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草津

作者: 幻夜祭
掲載日:2015/02/19

「軽井沢だって?」

「そう。日本が誇る避暑地、軽井沢。ここが今回の旅行先。交通の便の良さだけで、選んだ」

「千葉も候補だったじゃないか。どうして、落選したんだい?」

「千葉は、途中合流・途中離脱組、つまり電車だと、意外に面倒なんだ。例えば、館山だと東京駅から特急で1時間半もかかる」

「JRに捨てられた土地か。…だから軽井沢なんだね」

「そうだ。あそこなら新幹線で1時間、30分くに1本はあるからな」

「でもほんとは京都か九州の予定で、目星もついてたんだろ?」

「俺は少人数ならばと、旅をしたかったんだ。曲がり道ひとつひとつで広がる知らない土地、想像を超えた絶景、地産地蛸の素晴らしさ、一期一会の奇跡、そういうものを欲しているんだよ。その点、前回の琵琶湖は完璧だった」

「九州なんていいね。阿蘇なんて行ってみたい」

「紀州ってのもあったんだ。…なんかぱっとしないんだよな」

「そんな君に一言」

「なんだ?」

「集まることに意味がある。どこかのひねくれの言葉だよ」

「…」

「それで、わざわざこんな小説にしてまで、なにが言いたいんだい?」

「俺は…草津に行きたい」

「なんだって!(バックトゥーザフューチャーのドク風)」

「泊まる家は、どちらかというと軽井沢というより、嬬恋なんだ。北へ20キロ、日本ロマンティック街道をひた駈ければ群馬の巨大税収源、日本1の温泉街、草津だ」

「しかし...それは」

「そうだ。大きな弊害がある」

「僕は背筋が凍りそうだよ」

「俺もだ。こんな風にネタにして、あとで怒られたらどうしようかと思っている」

「独裁国家E組との唯一のパイプであり、その強いカリスマ性で学級委員長を歴任。学力、運動、酒量ともに申し分なく、我らB組きっての強硬派と知られる…」

「酒井…篤司!!!」

「…」

「…」

「そもそもどーして彼は、草津が嫌なんだい?」

「同月、行くらしい」

「それは...黄金風呂として知られる伊香保じゃ駄目なのか?」

「実は、伊香保は湯量の問題から、全てのところで黄金風呂じゃないんだ。それに...」

「ん?なんだい?」

「赤線の名残であり、今も人身売買が行われている、真っ黒の街。俺のイメージが最悪なんだ。ニュース観たろ?大学生」

「皮肉かよ、中退君」

「長野業正も大したことないんだな」

「おいおい、時代が関係ないだろう。それに、草津に行きたいって話だったじゃないか」

「草津案。しかし、それは自分がやりたいことだけをやる。それじゃ、まるであの時のままだな」

「それを君が言えたことかい。それに、君達の冷戦は終わったんだろ?」

「確かに俺たちの冷戦は終わった。しかし、所詮は20そこらの未熟同士。いつどうなるかわからない。昨日の友は今日の敵。特に俺みたいな未熟の塊はな、火種が多すぎる」

「...今日はやけに自虐的だね。おとなしく軽井沢観光でもしているんだね」

「ジョンレノンになるのも悪くないな。しかし、どこかSTARSHIPエッセンスに欠ける」

「出たよそれ。…いつまでやり続ける気だい?その設定。君は虚しくならないか?」

「…不満を言えばキリがないが、結局俺は、誰でもない俺の意志でやっていることだ。辞めるときは辞める」

「意志か…」

「とにもかくにも草津から話が流れすぎだ。こんなに長くやる気なかったんだぞ、このコーナー」

「いいじゃないか、分厚いパンフになって。内容もパンフ同様の分厚くしよう」

「嫌でも分厚くなる。人数じゃない、積み重ねた年月だからな」

「加藤が誕生日なんだって?誕生日旅行とは、オイシイところ持っていくな、あいつ」

「馬鹿野郎、これ以上長くするな。店を変えよう、そこで続きをしよう」

「よし、良いだろう」

友と酒を交わす、素晴らしい時間だ。それは、言わなかった。いや、言えなかった。

「鶏だな」

「さすがは盟友、俺もそう思っていたよ」

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