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転生迷宮 ―リバイバルラビリンス―  作者: 梅雨ゼンセン
第六章 ―蠱毒の青年と夜明けの少女―
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とうぞくのかぎもつかった

「デージーはとうぞくのかぎを使った」

「おい。さっきまでのシリアス臭返せよ馬鹿野郎」

「扉には鍵がかかっている。持っている鍵では開きそうにない」

「嘘つけ」

 北条はため息を吐き、それにデージーはクスリと笑ってドアを開ける。

 町の中にある石造りの一軒家。ここが彼女の根城らしい。

「一人で住んでるのか?」

 中に入り、リビングダイニングらしきところに通された。現在彼は椅子に掛けているが、ここまでくるその間に、ざっと中を見回してみたが少々広すぎるような気がする。

「はい。でもここには住んでいませんよ?」

 そうデージーは淹れてきたコーヒーを北条の前に置き、自身も向かいの椅子に掛ける。それを受け取りながら北条はその言葉に「ん?」と眉間にしわを寄せ、

「ならここは別荘的なやつか?」

「いえ、完全に他人の家です」

「は? おい待て」

「他人の家の物を漁って使ってます☆」

 そう彼女はコーヒーを飲み、清々しいほど爽やかな笑顔をする。その顔は暗に「より一層コーヒーがうまい!」と言っているようで、北条は少々呆けてから大きなため息を吐く。

「お前……常習犯か?」

「皆眠ってるんです。行動もループしてますし、使われない物は勿体ないだけですよ」

「……まあ、そう言われればそうかもしれないが」

 しかしよくもまあここまで平然と使える。勇者でも人の家の箪笥を開けるとき罪悪感が芽生えるぞ? 壺とか割る時実は相当覚悟して△ボタン押してるからね。うん。それを思ったらリメイク版のAボタンの良心さよ。その分『Ⅶ』だと確か海底神殿のツボが無くなってたような………あの辺りは上級職が使えるくらいに成長してたはずだから、「ようやくきたぜ!」とそっちの方に意識がいってた気が……

「グラコスかぁ……懐かしいな……」

「……ニセコイ?」

「それClariSな。俺はironyとコネクトおし、って何言わせてんだ! つうかお前完全に転生者だろ? なあ。その知識量おかしいだろ完全に」

「いえ、これ全部隣のおじさんが『情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ』に加えて教えてくれたものです」

「ちょくちょく兄貴出てくるよな!?」

 もういい、と北条はコーヒーを飲み、とりあえず落ち着くために一息吐く。

「結局あなたも飲んでるじゃないですか」

「うるせえ。持ったいないからだ。ごちそうさま」

「お粗末様でした」

 北条が飲み終えたカップを机に置くと、デージーはにこりと嬉しそうに笑う。

 ……さて、

「話を本題に戻すか」

「そうですね……フリじゃないですよね?」

「これ以上はしつこすぎる。胃もたれする」

 失礼しました、と彼女は自分の分のコーヒーを一口含んだ後、少し迷ったような素振りを見せてから

「……そうですね……まずはこの国、というかこの状況になるまでの歴史について話しましょうか」

 そう彼女は、またコーヒーを含み、ゆっくりと読み聞かせをするように口を開いた。





 この国は平和な国でした。

 小さな諍いはあれど、争いはなく、戦争なんて単語とは無縁の豊かな国でした。

 そしてそんな国ですから、国王様と王妃様も大そうお優しい方で、民たちからも好かれ、皆とても幸せな毎日を過ごしていました。

 ある日、二人の間に一つの命が芽生えました。

 小さな命に二人だけでなく、国中が喜び、その晩は男も女も仕事も身分も忘れて。皆で飲み、踊り明かしました。

 ……しかし、

 それを良く思わなかった者がいました。

 それは森のはずれに住んでいる悪い魔女でした。

 悪い魔女はその話を聞き、すぐさま名前を偽造して国王様と王妃様、その生まれてきたお姫様にお祝いのプレゼントを贈りました。

 国王様は祝いのプレゼントだと知ると、「皆で開こう」と言って王妃様とお姫様を集めて、開きました。

 その瞬間、変わった香りが漂ってきました。

 贈られてきた箱の中を見ると、そこにはなんと御香が入っていました。

 そして漂ってきたのは毒の煙。

 それが分かった時にはもう遅く、その場にいた三人を含め、衛兵たちも全員倒れてしまいました。それを聞いた魔女は大いに大笑いしました。

 何日かした後、国王様と王妃様や衛兵たちは目を覚ましました。毒の効果はそれほど強くなく、かろうじて目を覚ますことができたのです。

 しかし、まだ赤ん坊出会ったお姫様はそのまま帰ってきませんでした。

 その亡骸を抱え、国王様と王妃様を含め、国中が三日三晩悲しみに泣き明かしました。泣いて泣いて、声が枯れても、涙が枯れても、泣き続けました。

 そして、国王様は兵士にその悪い魔女を殺してくるように命令しました。

 しかしそうなることが分かっていた魔女はすでに森の中に結界を張り、自分のところへ来られないようにしていました。

 国王様と王妃様はどうしようもなくなってしまいました。

 そうして悲しみに暮れていたある日、一人の女性が国を訪ねてきました。

 その女性は「自分は魔女だ。風の噂で国王様が困っていると聞いてきた」と言って国王様にある提案をしました。彼女は開口一番に「お姫様を『生き返らせる方法』はありませんが、『会う方法』はあります」と言いました。

 その方法とは、『眠ること』でした。

 夢の中なら再び会うことができる。それに国王様も王妃様も首を縦に振りました。

 この悲しみを埋められるならと、またあの子に、あの楽しかった頃に戻れるならと、縋りました。

 そしてその魔女は、国に大きな魔法をかけたのです。

 大きな大きな眠りの魔法を。優しい優しい揺り籠の魔法を。

 そうして国のすべては深い眠りに誘われ、夢の中で幸せに幸せに暮らしましたとさ……





「めでたしめでたし」

「……で?」

「で? と、いいますと?」

 疑問符を浮かべる北条に、デージーは首を傾げ返してくる。

 北条は面倒そうにため息を吐き、

「今自分で言っただろ。めでたしめでたしって。じゃあ俺の出る幕ないだろ」

「いえいえちゃんとありますよ」

 そう彼女はニコニコと笑って言う。

 北条は眉間を寄せて腕を組む。一体今の状況で自分は何をすればいいのだろうか。話を聞く限り、国王様等は仮にも望んでその眠りを受け入れたわけだから、皆幸せに暮らしていることになる。ならば何の問題もないだろう。現状どうにもすることはできないだろう。

「まあとりあえず……」

 そう考え込んでいる北条を見て、デージーは立ち上がり、

今日の宿の確認・・・・・・・もできましたし、次の場所に向かいましょう!」

「……は?」

「? いやだから今日の宿の確認・・・・・・・ができたので……」

「まさかここに寄った理由って……」

「それだけですよ?」

「……」

 ………いや、確かに宿の確認は大切だ。どこに行っても上質な寝床さえあれば生きていけると北条は勝手に思っているが、

 それほどまでに彼も寝床を大切にしているが、

 故に今までの旅路で野宿ばかりで不満が溜まっているところはあるが、

「無駄足……」

 そう彼がガックリと肩を落としている間にも、デージーはサクサクと玄関の方に向かっていき、「生きますよー?」と催促してくる。

 ……まるでどこかの『破天荒神様』か、『無鉄砲女』を思い出す。



      ・・・



 逃走中、道中にて、

後・エム:「「へっくしゅん!」」

カ:「クスッ、噂されてるんじゃない?」

エ:「当然ですよ。だってあんなことされたんですから! はぁ……歩くの疲れたぁ~」

カ:「我慢しなさい」

エ:「え~」

後:「…………ミセバヤが逝った。今」

エ:「……はい」

ミ:「って逝ってませんよ! ちゃんとここに居ます!」

変:「……あ、俺は出番なしか? 放置プレイか!? 燃えてくるな!」

他一同:「……」

変:「(……女だけだとこんなに冷めるもんなのか……使える(・・・)な!)」



      ・・・



「……はぁ」

 そう北条はやや―――というかなり呆れつつため息を吐いて、しかしクスリと小さく笑ってその後を追った。

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