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第1話 晴れた日にて突然に

この小説は暇つぶしに書いています。更新頻度には期待しないで下さい。



はて?


どうなってんだ?


さっきまで俺は、いつも通りに学校から帰っていたはずだ。

その筈なのに、今では荒野に立っている。荒野だ。現代日本ではまず見ることのない荒野。ハリウッド映画なんかでガンマンが撃ち合いをしている、あの荒野だ。植物らしい植物はほとんど生えておらず、赤土を剥き出しにした大地が延々と広がっている。日本ではまず考えられないことに、周囲には地平線が見える。

そして遠くの方には、やたらと巨大な山々がそびえ立っている。ついでに、空を見上げると太陽一つと、三つの月が出ている。


どうなってんだ?

意味が分からん。何をどうすれば、普通に帰宅しようとしていただけの男子高校生が、次の瞬間に、荒地のド真ん中に立っているんだ?

というか、三つの月って何だ?いつの間にお月様は分身の術を習得したんだ?


うーむ。


良く分からんし、取り敢えず直前までの行動を思い返してみるか。









☆☆☆     ☆☆☆









「お兄ちゃん。トラックに気を付けてね。第三中学校前」


それは朝の一コマ。

目覚まし時計に叩き起こされた俺が、いつも通りに顔を洗い、朝食をとるべくダイニングに向かうと、そこには何故か妹がいた。室内なのに、灰褐色のローブを身に纏い、目深にフードを被っているので、その表情を窺うことはできない。

現代日本ではまず見かけることが無いような、奇妙な服装だ。


だが。

この妹、この格好がデフォである。

極度の恥ずかしがり屋で、肌を出すこと自体嫌いらしい。正直、肌を出すのが恥ずかしいと言っても、こんな恰好をしていたのでは、余計視線を浴びることになると思うのだが……。

そんな妹も、小学校の時には、この恰好でもちゃんと通学していたのだが(毎年秋にある運動会にもこの格好で参加していた。プールや普段の体育をどうしていたのかは、学年が違うから分からん。)、中学に進学した一年前からは引きこもりが続いている。ついでに言うと、一年前からは自室から出ることもなくなっていたので、俺もこの一年間、妹の姿を見たことはなかった。




そんな妹が珍しく、部屋から出てダイニングで朝食をとっていた。

しかも、話しかけてきてる。

こいつが俺に話しかけるなんて、何年振りだろう?10年ぶりぐらいだろうか?というか、妹の声自体、ここ数年ずっと聞いていなかったような気がする


それがどんな心変わりだ?一体何を企んでいるのか?


むむむむむ。

むむむむむ。

むむむむむ。

むむむむむ。


……。

分からん。

妹の行動の真意を巡って、色々考えてみたのだがサッパリ分からん。



となると、本人に聞くのが一番だろう。

「どういう意味だよ?トラックに気を付けろって?」


だが、そこにはもう妹はいなかった。



代わりにそこにいたのは、母。

「何言ってるの?早く食べなさい。また、遅刻するわよ」


「え?あやめは?」

さっきまで其処にいた筈なのに、いつの間に居なくなったんだ?


「何言ってんの?あやめちゃんなら、もう部屋に帰っちゃったわよ。勇人ゆうとが『むむむむ』と唸っている間に」


馬鹿な!


一年ぶりの生あやめ。それも声まで掛けてくれてたのに!

アレコレ考え事をしている間に、居なくなっていただと!


「おのれ!これも孔明の罠か!このかたき、絶対返すからな!」

俺は気炎を上げる。






パポ、パポ、パポ、パポ、パポ、パポ、パポ、パポ。


そんな感じで俺が馬鹿をやっている間にも、時間は進む。そして、鳩時計が間の抜けた音を出す。


それも八回。

背筋を冷や汗が流れ出る。恐怖におののく俺は、恐る恐る時計を見る。そこでは予想通りの事態が進行していた。そう、鳩時計の針は、今が8時であることを示していたのだ。


「遅刻するうううううう!!!」


流石に拙い。今日も遅刻したら、1カ月連続遅刻記録を達成してしまう!それだけは避けなければ!


バタバタと食パンを口の中に振り込むと、鞄を引っ掴んで全力疾走!


「まずいいいいいいいい!!!」


そう。これは拙い。頭の中に、ニヤニヤ笑いを浮かべる朱音あかねの顔が浮かぶ。

先月、あいつとは賭けをしたのだ。

もし、来月一カ月間連続で遅刻をし続けるようなら、駅前のパフェキングでパフェ食べ放題―お値段2,160円也―を奢ると。


「やばいいいいいいいいいい!!!」


悲鳴を残いながら、疾走する。









悲報。一か月間連続遅刻記録を達成。


結局、今日も始業時間には間に合わなかった。



「あははははは。流石は勇人。日曜日はよろしくね」

これは朱音。自称学年一の美少女。まあ、元々の顔立ちが整っているのに加えて、見事な桃が胸に実っているから、意外と人気があるのも事実ではある。ちなみに俺の好みは、大き過ぎず小さ過ぎずだ。朱音のバストサイズは大きすぎて、俺のストライクゾーンから大いに逸脱している。


「うむ。『楽勝だぜ。たった一日早起きすればいいんだろ』とか言っていた割には、呆気なく記録を達成したな」

こっちは実篤さねあつ。幼稚園からの腐れ縁。見た目だけなら好青年。ただし中身は腹黒。なんで俺はこんな性悪男と親友やってるんだろう、とか思う時が一日一回はある。


「うるせえよ、実篤。お前には奢らないからな」

「え~。勇人のケチ」

横から、朱音が茶茶を入れてくる。


「いーんだよ。男に奢る趣味はねえ。というか朱音。太るぞ。食べ放題なんか」


「残念だが勇人。この食欲魔人は、食ったものが全て胸に行くという素敵仕様なのだ。心配するだけ無駄だ」


「食欲魔人って。それは酷くない?」

ジト目で実篤を睨む朱音。


「でも事実だろ」

涼しい顔で返す実篤。


「幾ら事実でも言って良いことと悪いことがあるのよ。勇人もそう思うでしょ?」


何故かこっちに向かう矛先。

……お前ら。痴話喧嘩に人を巻き込むなよ。

俺は一つ嘆息する。

何て日だ。遅刻したせいで生徒指導の教師にこっぴどく絞られ、ついでに2,160円のパフェを奢ることが確定してしまい、帰りには夫婦喧嘩にも巻き込まれるとは。



と、信号が点滅し、赤になる。

俺たちが足を止め、暫くすると別方向の人の流れが動き出す。

いつもの、日常風景だ。何気なく首を巡らすとそこには、第三中学校。俺と実篤が二年前まで通っていた中学だ。

朱音によると、中学の校舎には懐かしさを感じるものらしい。俺の場合、日常的に自分の中学の前を通過しているから実感がないが。


俺たちが信号待ちをしていると、甲高いクラクションの音。


見ると、大型トラックが赤信号で交差点に進入して来ていた。運転手はどういう訳だか、ハンドルに突っ伏していて前を見ていない。そして当然、もう一つの信号は青になっているのだから、別方からも交差点に自動車が侵入している。信号無視のトラックは、黒塗りのセダン車を吹き飛ばす。その衝撃で、セダン車はまるで玩具のように潰れて弾き飛ばされていく。さらに、セダン車と衝突した大型貨物車もまた、その衝撃で進路を変える。


俺たちの方へと。


「え?」


誰かが間の抜けた声を上げる。実篤か?朱音か?他の通行人か?あるいは、俺自身だろうか?

トラックは驚くほどゆっくりとした速度でこちらへと接近し、信号機や電柱をへし折ると歩道へと侵入する。さらに、殆どそのままの勢いで歩行者たちを次々と跳ね飛ばしていく。


逃げないと。

頭の片隅でそんな思考をしている俺がいる。だが、まるで金縛りにでもあったかのように、体が動かない。


なんでだよ。

早く逃げないと。幸いトラックはゆっくりと接近している。逃げるだけの時間は十分にあるじゃないか。

そこまで思考を進めたところで、俺は気付く。トラックが遅いんじゃない。思考が加速しているだけだ。だけど、高速化したのは思考だけ。体が追い付いてない。





『トラックには気を付けてね』


あやめのそんなセリフが思い出される。


無理だろ、これ。こんなのどうしろと……





俺が最後に見たのは、朱音を突き飛ばした後大型車のタイヤにひき潰されて肉塊と化す、実篤の姿。


そして、フロント部分がひしゃげているトラックが迫る様。




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