿なのか?それとも、自殺願望的な奴なのか?












☆☆☆      ☆☆☆









何で酷いことを……。


目の前で起きた惨状に背筋が凍る。最初村で見たときは、優しそうな商人だと思った。だから、このまま村に残って人肉スープになるよりはと、奴隷として買ってもらった。でも、その選択は間違っていた。


私たちが買われて一日も経たない内に、二人も死んでしまった。残ったのは私だけ。



何てひどい。


確かに、あれはマリアも悪かった。

恐らくマリアはご主人様への奉公として、股間を握ったんだろう。ただ、私達は夜伽の練習なんて殆どしてない年齢で、そう言った方面には疎い。

そして、力加減を間違ってしまったのだ。ご主人様に沢山感じてもらおうと、力強く握りしめ過ぎたんだろう。


それで、ご主人様の怒りを買ってしまった。確かに、私たちが売りに出される前に親たちも言っていた。男性は繊細だから扱いに気を付けろって……。


でも……こんなのはあんまり。

ちょっと不快になったからと言って、殴って首をもいでしまわれるなんて……。


それにルル。あの子も可哀想。いきなり大好きだったお姉ちゃんが殺され、その血を頭から浴びてしまい、気が動転していたんだろう。

それで、慌てて馬車から飛び出したんだろう。でも、それはやってはいけないことだった。こんな荒野の真ん中。こんな所で、血の臭いをまき散らしながら走るなんて……。そんなことをすれば、すぐに魔物に襲われるのはチョット考えれば分かることなのに。


「結構高い値段で購入した奴隷だったのに……」


それが、ミミズに食べられてしまったルルに向けられた言葉。



何て恐ろしいご主人様。人が死んだのに、投資が無駄になったことしか頭にないなんて。


私は死にたくない。このご主人様には、絶対に逆らわないようにしよう。

いいえ。駄目よ。それだけじゃダメ。機嫌を損ねるのもダメ。少し機嫌を損ねただけでも殺されてしまうわ、きっと。





「ミリー、よく聞くのよ。どんな状況になっても、生きるのを諦めるのは駄目。生きていさえすれば、いつか良いことにも巡り合えるから」


それが、ご主人様に買われる前に贈られた、お母様からの最後の言葉だった。


マリア、ルル、見てて。私は絶対に生き残って見せる。あなた達の分も。そして……。


私は呑気に服を洗浄し始めた、クズ男を見る。


絶対に仇は取ってあげる!




ステータス情報(主人公視点)



名前:ミネユキ・ユート(峰雪 勇人)

レベル:25

称号:“異世界人”、“虐殺者”、“墓荒らし”、“女の敵”、“クズ男”、“変態”

スキル一覧

アウタースキル:『全マップ制覇 665/666』『オール・オート・マッピング』『何だか鑑定』『ナンデモ・スキル』『おまけ』『オマケ?』

コモンスキル:『魔法Lv7』『属性魔法Lv6』『火属性魔法Lv7』『水属性魔法Lv5』『風属性魔法Lv3』『地属性魔法Lv2』『詠唱Lv7』『歩行Lv8』『暑さ耐性Lv3』『鑑定Lv3』『闇視Lv7』『並列思考Lv1』

アイテム:“封じの首輪”×1、“古代ロミュラス帝国の隠し宝物庫”×1、“中級ポーション”×6、“中級マナポーション”×4 、“下級ポーション”×16、“下級マナポーション”×18 、“最下級ポーション”×56、“最下級マナポーション”×18

所有奴隷:魔族(上級)×1、人間×1



真名:アミナ・ル・ローガット・デ・キシャール

レベル:88

種族:魔族(上級)

称号:“狩人”、“虐殺者”、“殺戮者”、“嗜虐趣味”、“オッパイ魔族”

スキル一覧

レアスキル:『ステータス喝破Lv2』『ステータス隠蔽Lv3』『時空魔法Lv4』『転移魔法Lv4』『武器創造Lv2』

アンコモンスキル:『拷問Lv12』『精技Lv15』『詠唱破棄Lv15』『闇眼Lv11』

コモンスキル:『魔法Lv68』『属性魔法Lv66』『火属性魔法Lv69』『闇属性魔法Lv68』『詠唱Lv25』『肉体強化Lv58』『飛行Lv55』『高速移動Lv57』『鑑定Lv45』

特記:隷属状態


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