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第2話 状況確認




……何て事だ。

俺たちは死んでしまったようだ。ということは、現在の状況はよくある異世界転生だ。


ん?この場合転生で合ってるのか?転生ってのは普通、赤ん坊から始まるもののような気がするな。

この場合、異世界転移の方があってるような?でも既に死んでいる訳だからして、転移だとするのも変だ。

異世界召喚でもおかしいしなあ。召喚陣もなしに。



むむむむむ。

良く分からん。というかそもそも、これが転生でも転移でも、召喚だろうとどうでも良い。重要なのは、俺が既に死んだこと。そして、どうやら異世界にいるらしいということだ。


実篤さねあつは近くに居るのだろうか?俺はもう一度周囲を見回すが誰もいない。荒野に唯一人、俺だけがいる。


まあ、これは仕方ないだろう。同じ場所で死んだからと言って、転生(?)先も同じとは限らないし。




そんなことよりも、状況確認だ。

異世界転生物の定番は、まず状況を確認すること。情報収集は大事だ。まあ、いきなり意味不明な状況に巻き込まれているんだから当たり前だけど。


という訳で持ち物を調べる。

トッラクに轢かれる前に持っていた学生鞄は、行方不明。どうやら、こちらには来ていないようだ。

次に学生服を調べる。学生服は、何故か新品同様。血糊も付いていないし、ほつれも無い。この間、釘で引っ掻いてしまった部分の穴も、どういう訳だか綺麗に修復されている。

一体どうなってるんだ?一瞬疑問に思うが、すぐに撤回する。まあ、別に良いや。そもそも異世界にいるという現状を考えれば、そういうもの何だろうということで納得しておく。



色々と奇妙なことが起こってるけど、現状確認を再開。今度は、学生服のポケットを調べる。

……ない。

いつも使っているズボンのポケットから、入れていた筈のスマフォが無くなってる。財布も無い。

まあ、いっか。異世界では、スマフォも財布も使えないだろうし。


そんなことを考えながらあちこちポケットを漁っていると、上着の内ポケットに紙片が入っていることに気付く。


何だ?俺は上着のポケットなんか使わない。ましてや、内ポケットともなると利便性が悪すぎて一度も使ったことが無いはず……。

疑問に思いながらも紙片を取り出すと、それは手紙だった。










――親愛なるお兄ちゃんへ


あれ、妹からだ。




――折角忠告したのに、あっさり死んでしまうなんて、大変遺憾です。反省を要求します。具体的には、400字詰めの原稿用紙で1000枚以上の反省文を提出してください。


いや、いや。無理だよ、お前。ドウシヨウモナイダロ。あんなの。

というか反省文を提出って。どうやれと?




――お兄ちゃんが死んでしまったことを知った後、蘇生させるべきかどうかで脳内会議を開いたのですが、面倒だったのでそのまま異世界に飛んで貰うことにしました。


へ?死者蘇生なんて出来たの?しかも面倒って?それはないだろ?お前。

そう言えば、事故のことも知ってる風だったし……。イッタイナニモンナンダ。あの魔導士風の格好は、あながち人間嫌いと言うだけの理由という訳でもなかったのか?




――異世界だから色々勝手が違うと思うけど、頑張ってね。


「頑張ってね」じゃねえ!荒野のど真ん中だぞ!普通の高校生でしかない俺にはハードルが高すぎるわっ!!




――追伸。異世界物の定番として、チートスキルはおまけしておきました。素のスペックだと野垂れ死に確定だったので。


チート来たあああ!!何だ、分かってんじゃん!!わはははははははははははは。持つべきものは出来の良い妹だな!!!最後の方でさらっと酷いことを言われてるような気がするが、そんなものは無視。







ちーと。ちーと。ちーと。ちーと。どんなチートなのかな?

手紙を読み進めようとするが、その下は白紙。


あれ?おかしいな。


裏返す。


真っ白。


あれれ?透かしかな?


太陽にかざす。


透かしも入ってない。




……。

エ?

え?

説明が無いだとおおおおお!!!画竜点睛を欠いてんじゃねええええええ!!






いや。待て。冷静になれ俺。

説明が無いということは、考えられる可能性は二つ。


一つは嫌がらせ。

うむ。それは無いな。俺の可愛い妹がこんなことする訳がない。大体嫌がらせが目的なら、初めからチートスキルを与えなければ良いだけの話だしな。

……アレ。デモ。そもそもチート自体が嘘という可能性ががががががががががっがが。


イヤ、イヤ。頭をブンブン振って、頭から邪悪な思念を吹き飛ばす。あの可愛い可愛い妹がそんなことをする筈がない。ということで、嫌がらせ説は却下。



もう一つは、定番もののチートスキルだという可能性。チートスキルが定番もので、常識的なモノなら説明をウッカリ忘れるというのもあり得る。常識的なモノになれば常識的なモノになるほど、それを意識しなくなる。

例えば、電化製品を使う場合。電化製品を使うには、電源にプラグを差し込む必要があるなどという説明を一体誰がするだろうか?答えは簡単、誰もしない。そんなこと“当たり前”だからだ。


そうして、今度の場合も恐らくそうなのだろう。チートスキルの使い方は、常識的で当たり前のこと。少なくともあやめにとっては。




という訳で、あやめの最近の活動を思い返してみる。

……。

サッパリ分からん。この一年間自室に引きこもっていて全く顔を合わせてないんだから、わかる道理もない訳だが。


うーむ。

取り敢えず、手紙を読み返してみる。現場百回。読書百遍。繰り返すというのは大事なことだ。最初は気付かなことでも、何度も見直していると段々意味が分かってくるものだからな。……多分。


ん?

チートスキルは“異世界物の定番”?


俺が読む異世界物小説では、チートと言えば普通は魔法だ。それも、練習も何も無しに、いきなり発動できる。ということは、取り敢えず魔法を使おうとすれば使えるんじゃね?


一つの仮説を立てた俺は、取り敢えず魔法を発動してみようとする。念のため、周囲をもう一度見まわす。

よし、誰もいない。もしこれが失敗して、見物人でもいたら超音速で穴に入りたくなるからな。念のために、もう一度確認。OKだ。やっぱり誰もいない。念には念を入れてもう一度確認。うむ、問題なし。


右腕を伸ばすと、手近なところにあった直径1mほどの岩に向ける。

魔力っぽい何かが掌に集まる様子をイメージ。

あれ?

なんか温かいモノが集まってる気がする。これはもしかしなくても、もしかするのか?

集まった魔力を炎に変化する様子をイメージ。

すると、掌に集まっていた何かが炎の玉となって浮かび上がる。


これは良い感じだ。感動のあまり絶叫しそうになるが、ここは自分を抑える。冷静になれ、俺。制御が乱れて暴発なんかしたら大事だ。


一つ深呼吸し、

「ファイヤーボール!!」

呪文を唱える!


その呪文を合図に炎の玉が掌から射出され、狙い違わず岩に直撃し爆発する。


「おっしゃあああああああああああああ!!!!」

思わずガッツポーズをとる。

スゲエ!魔法だ!!魔法を使えた!!


ファイヤーボールに直撃された岩からは、噴煙が上がり俺の視界から岩を隠している。


しばらくして風が噴煙を晴らすと、そこに現れたのは半壊した岩。





「おおおおおおおおおお!!!!」

あのサイズの岩を半壊とは。初めての魔法にしては、中々の威力。俺が満足げに頷く。


だが、そんな俺の心の片隅に小さな疑問が浮かぶ。

それは最初、ほんの小さなモノだったが、ウンウン頷いている間にどんどん大きく成長する。


「確かに凄いけど……。チートと言う程でもないような」


そう。1mの岩を半壊させるというのは、確かに凄い。だが、俺が読んだ異世界物小説だと、チートと言うのはもっと凄かった。カンストプレーヤーが異世界を蹂躙したり、メテオストライクで神様を討伐とか。


それらに比べると明らかに地味だ。未来を予知出来るほどのリアルチートな妹がチートスキルと銘打ってるんだから、こんなモノでは無いはず。




むむむむむ。

ピキーン!

閃いた!

若しかして俺に魔法が使えるのは、それ自体がチート何じゃなくて、チートスキルの一部なんじゃね?


だが、そうなると何がチートスキルなのか?

定番ものとしては、やっぱりステータスか?


早速試してみる。

「ステータスオープン」





「おっしゃあああああああああああああ!!!!」


本日二度目のガッツポーズ。

やったぜ!


俺の推理通り、目の前には半透明の板が浮かぶ。


どれどれ。

どんなステータスなのかな?

ワクワク。わくわく。



名前:ミネユキ・ユート(峰雪 勇人)

レベル:1

称号:“異世界人”

スキル一覧

アウタースキル:『全マップ制覇 666/666』『オール・オート・マッピング』『何だか鑑定』『ナンデモ・スキル』『おまけ』『オマケ?』

コモンスキル:『魔法Lv1』『属性魔法Lv1』『火属性魔法Lv1』『詠唱Lv1』

アイテム:“封じの首輪”×1、“最下級ポーション”×10、“最下級マナポーション”×10



パッと見た結果がこれ。

なんぞ?

名前の表示が、微妙にカタカナ書きなのは、異世界だから許すとして……。レベル1って……。弱すぎるだろ!!こっちは荒野でボッチなんだぞ!!野垂れ死ぬだろうが!!

その為のチートスキルなんだとしても、ちょっと微妙だ。

称号の異世界人に至っては、そのまますぎだろ……。



むむむむむm。

気を取り直して、スキルに行こう。なんか凄そうなのもあるしね。




先ずはアウタースキルの『全マップ蹂躙 666/666』から。表示に集中すると説明書きが出てくる。

『マップ内に存在する、全ての動植物その他を殲滅かも?(残り使用可能回数 666)』

何それ?チートなの?チートかな?チートだと良いな。

一番気になるのは“かも?”の部分。場合によっては倒せない敵もいるということなのか?まあ、ボスキャラまで一撃で倒したりしたらゲームバランスが崩壊する訳だし……。そういった意味での安全策なのだと思っておこう。出来ればゲームバランスなんか無視してもらいたかったけど、色々都合というものもあるしね。


というか、よく考えたら“アウタースキル”ってなんぞ?聞いたことが無い。そんなことを考えていたら、“アウタースキル”についての説明が浮かぶ。

『異世界の神によるスキル』

……。

……。

……。

……。

拝啓。お父様、お母様。

無駄に太陽が一所懸命な季節になりましたが、如何お過ごしでしょうか。勇人は異世界で元気にやっています。さて、早速ですが本題に入ります。俺の妹はどうやら神だったようです。

自分で言ってて、意味が分からん。




次だ。次!


『オール・オート・マッピング』

解説『新たなマップ内に進入すると、自動的にマップ内を走査。地図作成なんかを行う』

普通だ。ごく普通だ。でも地図って、どうやって見るんだ?

そう考えると、自動的に表示が切り替わり地図が表示される。

地味に便利。思考を読み取る原理が多少不安だけど、便利だから良しとしよう。下手に突いて、藪蛇になっても困るしな。


地図によると、ここは“アメダス辺境伯爵領”で人口はおよそ10万。大きさは北海道ほどで、ほぼ正方形。

現在地から北に10キロほど行くと、人口500人のトト村がある。さらに、そこから北に20キロほどで、3000人規模の街“ティース市”に辿り着くようだ。取り敢えず、一人だと危険だし、村経由でティース市に入ろう。街に到着後、どうするのかはその時に決めよう。

簡単に、今後の方針を立てる。どうせ異世界で勝手が違うんだし、余り綿密な計画を立てても画餅になるのは目に見えてるしな。


ちなみに、アメダス辺境伯爵領の外がどうなってるのかは不明。ということは、領地の外側はマップ外ということなんだろう。


そんな取り止めの無いことを考えながら、地図を見ていると、東に1キロほど行ったところにもマーカーが付いてる。

“古代ロミュラス帝國の隠し宝物庫”

そこにはそう表示されていた。


……後で調べに行こう。お金は大事。




次は、『何だか鑑定』。

『鑑定スキルの一種。気紛れ屋さん』

……。

……。

気紛れって、おかしいだろ。どう考えても。




余り深く考えたら負けだ。

次。次。

『ナンデモ・スキル』

『スキルの習得が容易になる。Lvアップに必要な経験値も大幅削減の予定』

行き成りコモンスキルのところに、魔法関係のスキルが揃っているのは、これが影響してるんだろうなあ。

“予定”の部分が少し気になる所ではある。

けど、まあ、いいか。

後でのんびり考えよう。




という訳で次。

謎スキルの『おまけ』に意識を集中。

どんなのだろう?

開けてビックリ、玉手箱的なサプライズかな?

ワクワク。わくわく。

『ZZZ……。ZZZ……。ZZZ……。鑑定スキルは眠っているようだ』


え?

何それ?

そんなのアリ?


マズイ。

何だか嫌な予感しかしない。

今度は、最後に残った『オマケ?』に意識を集中する。

『ZZZ……。ZZZ……。ZZZ……。どうやら鑑定スキルは眠っているようだ』

……。

……。

……。

投げやり過ぎるだろ!!『何だか鑑定』!!どうなってんの?!これっ!?




いや、まだだ。まだいけるはずだ。

きっと、おまけスキルが見れないのはレベルが足りないせいだ。レベルを上げていけば、そのうち見れるようになるはず。“眠ってる”何て表示してるのは、鑑定スキルが御茶目さんだからに違いない。そうだよね?


焦った俺は、先程の魔法で砕けた岩に意識を集中。

『ZZZ……。ZZZ……。ZZZ……。ZZZ……。ZZZ……。ZZZ……。鑑定スキルは眠っている』


馬鹿な!


太陽を見る。

『ZZZ……。ZZZ……。ZZZ……。ZZZ……。ZZZ……。ZZZ……』


ええい!!

その辺の石ころに意識を集中。

『……………………………………………』




……。

……。

……。

どうしよう?

鑑定スキルなしに異世界で行動するとか危険すぎる。

いや。待て。俺。

冷静になれ。

常識的に考えて、眼に入れても痛くない妹がチートだと言っている以上、チートなはずだ。きっとこれはアレだ。強力なスキルだから一日に使用できる回数が制限されてるとか、そんなことに違いない。


そんなことを考えながら目の前に浮かぶ半透明の板を眺めていると、違和感があることに気付く。

あれ?

この板、二重になってる。

『……………』と表示されている部分を閉じると、もう一つの板が現れる。


『石』

そこにはこう書いてあった。


何だ、ちゃんと機能してるじゃん。鑑定スキル。

安心した俺は、一息つく。


という訳で、スキルの検証を再開。

『おまけ』に意識を集中。

あれ。

板に変化が無い。おかしいな。

今度は『オマケ?』を見る。

……。

……。

……。

こっちも変化なし。何も表示されない。

どうなってんだ?




良く分からんが、こういうときは保留するのが一番だ。

いつまでも解けない問題で悩んでも仕方が無しな。



今度はコモンスキルの検証に入る。

という訳で、俺がコモンスキルの項目を見直すと、新たなスキルが追加されている。

『鑑定Lv1』

え?

なんでそんなのが増えるのか?

いや。考えるまでもない。

おそらく、先程ファイヤーボールを使った時と同じだろう。俺が太陽や石を鑑定しようと思って、そう努力しようとしたから、スキルが得られた。これが『ナンデモ・スキル』の効果なんだろう。




ちょっと実験してみるか。

先程と同様、適当な大きさの岩に腕を向ける。意識を掌に集中。

よしよし。

掌の方に暖かい何かが集まって来ているのが分かる。今度はそれを風に加工。

おおおおおおお!!

掌に風の渦が生じるのが分かる。


「ウィンドカッター!!」

お約束の呪文と共に、かまいたち上の風が放出され、岩を両断する。

「おおおおおおおおおお!!!」


やっぱり。

俺のスキルに風魔法は無いのに使える。急いでスキルを確認。


「おっしゃああああああああああ!!!」


思わずガッツポーズをする。

そこには『風属性魔法Lv1』という項目が追加されていた。




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